「次は、繁華街ですよ」

 先頭を歩いていたアヤはくるりと背後へ振り返ると、現在地を述べた。
 商店街と同様にたくさんの店が立ち並び、人々が行き交っている。
 1つ違うのは、立ち並んでいる店々がすべて食事関連の店であることだった。

「昼間は大丈夫だけど、夜は危険らしいから。あまり来ないほうがいいと思うぜ」

 ガゼルは嬉しそうだけどな。

 ハヤトは付け加えるように口にしながら、自分の後ろに位置しているガゼルへと視線を向ける。

「?・・・なんで」
「決まってるだろ、俺は盗賊だぜ?」

 こういう場所は、盗賊にとって絶好の仕事場なんだぜ?
 なるほど。

 自慢下に言うガゼルに、は納得したような表情を向ける。

「奪ってナンボの盗賊だもんな。俺も旅の荷物奪われそうになったことあるし」
『ええっ!?』

 ガゼルを除く4人が声を上げる。
 彼らを見て苦笑しつつ、「返り討ちにしたけど」とあっけらかんに言い放った。

「ちなみに、その盗賊って・・・1人?」
「あ、なんだよ、トウヤ・・・疑ってるのか?」

 疑っているのでないが、やはり疑いたくもなる。
 4人は今まで盗賊に襲われるなどといった経験をしたことがないのである・・・ないならないに越したことはないのだが、この世界ではそうはいかない。
 口ごもるトウヤを見て、は苦笑した。

「たしか・・・10人くらいだったかな。統率が取れてなかったから、楽勝だったけど」
「ひ、1人で・・・10人を全滅・・・」
「いやいや、1人じゃないぞ?」

 護衛獣がいたんだ、とは5人に告げたのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第07話  お出かけ 2





「お前・・・召喚師なのか?」
「サモナイト石自体はいくつか持ってるけど、俺には召喚術は使えないよ」

 は元々、潜在魔力が極端に少ない。以前、誓約の儀式を行っただけでふらつき、倒れてしまったことがある。
 そんな彼を、召喚師といえるだろうか?
 はその旨を伝えると、訝しげな顔をしていたガゼルは納得したかのように表情を戻していた。

「じゃあ、その護衛獣クンは、今はいないんだ?」
「あぁ。前の戦いで、まぁ、色々あってさ」

 探して旅してる最中にここに喚ばれたってわけ。

 からしてみればまだ1年と経っていない過去の大きな戦いだが、実際には10年以上経過していることは内緒である。

「さて。それじゃ、そろそろ行きましょうか。他にも行くところはありますし」

 アヤの号令で、一行は次なる目的地へと向かったのだった。


















「次は、工場区ですね」
「たしか、サイジェントの名産はキルカ織だったよな」
「え、・・・なんで知ってるの?」
「勉強したからな」

 驚きを顔に貼りつけ、ナツミが声を上げる。口には出さないが、ガゼルも驚きを隠せないらしく、目を丸めていた。

「でも、そのせいでこの辺の空気は汚れてるんだって」
「俺たちの世界も大差ないけどな」

 トウヤのつぶやきに、ハヤトは特に意味もなくそんな言葉を口にしていた。



 その後、一行は他の場所へ向かうために繁華街へ戻ろうとしたところで、ふとが足を止めた。

「どうしました?」
「・・・この先って、何があるんだ?」

 彼がそう口にした瞬間、5人は表情を曇らせた。

「・・・この先は北スラム。が始めて召喚されてきたときに、僕たちと向かい合っていた連中・・・オプテュスの根城だよ」

 トウヤの説明では思い出したかのようにうなずくと、

「あの白い人とかのことか」
「白い人?」

 だれ?
 彼の言う『白い人』というのは察しのとおりオプテュスのリーダーであるバノッサのことだ。
 召喚されてきた直後は情報が乏しくてとても相手の姿かたちまで見ている余裕などなかったのだが、彼を倒した後、彼を担いでいくときに目の前でその白さを確認していたのである。
 あまりにも白かったため、強く印象付けられていたのだ。

「・・・たしかに、白いな。あの野郎は」
「ぷっ・・・顔、思い浮かべたら・・・笑いがこみ上げてっ」
「ナツミさん・・・そこ、笑うところなんですか・・・?」

 口元を押さえて噴出さないようにと奮闘するナツミをアヤはじとりとした視線を向ける。

「厄介ごとは避けたいしな。そろそろ行こうぜ」

 オプテュスが出てくればそれは厄介ごとなのだろうか。
 ハヤトがこの場早く離れるよう催促すると、ガゼルを筆頭にナツミやトウヤまでもが同じようにうなずいていた。
 アヤだけは苦笑いを浮かべていたのだが、どんどんと先へ歩いていってしまう4人が気付くこともなく。

「ずいぶんと大変だったみたいだな、アヤ」
「はは、ははは・・・」

 互いに苦笑いを浮かべつつ、足早にその場を立ち去ったのだった。














「最後はアルク川ですよ」

 目の前の大きな川を見て、は声を上げた。
 水は透き通っていて、泳ぐ魚すら肉眼で確認できる。
 岸には緑が茂り、風に揺れて音を立てていた。

 そして、綺麗に咲き誇るピンク色の花が視界を支配した。

「わぁ・・・っ」
「桜か・・・?」
「綺麗ですね〜」
「なんだか、いい匂いもしてきたよ」

 ナツミ、ハヤト、アヤ、トウヤの順で声を上げる。

「あれはアルサックって名前でな、今がちょうど満開の季節になるんだ」
「よお、エドスじゃねえか」

 声の主は、正面の土手に寝そべったエドスだった。
 上半身裸なのは変わらず、気持ちよさげに目を閉じていた。

「そういえばさ。俺たちも桜が満開の中で、花見に行ったりしたよな」

 ハヤトは昔を思い出すかのように目を細める。
 ナツミやトウヤ、アヤもハヤトの言葉に感化されてか、目を閉じてやわらかく吹き付ける風を一身に受け止めていた。





「花見か・・・そういえば、ここ最近はそんなことはしとらんなぁ。よし・・・久しぶりにやるか!」





 エドスは嬉しそうに声を上げると、一目散にフラットへと戻っていったのだった。







第07話でした。
サイジェントの案内話、結局2話で終わってしまいました。
次回はお花見イベントです。
まだまだ、先は長いですね・・・





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