「それで、はなんであそこにいたんだい?」
「そんなこと言われてもなぁ・・・」

 トウヤの問いに、頭を掻く。

 今は夜。フラットに受け入れられたは、知り合いである4人の男女によって孤児院内の一部屋に連行させられていた。
 4人とも、行方不明だった友人との再会ではしゃいでいるわけだが、その中でトウヤは1人冷静にを質問攻めにしていたのだった。

「しかし、4人ともなんでこんなトコにいるんだ?」
「そんなコト知らないわよ。声が聞こえたかと思ったら、こっちにいたんだもん」
「まぁ、そのあといろいろありまして・・・」


 4人は、気が付いたら荒野にいた。地面には何らかの模様が書いてあり、それが召喚術の儀式によるものだと知ったのは昼間のこと。
 大きな力によって作られたであろうクレーターの中心にいた自分たちがたくさんの死体を目にし、思わずその場から走って逃げ、気づかないうちにサイジェントに入っていた。
 そのサイジェントで、今は仲間であるガゼルとエドスに襲われ、彼らを退けたことでなんとか自分たちの今いる場所を把握した。

 とトウヤは説明をした。


 なかなかに大変だったらしく、度胸だけは人一倍についたかも、とハヤトはおちゃらけたように話していると、ナツミにどつかれていた。

「なんか、大変だったみたいだなぁ・・・」
「それで、は今まで何をしていたんですか?」

 はアヤに尋ねられた問いに、自分が今まで体験してきたことをかいつまんで話をした。
 帝国領のとある島に召喚されたこと。その島で住人たちにとても良くしてもらったこと。島で起こった戦いのこと。闘技都市ヴァンドールでのこと。

 細かいことの話はしなかった。とにかく、話の表面部分だけをとにかくひきのばしたように長々と。

 4人はの話を聞いてか、ハヤトは肩に手を置き、ナツミは感心して目を輝かせた。
 トウヤは波乱万丈な人生に哀れみの目を向け、アヤに至っては彼を心配して涙目になっていた。

「大変だったんだね・・・」
「そうかもしれないな。でも、そのおかげでかけがえのない仲間ができた。もしかしたら、君たちもこれからそうなっていくかもしれないよ〜・・・?」
「や、それはそれでうれしいけどさぁ・・・俺たち、ただでさえ死ぬ目に遭ってきたんだから・・・」

 ハヤトの笑っているようで笑っていないその表情を見て、は肩をすくませた。

 その後、旅をしていた、と言ったに4人はその目的を聞いたり、この世界について知っていることはあるか、などといった話になり、はそのたびに丁寧に答えていった。

 久しぶりに再会した4人と1人の話は、長い間花を咲かせていた。










    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第05話  彼の彼女の近況報告










「なぁ、レイド・・・」
「なんだい、ガゼル?」

 居間で話しているのは軽めの甲冑に見を包んだ男性と、短い髪に前を大きく開いた服を着ている少年。
 2人とも、イスに座ってくつろいでいたところだった。

 男性は声を発した少年を見ると、返事をし、彼を見た。

「アイツ・・・あの4人と知り合いみてえだが・・・どう思う?あと、部屋に閉じこもっちまった召喚師の連中もだが・・・」
「どう思う、とは?」

 ガゼルは歓迎の言葉を口にしたものの、正直なところまだを、ひいては新しく仲間入りを果たした4人のことを良く思ってはいなかった。
 たしかに、は自分たちのピンチを救ってはくれたものの、まだまだ謎の多い人物。あの4人に至っては、召喚師ということ以外はなにも話すことはなかった。

 彼はただ、自分的見解によって5人を信用してはいなかったのだった。

「・・・そのまんまの意味だよ。レイドから見て、あの5人はどう見える?」
「そうだな・・・がハヤトたちの友人であることは、信じてもいいと思う。のこりの4人については、まだ何とも言えないな。あと・・・」

 言葉をとぎらせたレイドを、ガゼルは机にどっかと足を乗せつつ眺める。レイドは難しい表情をしたまま顎に手を当てて、

・・・彼は、相当な修羅場をくぐり抜けてきていることは確かだと思う。元騎士である私でさえ苦戦するバノッサを、一撃で気絶させてしまったのだからね」
「っ!?」

 それは昼間の出来事だった。自分たちとオプテュスの間に現れた光は、が出てくると同時に消えていったのだ。
 そして、自分の今の状況を瞬時に把握して・・・


 バノッサを一撃で倒してみせた。


 自分の武器である刀を鞘から抜かず、ただの攻撃を止めるための楔にしか使わずに、だ。

「相手の得物を見て、それからどう動くかを考えているのでは遅すぎる。しかし、彼の場合は違った・・・」

 戦いが彼の身体に染み付いている証拠だよ。

 レイドは苦笑いを浮かべてガゼルに向き直った。




「私が思うに・・・今のサイジェントでは、彼にかなう人間はいないだろうな」



























「そういえば・・・」
「ん?」

 ぽつり、とアヤは思い出したように声を漏らす。

「どうしたの、アヤ?」
「ほら、さっきがなにかの機械で・・・」

 アヤの話からハヤトは両手をぽんと叩いた。
 歓迎する直前に鳴り響いた電子音。はポケットから慌てて取り出して、ボタンを押そうと戸惑っていたのだ・・・ボタンが2つしかない機械で。

「あぁ、あれか。あれは、旅に出るときに島の仲間にもらったものなんだけど」
「じゃあ、聞こえた声は・・・」

 女の人、だよね?
 トウヤが尋ねると、は肯定の意を示すために首を縦に振った。

「島の仲間だよ。主を亡くしたはぐれ召喚獣の1人」

 島にいる大切な仲間の1人。
 機界の護人である融機人の女性。

 はぐれ召喚獣については知っているらしく、4人は肩をすくめた。

「そういえば、もあたしたちと同じはぐれ召喚獣なんだよね?」
「?・・・そうだけど」
「自分からはぐれ召喚獣だって言って、悲しかったり、ってことはなかったの?」

 が初めて4人の前に現れたとき、彼は自分のことを自分で【はぐれ召喚獣】だと言っていたのを思い出す。
 それを言ったときに、4人が悲しげな表情を浮かべたのをは横目で見ていたのだ。

 ―――自分が召喚される前に、何か言われたのだろう。だから、ナツミもそのことを聞かずにはいられないんだ―――

 答えを待つナツミと、同じように自分を見る3人を見て、苦笑した。

「別に、自分がはぐれだから悲しいなんて思ったことはないよ。元々はぐればかりの島に喚ばれたわけだし・・・そんなにはぐれがイヤなら、自分は人間なんだと強く自覚しておくしかないと俺は思うよ。他人に何を言われようが、ね」

 は、自分の思っていることを素直に話した。
 それが、彼らの望んだ答えではなかったものだとしても、彼にはそうとしか答えることができない。


 彼は、自分がはぐれ召喚獣であることを完全に理解してしまっているから―――









第05話でした。
誓約者’sメインのお話です。主には近況報告です。
そして、レイドさんは彼をいい方向に評価しているようですね。






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