「にとーれんげきざんてつせーんv」
「っ!」

 刹那は戦っていた。
 シネマ村は日本橋のまん真ん中で。
 目の前には、2本の小太刀を携えたメガネの少女が1人。
 先日の木乃香誘拐事件で出会った、月詠という少女だった。

「どもー、神鳴流です〜」

 そんな一言と共に現れた彼女は、神鳴流を会得した剣士だったりする。
 同じ神鳴流を背負う刹那とはえらい違いだった。
 2刀をクロスさせて刹那の野太刀『夕凪』と渡り合う彼女は。

「ウチは、刹那センパイと剣を交えたいだけ……v」

 戦闘狂だった。



魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
魔法の力、発現




「いいんちょ危なーいっ!」

 なんかデカいカッパが行ったよー!

 ハルナの声だった。
 羽織、袴に眼帯という格好の彼女を含めた3班・5班連合軍が、月詠の展開した妙に可愛げのある妖怪『百鬼夜行』と戯れていた。
 本人たちは至って真面目なのだが、出てきた妖怪たちがどうにもコミカルで。
 いいんちょこと雪広あやかは、なぜかこの場から木乃香を連れて逃げるネギの姿を発見していたのだが、カッパを見て目を光らせると、一瞬で振り向き、腕を突き出した。

 雪広あやか流合気柔術『雪中花』

 突き出した手をカッパの首元へ強く動かし、走ってきた反動を利用してカッパを転倒させていた。
 ちなみに彼女が見たネギは、交信の途切れたちびせつなの紙型を使って、気の跡を辿ってやってきたネギ……いわゆるちびねぎというヤツである。
 それを、刹那が擬似的に大きくしたのが今のネギなのである。

 ギャラリーの拍手をもって自慢げに頭(かぶり)をふるあやかが見たのは。

「ネギ先生が……ネギせ……ネ……コ!?」

 巨大な招き猫だった。
 視界を覆い尽くすほどの巨体が宙を舞い、あやかに襲い掛かる。
 もちろん、逃げるヒマなどありはせず。

「ネギ先生っ、ネギ先生がっ! ネ……コ」

 ぱたっ

 押しつぶされ、力尽きた。

「いいんちょがやられたーっ! みんな、弔い合戦だ!!」

 黒い衣装に身を包んだ那波千鶴がどこからか取り出したフライパンでミニサイズのカッパを殴り飛ばす。
 ム○ク似の妖怪に服を脱がされそうになっていた夏美をハルナが助ける。
 複数の妖怪によって身動きを取れなくなっていた夕映を助け出した和美。
 ギャラリーは面白がって鑑賞しているが、もう一度言おう。
 本人たちは至って真面目である。

 ……いいんちょ死んでないけどね。

「聞ーとるか! お嬢様の護衛の桜咲刹那! この鬼の矢がピタリと2人を狙っとるのが見えるやろ」

 舞台は、シネマ村でも一際高い建物の屋根の上へと変わっていた。
 屋根の端に追い込まれたのは木乃香と、彼女を連れて逃げていたはずのネギ。
 肩から上を露出した丸メガネの女性――天ヶ崎千草が声を上げた。
 さらに、数匹のぬいぐるみみたいな妖怪と、巨大な矢を番えた鬼。
 そして、ぬいぐるみの上に乗っている白髪の少年と、黒装束の女性の姿。
 逃げ場など、どこにもない。

「ネ……ネギ君、これもCG? ……とちょうよね、やっぱ」
「あの…す、すいません……このかさん」

 忍者衣装を身に纏ったネギは、今の危機的状況に表情を歪めた。
 白髪の少年は表情を変えることなく自分たちを見ているし、緑髪の女性は口元までを黒い布で隠していて、表情を伺うことはできない。
 ていうか、興味がないのかこちらを見てすらいない。
 戦うことすらできない自分に対し、相手の戦力は充分。
 さらに、少しでも動けば敵の矢の餌食。
 打つ手なし、とかこのことだろうか。

「……ネギ君、大丈夫や」
「っ!?」

 振り向く。
 その先では敵の狙いである木乃香が、笑みを浮かべていた。

「せっちゃんが、何があっても守る言うたんや。必ず、せっちゃんが助けてくれるて」
「このかさん……」
「なにぐずぐず言っとるんや……桜花はん、早いトコお嬢様を……」

