『はぁ〜〜〜〜・・・』

 盛大を飛び越えて呆れるくらいに大きなため息が居間を支配していた。

「どうかしたのか、4人とも。ため息なんかついて」

 居合わせたレイドが、4人に向けて尋ねれば。
 みんながみんな、

「向こうの世界のことを考えていたんですよ」
「両親のこととかが気になってまして・・・」
「学校のこととか友達のこともありますし・・・」
「どうしようもないのはわかってるんですけど、どうしても気になっちゃって・・・」

 と。
 ようするにホームシックなのである。
 普段いた場所から何日も離れれば、そうなるのは当然で。

「変える方法は見つかりそうか?」

 そんな問いに4人は空笑いを見せて首を横にふる。
 見つかっていればホームシックなんぞになってはいないのだ。

は、大丈夫なのかい?」
「え、俺?」

 はじめから傍観を決め込んでいたは、急に話を振られてついていた頬杖を解く。
 メインの4人に比べて、は長くリィンバウムにいるのだから、もしやと思ったのだろう。

「別に、特に問題はないですよ」

 もともと放任主義の家だ。
 多少そうなってはいてもあからさまにため息をつくこともない。

の家はもともと放任主義でしたもんね」

 アヤはそんなことを言いつつ苦笑いを浮かべたのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第18話  強くなる





 改めて、彼らと話をしたほうがいいかもしれないな。

 というレイドの言葉どおり、4人は話をすべくフラット内へ姿を消していた。
 そのまま居間にいても意味はないだろうと踏み、も同様に居間をでていく。
 庭で稽古でもしようかと。
 暇つぶしというわけではないが、それでも暇つぶしにはちょうどいい。



 そんなわけで。
 庭まで移動してみると、そこには。

「あっ、若師匠!」
「兄ちゃんだ」

 薪割り用の切り株に腰を下ろし、ジンガとアルバが話をしていた。

「なにやってるんだ?」
「ジンガから修行の旅の話を聞かせてもらったんだよ」

 ジンガは東から来たと言っていた。
 その途中の話だろう。

「たとえば?」
「酒場で船乗りを相手に大暴れした話とかね、山賊退治で大暴れした話とかだよっ!」
「大暴れしたことばかりじゃないか・・・」

 たいしたことない話でしょ、と。
 は呆れているだけだというのに、ジンガは屈託もなく笑って見せた。

「で、若師匠はこんなところへどうしたんだい?」
「稽古しに来たんだけど・・・」
「兄ちゃんも、強いんだよな!?」

 目を輝かせるアルバを見て、は少したじろぐ。
 表情を引きつかせながら、

「ま、まぁ・・・人並み以上は、ね」

 ひかえめに。
 とにかくひかえめに言ってみた。
 本当は邪龍を相手に引け目を取らないほどなのだが、そこまで言うこともないだろう。
 自分は巻き込まれ体質であると自覚はしているのだが。

「ジンガより、強いのか?」
「ああ!俺っちなんかじゃ、若師匠には勝てないさ」

 アニキたちも強いって言ってたんだぜ!

 そう言ってジンガは笑う。

「すっげぇっ!」
「おだてたって何も出ないぞ、ジンガ?それに・・・」
「なぁ兄ちゃん、旅の話聞かせてくれよ!」

 若師匠はやめろって言ってるだろ、と続けようとしたところで、アルバは割り込むように口にした。
 ・・・一応、さぼりがちだった稽古をする予定だったんだけど。
 特に他にやることもなかったので。

「そうだな、それじゃあ・・・」

 かいつまんでだけど、話をすることに決めた。


 はじめは、忘れられた島の話。
 次に、闘技の街での話。

 今はもう復興を遂げているだろう、闘技の街。
 共に戦った仲間たちは今はどうしているだろうかと、思いを馳せつつ視線を空へ向けた。


「とまぁ、とにかく大変だったんだよ」
「その事件、知ってるぜ」

 師匠から聞いたんだ、とのたまったジンガに対して、

「たしかあれってじゅ・・・」
「あぁ〜、そろそろ稽古に入ろうかなぁ!!」

 あからさまに、ジンガの言動を止めた。
 彼は不思議そうにへ向き直るが、そんなことはお構いなし。

 は少し離れて腰を落とすと、構えて見せた。




「・・・っ!」




 右足を踏み出して横に一閃。
 小さく息を吸い込むと両手で柄を持ち、左上・真下。
 右手に持ち替えて右上。
 最後にもう一度両手で柄を持つと左下へと刀を振るう。
 ヒュンヒュンと空気を切る音がこだまし、2人が見ているにも関わらず周囲が静寂に包まれた。

 ゆっくりと姿勢を正して、刀の切っ先を鞘にあてがう。

「・・・ふぅ」

 カシン、と鍔鳴り、刀は鞘に納まったのだった。





「なんつうか、キレイだよ」
「型にはまってるって言うんだろうな」

 稽古と称した刀の舞。
 の剣は父親から直伝のものなので、特に流派などは存在していない。

「いつもどおりやってるだけなんだけどな」

 すこしだけ汗を流して、首だけを2人に向ける。





「兄ちゃん、おいらに剣術を教えてくれよ!」

 さらに目をらんらんと輝かせて、アルバはに詰め寄る。

「おいら、騎士になりたいんだ!」

 期待を膨らませるアルバに困ったような顔をして頭を掻く。
 しかし、これは以前島でも言ったことなのだが。
 は腰を落としてアルバに視線を合わせると、

「君には、立派な先生がいるんだろ?」

 レイドが先生を務める剣術教室で、アルバは騎士になるために毎日稽古をしているのだと聞いていたので。
 はそう口にしたのだった。

「君は、まだまだこれからだ」

 頭に手を乗せ、ぽんぽんとあやすように叩いてみせる。
 自分は、足のつかない根無し草。
 いつかは、サイジェントを去る時が来るのだ。


「これから、ゆっくり強くなっていけばいい」


 彼は、が剣を教わりはじめたときと年がほとんど同じなのだ。
 だからこそ、


「君は、これから強くなれるさ。俺だって、剣を習いはじめたの君とほとんど同じ年のときだったんだからな」


 夢が、あるんだろ?

 はそう言って、笑ったのだった。






第18話でした。
ジンガとアルバメインの話でした。
ゲーム内にもあります、このイベント。
アルバって純粋な、子供らしい子供だと私は思います。



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