レイド、エドス、カシス。そしての4人が目的地であったテントの中へと足を踏み入れる。
 奥でフラットの面々と、金ぴかの鎧を身に纏った兵士が数人に召喚師と思われる男性が対峙していた。
 全員が自らの武器を手にしており、回りの状況など視界にすら入っていない様子。

「・・・あれ、なに?」
「あれは間違いなく金の派閥の連中だな」

 は金ぴかを指差して尋ねれば、答えたエドスに同調するようにレイドも軽くうなずいた。

 金の派閥、と聞いたところで、の戦友である女性がトップを務めている派閥だということを記憶から引きずり出されるが、今のところは関係のない話。
 そこから鑑みるに、この場を陣取っていたのはどうやら金の派閥の召喚師たちなのだろう。さぞ豪華な食事が所狭しと並んでいたことだろう。
 料理は並んではいなかったが。

「あれは・・・イムランか」
「・・・あのおじさんのこと?」
「金の派閥の召喚師だよ。サイジェントの政務が彼の主な仕事だ」

 カシスが問えば、レイドの説明の後にエドスが召喚師の男性を指差した。


 彼をよく観察してみると。


 彼は、ひどく怒っていることが理解できたのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第09話  不毛な争い





「貴様ら・・・よくもこの私の顔に泥を塗ってくれたなぁっ!!」

 イムランは叫ぶ。
 額に青筋を浮かび上がらせ、息を荒げて。
 周囲の状況など、すでに彼の知ったことではない。
 すべては目の前の少年少女たちが原因なのだから。

「おっさんには関係ねえだろ」
「おっさんではなぁぁいっ!!」 

 ぼそりとつぶやいたガゼルの声に反応し、イムランはさらに叫んだ。
 ものすごい地獄耳である。

「このサイジェントの街の政務をとりしきる、イムラン・マーン様とは私のことだ!」

 イムラン様と呼べ、イムランさ・まと!!

 『様』の部分を強調するように言うと、手にもった杖を自らの身体の前へと移動させる。
 空いた手で懐からサモナイト石を取り出すと、目を閉じた。



「ガゼルっ、こいつ召喚師だ!!」
「おいおい、そりゃ冗談だろっ!?」
「もぉっ、こうなったのもみんなガゼルのせいなんだからね!!」
「お前らだって楽しそうだとか言ってたじゃねえか!!」
「いいだしたのはガゼルさんですから・・・」
「こいつら・・・」

 言い合いが始まった。
 その中心にはハヤト、トウヤ、ナツミ、アヤ、ガゼルの5人の姿がある。
 ガゼルとトウヤを除いた3人の視線はすべてガゼルへと集中しており、彼らが元凶であることは一目瞭然。
 ちなみに、トウヤは我関せずを貫いていた。






「話、持ち出したら二つ返事でついてきたのはどこのどいつだよ!」
「なによぉ。仕方なくでしょ、し・か・た・な・く!!」
「んだよ、それはぁっ!!」

「フハハハハッ!今さら後悔しようと遅いわ!」

「あの・・・」
「お前らも来たんだから、同じだろうが!」
「だから、言い出しっぺはアンタでしょっ!?」

「どうやら私を本気で怒らせ・・・」

「お前らだって、楽しそうだってついてきただろうが!!」
「ですから、言い出したのはガゼルさんですし・・・」

「・・・・・・」










「なに・・・あれ?」
「不毛だな」
「イムランの前でよくもまあ・・・」

 怒りに燃えるイムランの前で言い合っている。
 内容は同じことの堂々巡り。
 途中でイムランが口をはさんでいるのを思い切り無視して、顔を突きつけ合わせていた。






「おぉぉまぁぁえぇぇらぁぁぁぁっ!!!」
『あ・・・・・・』
「平民風情が・・・この私を本当に怒らせてしまったようだな・・・」

 顔を真っ赤に染め上げ、小刻みに身体を振るわせたイムランは突き抜けんばかりの声をあげた。
 言い合いをしていた4人は彼に視線を向け、そろって口をあんぐり。

 イムランは止まっていた召喚術の詠唱を再び紡ぎ始めた。






「・・・やばいな」

 のつぶやきに周囲の3人は同時にうなずいた。

「たしかに、そろそろ行かないと、マズいな」
「こっちにも・・・というか召喚師の数はウチらのほうが多いが、頭数が違いすぎる」
「それってダメじゃん!」

 早く行かないと!

 カシスは一刻も早く仲間の元へ行こうとの背中を押し出す。
 レイドとエドスも、後に続いた。










「金の派閥の召喚師。イムラン・マーン様にたてついた報いを思い知れぇ!!」

 詠唱が終了し、紫色のサモナイト石が強く明滅する。
 そのまま、イムランは石を虚空へと掲げると、石が強く光る。
 次の瞬間には、彼の前に一体の召喚獣が具現していた。
 現れたのはサプレスの雷精。
 大きな口の両端を吊り上げて、ケケケケ、と笑うと、召喚獣の身体は光を帯びた。

「マズイ・・・そこの4人、固まってちゃダメだ!!」
『!?』

 トウヤが声をあげると、剣を鞘から抜き放った。
 言い合いをしていた4人は、召喚獣へ顔を向けると四方へ離れる。
 その中心、さきほどまで4人のいた場所に、紫色の雷が炸裂した。

「あ、あぶなかったぁ・・・」
「もぉ、ガゼルのせいだからね!!」
「まだ言うか、この野郎!」

 離れた場所から大声で言い合いながら、4人は武器を手に取った。



「・・・言い合いなんかやってる場合じゃないだろっ!」
「まったくだ。一体、何をしたんだい、君たちは?」
「「「・・・」」」
「れ、レイド・・・」

 カシスに背中を押されたまま、は声をあげた。
 レイドとエドスがその後ろで武器を手に取っている。

「今はそんなことを言っている場合じゃなかろう。とりあえずアレを何とかせんと、な」

 エドスはそう言うと、対峙する金色を見据えたのだった。






第09話でした。
イムラン、影薄いですね〜・・・
セリフばっかりですね〜・・・



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