「まさか一晩で準備を済ませちゃうとは・・・」
「思い立ったら即行動。それがワシのポリシーさ!」

 忘れ物はないなぁ!?

 翌日。
 フラットの面々は、孤児院の玄関に集合していた。

 満面の笑みを貼り付けて、全員に向けて声を張り上げているのはエドス。
 呆れを通り越して感嘆の声をあげたは、頭を掻いて息をひとつ吐いた。

「エドス、なんだか楽しそうねえ」
「やっぱり、わかっちまうか」

 ナツミの声にエドスは顔を彼女に向ける。

「大勢で花見に繰り出すなんて、すごくひさしぶりなんでな。ガラにもなく、はしゃいじまってるんだよ」
「たしかに、みんなでどこかへ出かけたりすると、自然と気分が高まりますもんね」

 昔、友達と花見をしたときも、お祭り気分でしたから。

 アヤは彼の言葉に同意の意を示すと、彼同様ににっこりと笑って見せた。

「さぁ、出発するぞ!!」





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第08話  レッツお花見!? 





「エドス、妙に張り切っているみたいだね」

 アレク川への道中、トウヤはそんな言葉を口に出していた。
 彼の隣にはガゼルがいる。

「ああ、俺も驚いてるさ。去年までは別にこんなこと言ったりしなかったんだけどな・・・」

 彼曰く、今回のエドスの行動は去年はなかったらしい。
 今日のことは突発的なものであるということが理解できた。

 ふーん、と言葉を返すと、ガゼルは「まぁ、いいじゃねえか」とトウヤの背中をバンバンと叩いていた。

 そんな2人の会話を見ている中で、は視線を感じて、首を回す。
 その先には、4人の召喚師たち。何か用かとたずねれば、別に、という答えが返ってきた。



「4人は、花見に行ったことはあるのか?」

 尋ねたのはハヤト。
 さも当然のように彼らに近づくと、そんな言葉を口にしていた。

「いいえ、初めてですよ」
「そうなのか・・・それじゃ、今日は思いっきり楽しまなくちゃな?」
「ああ。一生懸命、花を見るつもりだよ」
「・・・う、うん」

 ソルの勘違い発言にたじろぎながら、ハヤトは引きつった笑みを彼らに向けた。

「ソルぅ、それはちょっとちがうむごむご」

 花見についての説明をしようとハヤト同様に近づいたナツミの口を、ハヤトの手がふさぐ。
 空いた手の人差し指を立てて、口元へ。言わなくていいという意思表示である。
 小声で、

「後で言っておどかそうぜ」

 という言葉が聞こえ、ナツミはにんまり笑って同意していたが、同じようにその会話が聞こえていたは、ため息を吐いて聞き流していた。
















「あれ?」

 アレク川へたどり着くと、ハヤトは間の抜けたような声をあげた。

「ハヤト、そんなやる気をそぐような声だすなって」
「みんな、あれ・・・なんだろう?」

 のツッコミをを無視して、ハヤトは川べりを指差す。
 全員がその先へ視線を向けると、アルサックの木を中心にして、大きなテントが張られていた。
 昨日まではなかったものだ。

「おいおい、これじゃあろくに花が見れねえぜ」
「むう・・・場所を空けてもらうように頼んでくるかな」
「いや、エドス。それは無理だろう」

 エドスの意見にレイドが否定の声をあげた。
 その後でテントの手前を指差すと、

「テントの周りに警備の兵士がいる。あそこにいるのは、城の貴族たちだよ」

 改めて出直すしかないだろう、と付け加えて言葉を紡いだ。
 その言葉に、全員が沈黙。中でも一番張り切っていたエドスはさびしげな表情を浮かべていた。

「せっかく準備してきたのにかよ!?俺は納得できねえぞ」
「私だって納得したわけじゃない。しかし、どうしようもないだろう?」

 あれを見てしまったら。

 ガゼルが右手を左から右へ振りながら声を張り上げるが、レイドは表情を変えずにそう述べた。


「・・・そうだな」
「エドス!?」

 ガゼルの声を受け止めるが、

「なに、単なる思いつきで決めたことだ。こういう事情ならば、あきらめもつくよ」

 そう言って笑みを見せた。
 それは先ほどの笑みとは違う、どこかさびしげなものだった。

「くそっ、ここあいつらの持ち物じゃねえだろうがよ!!」
「なぁ、別に花が見れなくてもいいんじゃないのか?」
「え?」

 悔しそうに地面を踏みつけるガゼルの隣で、は声をあげた。
 全員が視線を向けると、少したじろいで、

「貴族の連中のことなんかどうでもいいだろ。実はよくわかってなかったんだけど、ここへは一体なにしに来たんだ?」
「どうでもって、お前・・・」
「なにって・・・お花見ですよね?」

 アヤの答えに「それは知ってる」と言い放ちうなずくと、全員を見渡す。

「ほんとに、花見だけが目的なのか?」
「・・・あぁ!」

 の意見に声をあげたのはトウヤだった。

「ここへ来たのは、花見のほかに彼らとの歓迎会を兼ねていたんじゃなかったかい?」
「・・・!」

 レイドは一瞬目を丸めると、表情を緩めた。
 全員の表情が穏やかなものに変わり、

「・・・そうね。2人の言うとおりだわ。お花見ができないのは残念だけど、だからってさっさと帰る必要はないじゃない」

 ここでお弁当食べて、のんびりしていこうよ。

 にっこりと笑って、リプレは川辺へと降りていった。
 彼女をいち早く、子供たちが追いかけていく。大人組はそれをしばらく眺めると、

「・・・そうだな。納得いかねえが、それなら賛成だ!」

 ガゼルはリプレを追いかけるために走り出す。

「へへっ、正直に言うと俺は、花よりリプレの弁当のほうが楽しみだったんだよな」
「花より団子、とはよく言ったものだよね」
「たまにはのんびりもいいわよね〜」
「ナツミちゃんはいつものんびりしてるじゃないですか」

