「こっちじゃ」

 連れられて辿り着いたのは南スラムの奥の奥。
 街の人が誰も近づくことのないような、特に荒れ果てた場所だった。
 そして、ついていくことさらに数分。

「ここじゃよ。さぁ、中へ」

 ウィゼルが足を止めたのは一軒の少し古めの建物だった。
 中へ足を踏み入れると、そこには。



「炉と金槌?」



 建物にそぐわない、立派な炉がそこにはあった。

「わしは魔剣鍛冶師じゃ。このくらいの炉は、あって当たり前じゃよ」

 もう何年も使っちゃいないがな。

 奥の部屋へ1人移動していたウィゼルはそう言うと、一振りの長刀を手に部屋から出てきたのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第13話  刀とケンカ





「ほれ、これを持っていけ」
「これは・・・」

 鋼色の鍔に柄、鞘ともに黒塗りの長刀。
 には、この刀に見覚えがあった。
 だからこそ、彼は驚きに目を見開いたのだった。

「わしが現役時に使っていた刀じゃよ。お主も覚えておるじゃろう?」

 手渡され、鞘から刃を少し出してみる。

「あの時も思ったけど・・・いい刀だな」

 あの時とは他でもない、島での戦い。
 今から10年以上も前になるかの戦いだが、にとっては1年や2年前のこと。
 だからこそ、ウィゼルが使っていた刀をよく覚えていたのだった。

 10年以上経った今でも、その刃の輝きは衰えることなく刀身を包んでいた。

「わし自らが鍛えた一振りだ。お主が使っても、なんら問題はないだろうよ」

 しばらくはそれを使っているといい。

 ウィゼルはそう言って、笑ったのだった。
















「しかし、なんだか疲れちゃったなぁ」

 与えられた刀を腰にウィゼルの家を出てきたは、当てもなく繁華街をさまよっていた。
 繁華街は昼間であるとはいえ、人が多い。
 夜の方が活気づくのはもちろんのことではあったが、そうでなくてもこの場所は活気があった。




ーっ!」
「?」

 声の方向へと振り向けば。

「ナツミ」

 彼女の後ろには、アヤとカシス。クラレットの3人も見て取れた。
 こころなしか、カシスとクラレットの視線が刺々しいような感じがしたが、はそれを気にすることなく、

「・・・なんでここに?」
「そっちこそ、今までどこほっつき歩いてたのよ?」

 そんな問いには当たり障りのないような答えを返していた。
 彼女たちに、自分の昔のことなど話す必要はないと判断したからだ。

 もう過ぎたことで無駄に心配させることはない。
 そんなこと、させても意味はない。



「さっき、城門を眺めてたらさ。門番の人ににらまれたの」
「騎士の方に言われなきゃ、気付きませんでしたよね」

 そんな話を続けていると、なにやら喧騒が大きくなっていることに気付く。

「ねえ、あそこ。人だかりができてるよ」
「なんだか、少しイヤな予感がするのですが・・・」

 カシスが指差す先を眺めて、クラレットはため息を漏らす。
 それでも、なにが起こっているのか見たいというのが人の性(さが)。
 野次馬よろしく、5人は人だかりへと歩を進めたのだった。



「いてててっ・・・!このガキ、手を離しやがれっ!!」
「アンタが謝るほうが先だろ?」

 人だかりの中心には数人のゴロツキと、子供。そして老人の姿があった。
 ゴロツキは、も以前見たことがある。
 召喚されたときに目の前にいた数人であった。

「アレは・・・オプテュス!?」

 助けなきゃ!

 ナツミはオプテュスの姿を確認するや否や、中心に向けて走り出したのだった。

「おい、ナツミ!!」
「聞いてませんね・・・」

 そんなアヤの呟きに、呆れたかのように頭を掻く。

「とりあえず、私たちも行きませんか?ナツミさんだけでは多勢に無勢というものですし・・・」

 クラレットの提案の元、ナツミを除いた全員も人だかりを抜けようと奮闘し始めたのだった。






「ほら、そこのジイさんに謝れよ?」

 ビシッ、と老人を指差し、少年はすごむゴロツキたちに臆することなく、言い放った。

 事の発端は、ゴロツキたちが老人を突き飛ばしたこと。
 それを見ていた少年がゴロツキたちに謝れとけしかけているのだろう。

 そんな少年を見て、周囲の野次馬たちが口々に言葉を漏らしている。

 曰く「黙ってればいいのに」。
 曰く「余計なことをしてくれた」。

 とても、正しいことをしている少年に対する言い方とは思えない。

「さあ、謝れッ!!」

 少年は周囲の言葉などまるで無視して、こう叫んだのだった。
 さすがに、しつこい少年に痺れをきらしたのか、ゴロツキたちは武器を取り出す。

「このガキ・・・みんな、やっち・・・」
「待ちなさーいっ!!」

 いち早く人だかりの中心へと辿り着いたナツミは、人ごみを抜けると早々に声をあげた。
 周囲の人間は、彼女が叫んだことに驚いたのか、目を丸めている。

「子供相手によってたかって、恥ずかしく・・・」

 ドンッ!!

「ぎゃあっ!?」
「へ?」

 少年がゴロツキの1人を殴り飛ばし、ナツミのセリフを止めてしまったのだった。



「なーんだ。大口叩いたわりには、弱いじゃんか」

 得意げに言う少年の表情は、余裕。
 拳を解いて、手首をほぐすようにぶらぶらさせながらそう言った。
 彼の周囲には、その場にいたゴロツキが全員倒れている。


「さあ、あとはお前だけだぜ?」

 少年がすごめば、1人残ったゴロツキは顔を引きつらせて走り去っていった。

「お、お、お・・・覚えてやがれえぇ!」

 悪役らしいありきたりなセリフを残して。









「へへへ、助けてもらっちまったみたいだな」
「助ける必要すら感じなかったけどな」

 の言葉を聞いて、照れくさそうに少年は笑う。

「でも、彼らを敵に回したのはよろしくないですね」
「うん。早いトコ、ここを離れたほうがいいよ」

 アヤ、ナツミの忠告に、少年は困った顔をする。

 彼が言うには、

 まだこの街には着いたばかりでこれから宿を探す予定だったのだが、ゴロツキが老人を突き飛ばして謝りもしないのを見て、カッとなった。
 それによりあの騒ぎ。

 とのこと。

「まるでどこかのだれかさんみたいだな」
「あ、たしかに」
さんの言うとおりですね」
「な、なによぉーっ!!」

 先ほどのナツミの行動を見ていれば、一目瞭然だろう。
 おそらくこの場にハヤトがいれば、同じようにつっこんでいっただろう。
 ・・・性格的に。

「とりあえず、私たちについてきてくれませんか?」

 事情はそこでお話しますから。

 アヤの提案に少年はうなずき、少年を含んだ6人はフラットへと足を向けたのだった。






第13話です。
主人公の一時的なニューウエポンと格闘少年登場でした。
あくまで一時的なので、真のニューウエポンは終盤に出す予定です。
さらにエクステーゼの複線をかけようかと画策中(マテ。




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