 千草が首だけを動かして、緑の髪の女性を見やった。
 黒を基調とした忍び衣装を着ている寡黙な女性は、

「……なんですか、あなたは」

 そう告げた。
 閉じていた目が薄く開かれ、冷たい視線が千草を突き刺す。

「あ、あんさんは……」
「私は、貴方の駒ではない。同盟を結んでいるはいるが、私は自身の目的を果たすのみです」

 他の者とは、違います。

 緑髪の忍び――桜花は、軽いつり目をそのままに千草を一瞥してみせた。

「なっ……わぷっ」

 そんな彼女に言い返そうとしたところで、突然。
 突風が吹き荒れた。
 ネギも木乃香も、その突風にバランスを崩してしまう。

「も゛ほ?」

 えいっ、と言わんばかりに、鬼はその矢を放っていた。
 もちろん、千草は彼らを殺すつもりなど毛頭なく、本来なら木乃香の力を利用しようと考えていたので。

「あ―――っ! なんで射つんや―――っ!!」

 叫んだところで、もう遅い。
 矢は空を切り裂いて、真っ直ぐに木乃香へと向かっていく。
 止めようと手を突き出すネギだが、所詮は実体ではないこの身体。
 矢先は勢いを緩めることなくネギの手を突き破っていった。
 しかし。

「せっ……」

 矢の進行を自らの身体をもって止めたのは、刹那だった。
 左肩を貫通した状態で矢は勢いを緩め、激痛に歯を立てながらバランスを失い、屋根から身を踊りだしたのだった。

「せっちゃんっ!!」

 運のいいことに、建物の周囲は堀で囲まれているため、水だ。
 深さにもよるのだろうが、地面に叩きつけられてスプラッタ、ということはないだろう。
 それでも、木乃香は彼女が心配で。

「せっちゃーんっ!!」
「あ――っ!!」
「このか姉さん!!」

 落ちていく刹那を追いかけて、自身も宙に身を躍らせていた。
 力なく落ちていく刹那を抱きしめ、共に落ちていく。
 誰もが、もうダメだと思いながらも、落ちていくさまを凝視している。
 一般人ならばこれをただのイベントだと思っているのだが、実際には助かる仕掛けなどしていない。
 スタッフは、急に始まった今回の戦闘に、おお慌てだろう。
 ……が。

「うわぁっ!?」
「キャッ!?」

 突然発された閃光。
 一部始終を見ていたギャラリーはもちろんのこと、屋根の上や離れた場所にいる人間の目をもくらませ、視界を覆い尽くした。
 突風と共に水面は荒れて、橋の上から眺めていたクラスメイトを含む人々は顔を覆い隠す。
 それらすべてが晴れるまでに十数秒を要していたが、

「オイ、見ろ!!」

 1人の男性が指差した先で。

「…………」

 水面の寸前で宙に浮かんでいた。
 突き刺さっていた矢は抜け落ちて、傷口を完全に治癒。
 その光景を屋根上から目の当たりにして、桜花は目を細めていた。

 これが、極東最強の魔力を持つ者の力か。

 魔法解析に長けた少女の言っていた、巨大な魔力を持つ者。
 どのような猛者だろうかと、期待していたのだがそれは、治癒の力に特化した、少女のものだった。
 しかし、彼女を守る騎士の力は、相当のもの。

「…………」

 ふわりと地面に降り立った木乃香と刹那を眺めながら、口元を緩めたのだった。












「あの……時間とか、大丈夫?」

 さて。
 ところかわって、ここはUSJ。
 班全員と合流を果たし、アトラクションを回ること早3時間。
 夕焼けもすでに深まり、夜の帳すら見え隠れしているのだが。

「いーじゃんいーじゃん、遊ぶにはまだまだこれからだって」

 なんて言っているのは裕奈なのだが、一応自分たちは中学生。
 未成年であるうえに、義務教育すら終わっていない。
 仕事の関係上、大人と付き合うことが多いうえに名目上は男性であるアスカを含め、一応門限が決まっているので指定された時間にはホテルに戻らなければならないのだ。

「ふむ、電車の時間ももうすぐだ。撤収した方がいいかもしれないな」
「えぇ〜っ!?」

 自身の腕時計を眺めた真名の一言に、まき絵が反応を見せた。
 表情には、「まだ遊び足りない」という言葉が貼り付けられていて、見失ったらあっという間にすっ飛んでいってしまいそうだ。

「もっと遊びたいのはわかるが、そろそろ帰らねば新田先生にどやされてしまうぞ」

 それでもいいのか、と。
 表情こそ挑戦的だが、言動は現実的。
 一度掴まれば放されるまでに時間がかかって、最終日に満足に動けないかもしれない。
 だからこそ、

「それはイヤ!!」

 さ、帰ろっ!!

