「はぁ・・・」

 ため息だってつきたくなる。
 事の発端を聞いてみれば、

『つまみ食いがバレた』

 というのだ。

 子供じみた、というかくだらないその理由に、は深くため息をついたのだった。


「ゆけっ、ゆくのだっ!!」


 視線を向ければ、額に青筋をつけ怒り大爆発のイムランの姿と、周囲を囲うように立つ金ぴかの鎧を着込んだ兵士たち。

 彼らは一体どこから出てきたんだろう?とか、あの金ぴか鎧をどこかで見たような気がして記憶を掘り起こしつつ、穴の空いた刀を振るったのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第10話  火に油





「うわっ!?」

 ハヤトは金ぴか兵士の剣を、背後へ飛びのくことで何とか避けると、散乱した皿を踏みつけて尻餅をつく。
 腰をさすりつつ立ち上がろうとすれば、目の前には剣を振り上げた兵士の姿。

「くそ・・・」

 剣を振り下ろされ、斬られる、と感じた瞬間。
 目をぎゅっと閉じるが、いつまでたっても痛みが来ることはなかった。

 うっすらと目を開ければ、

「早く立つんだ、ハヤト!」

 トウヤによって剣を止められていたのだった。
 交わっていた剣を自分の剣で弾き返すと、身体の横へ剣を移動させ、横に薙いで見せる。
 鎧の上への攻撃であったため、大きな傷を負うことはなかったが、兵士は振られた剣をまともに受けて背後へとたたらを踏んだ。

「だぁっ!!」

 チャンスとばかりにハヤトはすばやく立ち上がり、無防備の兵士の元へと駆ける。
 その懐へ入り込んでも剣を振るうことはなく、勢いを殺さずに体当たりを敢行した。

「ぐ・・・ぁっ」

 兵士は破壊されたテーブルの角に頭をぶつけ、気を失ったのだった。


「気をつけなきゃダメじゃないか。ただのケンカじゃないんだから」
「悪い。の戦い方に気を取られててさ」

 ハヤトはそう言って、刀を振るい武器を破壊するか手放させるかをした上で、背後へ回り込んで首筋へ手刀を落とすという、手際の良い戦いっぷりのを眺めた。

「・・・なんていうか、僕たちとは大違いだね」

 悔しいけど、と呟きつつ、トウヤも同様にを眺めたのだった。



「おらーっ、アンタたちなに黄昏てんのよ!コッチは必死なんだから、手を貸さんかいーっ!!」
『っ・・・ごめんなさい!』



 アヤと共に兵士と向き合っていたナツミの叫びに、2人は我に返ったのだった。












「いでよ・・・っ!」

 キールの呼び声に応え、サプレスの召喚獣が具現する。
 魔力を込めた炎が数人の兵士たちを襲い、宙へと舞い上がった。

「きゃ・・・っ!?」
「クラレット!?」

 飛来した矢に驚きの声をあげ、倒れ掛かるクラレットの身体を支え、ソルは前方を見やった。

「ソル」
「あ、キール兄。あいつら、厄介だろ?」

 指差したのはやはり金ぴかの鎧を着た弓兵たち。
 その場を動くことなく矢を番え、弓を引き絞っている。

「そうだね。まとめて退場願おうか、ソル」

 キールの了承と共に、2人は紫のサモナイト石を手にとった。



『霊界に住まいし魔の力よ。我らの声が聞こえたならば、その姿を現し敵を滅せよ・・・』



 まったく同じ言葉を2人が紡いでいく。
 手に持つ石に魔力を注ぎ、淡く明滅。
 互いに顔を見合わせ、同時にうなずくと2粒のサモナイト石を接触させた。



『ブラックラックっ!!』



 名を唱えるのと同時に、召喚術が発動。
 宙に無数の髑髏を纏った悪魔が具現すると、その身を包む布を風になびかせた。

 発光し魔力を稲妻へ変化させると、ブラックラックと呼ばれた召喚獣はそれを弓兵に向けて放っていた。

 バリバリと音を立て、発生した稲妻に数人の兵士が飲み込まれる。
 次の瞬間には、黒コゲになった弓兵たちがあおむけにばたばたと倒れ、襲う痺れに身体を震わせていた。

「2人ともさすがだね。でも・・・」

 ブラックラックを召喚した2人に、声をかけたカシスだが、

「もう、魔力残ってないんじゃない?」

 もしそうなら、役立たずだよね。

 ムフフと笑って、兵士のこめかみを杖の先で殴りつけたのだった。
 威力は皆無に等しいが、動きを止めるくらいはできる。
 動きが止まったところで、カシスは召喚術で先ほどイムランも用いた雷精を召喚。
 雷撃を浴びせたのだった。




「・・・」
「・・・」

 周囲にはまだ敵兵士がたくさんいる。
 それなのに、自分たちはすでに魔力切れ。

 ・・・役立たず?無能?

「しょ、召喚術だけの俺たちじゃないぞ。なぁ、キール兄!?」
「あ、あぁ・・・」

 お前に言われなくたってわかっているさ!!

 杖を振り回すカシスを見てソルは、とにかくまくし立てたのだった。













「っ!!」

 1人、また1人とぴかぴかの兵士たちが倒れていく。
 刀を鞘に収めたまま、武器を持つ手に向けて振るい、回り込んで気絶させる。

 派手さは皆無だが、刀という小回りの利く武器だからこそできる戦法である。

「あ、思い出した」

 以前、あの眩しいほどに金ぴかの鎧を纏った兵士たちを見たことがあった。
 かつて、闘技の街と言われた場所で出会った、金の派閥の兵士が同じ格好をしていたのをは思い出したのだった。

 周囲を見渡せば、金の兵士はほとんど地に伏している。

 イムランはと言えば、兵士たちがことごとく倒されているものだから、憤慨して

「憎い、憎い、憎いっ!あーっ憎らしいっ!!」

 と、地面を蹴りつけている。
 そこで、は1つ尋ねてみることにした。


「あの〜・・・」
「なんだ、平民風情がっ!!」

 怒ってても律儀に言葉を返してくれたことに一抹の驚きを感じつつも、とりあえず問いを口にしてみた。

「貴方がたの派閥、金の派閥でしたよね?」
「それがなんだと言うのだ!?」
「議長さん、知ってますか?」

 地面を蹴りつけていた足が止まる。

「マーン、てことは、ファミィの親戚かなにかで?」
「・・・貴様、なぜ姉上のことを知っている?」










 ・・・姉上?











 聞き違いだろうか?
 どう見ても、彼の方が年上に見えるのだが・・・

「何を黙っている?」

 目の前の彼は・・・お、弟!?

「貴様、この私の声を無視すると言うのか・・・?」
「い、いや・・・その、貴方があの人の弟に見えない、っていうか・・・老け・・・っ!?」

 は慌てて口をつぐんだ。
 しかし、時すでに遅し。

 青筋に加えてさらに血管をも浮き上がらせて、イムランはを凝視していた。

「キッッッサマァァァァァッ!!」

 老けて、に反応したのだろう。

「火に油を注ぐような言動はやめないか」
「いや、そんなコト言われても・・・」

 呆れるようにつぶやいたレイドに、言い訳じみた言葉を発するが、もはや手遅れ。



「貴様ら、全員まとめてあの世へ送ってやるゥゥッ!!」



 イムランは怒り大爆発を通り越して、怒り核爆発の域にまで達してしまったのだった。







第10話でした。
オリジナルとの絡みも少し、ほんの少し入れてみました。
・・・てか、ホントに弟に見えませんよね。マーン三兄弟。
そう思ってるのは管理人だけでしょうか?



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