 ハヤト、トウヤ、ナツミ、アヤの順でガゼルに続く。
 ナツミの言葉にツッコんだアヤは、ナツミにどつかれて吹っ飛んでいたが、あえて見ないふり。

「じゃあ。レイドさんも、エドスも、行こう」
「・・・そうだね」
「おう!」

 最後に残ったとレイド、エドスは、の呼びかけで川辺へと降りていったのだった。







「・・・う〜ま〜い〜!!」

 料理を口に運んだは頬を赤らめ、以前と同様に声をあげた。

「もぉ、そんなに嬉しがられると、照れちゃうじゃない」

 同じように頬を赤らめたのは、料理を作ったリプレだった。

「君たち、こんなにうまい料理を毎日食べられるなんて、羨ましいぞ〜」
「大げさなのよ、おにいちゃんは」
「おいら、リプレママの料理大好きだぞ!!」
「・・・(こくん)」

 フィズが冷めたように言うと、アルバは口に料理を含んだまま声をあげる。そのせいで口の中から料理が飛び出していたが、彼はまったく気にしていない。
 ラミはぬいぐるみを抱いたまま、にっこりと笑ってうなずいた。
 そんな言葉を聞いてか、リプレは照れくさそうに笑みを浮かべた。

「もぉ、前も同じような言ってたけど、は今まで、どんなもの食べてたのよ?」

 自分の作った料理を誉められるのは嬉しいことなのだが、はどうにも大げさすぎる感がある。
 なぜそこまで絶賛するのかと疑問に思うのは当然のことで。
 リプレは疑問をそのまま口にしていた。

 するとは口の中の料理を咀嚼し、飲み込むと、真剣なものへと表情を変えた。

「世の中には、満足に食事のできない人間もいるんだ」
「う、うん・・・」
「俺はここに喚ばれる前、なんにもない草原にいたんだ」

 現在、の話を聞いているのはリプレと、子供たち。そばに寝転ぶエドスと、彼の隣に腰を下ろしているレイドだった。
 話の対象はリプレであるため、エドスとレイド、それにフィズの3人は小耳に挟む程度。アルバは興味本位でか、目を輝かせて耳を傾けている。
 ラミに至っては、リプレに寄りかかって寝息を立て始めていた。

「何もないと言うことは、木の実のなる木もなければ、動物も出てこない。そんな場所だ」

 ずい、とさらに顔を近づけ、話を進める。
 リプレはそんな彼の気迫に押されてか、冷や汗を流し、頬を伝う。

「ここ最近はそんな場所が長く続いていたから、携帯していた食料で何とかもたせていたんだ」
「・・・た、大変だったのねぇ」

 顔を引きつらせながら、とりあえず思ったことを口にするリプレ。

「まぁ、一番の原因は俺が極度の方向音痴って事なんだけどなv」

 にんまりと笑って、頭を掻く。
 正面のリプレは、顔を引きつらせたまま苦笑いを浮かべている。

「なによ、それが一番の原因じゃない」

 フィズは何の気なしにそう口にした。

「それじゃあ、君がサイジェントに喚ばれたのは、君にとって良かったことなのかもしれないな、それは」
「そうですね、そうかもしれない・・・うん、絶対そうだ」
「おぉ、完全に言い切ったな」

 エドスは寝転んで空を見上げたまま、笑い声を上げたのだった。






「にいちゃん、にいちゃん。もっと旅の話、聞かせてくれよ!!」

 目を輝かせて詰め寄るアルバを見て、島の鬼ッ子を思い出した。

 軽く周囲を見回す。

 なんだか、妙な雰囲気が漂ってるな。

 そんなことを考えると、立ち上がり、きょろきょろと周囲を見回した。
 その行動は、ある一点で止まる。

「アルバ、悪いけど話はまた今度な」

 眉をひそめ、貴族のテントを見やる。

「レイドさん、エドス。ちょっ・・・」
「た、大変だよぉっ!!」

 突然生じた大きな声によっての声をさえぎられ、その方向を見やる。
 急いできたのだろう、息を切らしたカシスが膝に手をついて呼吸を整えている姿があった。

「そ、そのっ、あのテントでっ、ハヤトたちがっ!!」
「・・・やっぱり」

 レイドとエドスは表情をゆがめ、それぞれの武器を取ると、立ち上がった。
 は身体をかがめて刀を持つと、それを腰に提げた。

「・・・あいつらも、しょうがないなぁ」
「・・・・・・」

 呆れたように笑うエドスと、額に手を当てるレイドを見て、苦笑。

「カシス。ほかのみんなは、もう向かったのか?」
「うん。兄さんたちももう行ったよ。あたしはキミたちに伝えに来たってワケ」
「仕方ない。行くとしようか」



 リプレと子供たちに、ここで待っているように伝えると、4人はレイドを先頭にテントへと足を運んだのだった。







第08話でした。
お花見イベント、始まりました。ってか、すでに半分終わっている・・・
そして、誓約者’s影薄いです。




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