「早っ」

 あっという間に出口へ踵を返してしまっていた。
 新田先生がよっぽど怖いのか、明日に影響を残したくないのか。
 亜子の呟きをそのままに、あっという間に小さくなっていったのだが、

「ほら、みんなも早くこないと……あうっ!?」

 前を見ずに走っていたせいか、正面を歩いていた男性にぶつかってしまっていた。
 もっとも、倒れたのはまき絵の方で。

「……大丈夫か?」
「あ、はい……ごめんなさいっ」

 差し出された手を取り立ち上がると、大げさに頭を下げる。

「気にすんなって。どーってことねーからよ!」

 その男性はかんらかんらと笑って、まき絵を追いかけてきた一行に目を向けた。
 金髪金目、長身の男性。
 褐色に近い肌色の皮膚によって金髪が引き立って見える。
 それはアスカや真名がよく知っている存在で。
 ……っていうか、昨晩戦ったばかりの男性だった。

「アスカ、あの男……」
「うん。昨日の夜に戦った人だね」

 名前はヴィルテス。
 強力な弓技を使いこなす男性だった。
 ラフな格好をしているところを見ると、戦う気がないのか単に息抜きをしにきたところなのか。
 さらに、その隣には黒いタンクトップを着た黒髪の男性と、昨晩真名と戦っていた青を基調とした服を着たシンシアという女性の姿。
 それぞれが特に武装を施しているわけでもなく、ただ観光に来ているような様相だった。

「急いでるんだろ? 行きなって」
「あ、はいっ! ごめんなさいでした!」

 再度ぺこりとおじぎをするとまき絵が先頭に立って歩き、裕奈、アキラへと続いていく。

「……なんでこんなところに?」
「ごあいさつだな。俺たちだって、息抜きくらいするさ」

 ダメなのか?

 そう告げるヴィルテスの表情には微笑が張り付いている。
 その笑みの奥に何が隠されているのか。
 探るようにその瞳を見つめるが、返ってくる視線にはよどみがない。

「なんだヴィルテス。知り合いかい?」
「ああ。昨日、俺とシンシアの相手してくれた娘たちだよ」
「とっても強い娘たちなんよぉ」

 へぇ、と吟味するかのようにアスカと真名を見回す。
 黒いタンクトップを着た男性はにかと笑うと、

「俺はバルド。よろしく!」

 なぜ、名前を言う必要があるのだろう?
 そんな疑問が浮かび上がるが、その言葉に込められた真意が、2人にはわからない。

「アスカぁっ! 龍宮さ〜ん! 早くこないとおいてっちゃうよ〜!?」
「ほら、お友達がお呼びや。はよ行ってやらな」

 ひらひらと手を振って、シンシアはニッコリと笑ってみせる。
 なにかあるんじゃなかろうかと身構えていたのに、拍子抜けだったのだが、それ以前にこの場所で戦闘にならなくて良かったと思う。
 タダでさえ人が多いのに、敵は3人。
 一斉に襲われたら、一般人を守りながらでは勝ち目はない。

「ほら、行くぞアスカ」
「うん……」

 真名に促されて、3人の横を通り過ぎると。

「近いうちに、会うことになるだろうよ。なにせ……」



 リーダーが、そう決めちまったからな。



 そんなヴィルテスの言葉が、妙に耳に残っていた。






「ほれ早う、電車に乗り遅れてまう!」
「ま、待ってよ亜子……」
「ほらほら龍宮さんも!」
「おい明石……」
「……さっきの写真、ゆーな私で2枚……ぜひ焼き増ししてください」
「…………」



 そこ、なにをする気か。








原作の展開&オリキャラ登場再び! でした。
新たなオリキャラを、強引に登場させました。
……これで、全部出たことになるのかな?

いや、まだもう1人いるようです。
ま、近いうちに出しますね。


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