(超能力者!?)

 朝倉和美は、トイレの個室で1人考え込んでいた。
 内容は、ついさっき起こった我らが担任の超特大スクープ。

(宇宙から来た正義の味方!? 人間界に修行に来た魔女ッ子・男の子版!?)

 実に鋭い。
 すでに正解に近い答えを導き出してしまっている。

 さらに思考を過去へと飛ばす。
 最初の授業の時に明日菜の服を吹き飛ばした風。
 ドッジボールの時の超魔球。
 学年トップおめでとうパーティーの時の衣装を花びらに変えてしまうという手品じみた事象。
 これらがすべて彼が起こしたことだとすると、さっきのことも納得がいく。

 そんな身近なスクープに気づかない自分に軽く腹を立てつつも、いつの間に撮ったのか杖に跨って飛び去るネギの写真を見つめながら、

「まだっ、まだ証拠が足りなぁ―――いっ!!」

 そう叫んだのだった。
 トイレの入り口でくすくすと友人たちに笑われていることも知らずに。



魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
迫る騎士たち



「やっぱ、情報収集は基本ね!」

 というわけで、やってきたのは4班の部屋の前だった。
 いつの間にか保護者と化している明日菜よりは、麻帆良に来るまで一緒に住んでいたアスカを攻めていくべきだと判断したからで。

「お〜い、入るよ〜ん」

 なんの遠慮もなく扉を開いたのだが。



 …………



 あれ?



 部屋には誰一人としておらず、明かりも消えていた。
 本当ならもう就寝時間に近いので部屋にいなければならない時間帯なのだけど。

「…っかしーなぁ」

 室内に足を踏み入れる。
 いくつかの荷物がほっぽり出してあることを確認すると、班別行動からは戻ってきている。
 ってか、帰りにバスに乗り込むときにちゃんと点呼をとったのだから戻ってきていて当たり前なんだけど。
 しかし、その部屋が不自然であることは間違いなかった。

 散乱しているいくつかの荷物。
 備え付けの靴棚には4足の学校指定靴と2足のスリッパ。
 そして、開け放たれた大きな窓。

(……窓が開いてる?)

 開けっ放しの窓からは夜風が舞い込み、白いカーテンがバタバタとはためいていて。

 …………なんか、みょーに怖い。




「………し、しょーがないなぁ。直接ネギ君に聞くかー」

 部屋の真ん中あたりまで進んだところでくるりと踵を返すと、真っ直ぐ扉に手をかけたのだった。

















 実は。
 つい数分前まで、部屋には2人いたのだ。
 2人とも4班員で、名前は神楽坂飛鳥と龍宮真名。
 他の班員である裕奈・亜子・まき絵・アキラの4人は、観光の疲れからか入浴に行ってしまっている。

 一緒に浴場へ行っていない理由として。
 アスカは男だから。
 真名は夕食後に静かにゆっくり入ろうと思ってのことだったりする。



「あ……」

 それは突然のことだった。
 本当に唐突だった。
 以前感じた、強い力の奔流。
 3人が入浴に行ってしまった後で、しばらく無言の時間が続いていたのだけど。
 その力に、思わず声を出してしまっていた。

「…どうした?」
「え? あ、あー…」

 話自体はしているものの、いきなりこんなことになろうとは。
 実際、思ってもみなかった。

「なんだ、なにか後ろめたいことなのか?」
「いや、そうじゃないんだけど……」

 しどろもどろ。
 話すべきか話さぬべきか、迷ったのだけども。

「…!? この感じ……フッ、これがそうか」

 確信めいた笑みを浮かべながら、視線を閉まりきった窓の外へと向ける。
 白いカーテンの奥に浮かぶ、黄色い月を視界に入れて、瞳だけを動かして視線をアスカに戻した。

「ふむ、数は…2つか。しかも、急速にこちらに向かってきているようだ……行くのだろう?」
「かなわないなぁ」

 苦笑し、頭をカリカリと掻いてみせる。
 ポケットからカードを取り出し、窓を全開まで開け放つ。

 アデアット
「来たれ!」

 パクティオーカードが声と共に光り、一振りの大剣へと姿を変える。

「一緒に、来てくれる?」
「ふふ、私は高いぞ?」

 格好は制服姿だったのだけど。
 それをバサァッ、と脱いでしまったかと思えば、その下には動きやすそうな衣装を身に纏っていた。
 肩にギターケースを担いでいるのがなんだか異常によく似合う。
 脱ぐ際に思わず目を背けてしまっていたが、彼女が服を着ているのを見て頬を赤らめた。

「さあ、行こうか…って、窓から下りていくのか!?」
「うん。ほら、もう就寝時間だし」

 開け放った窓のさんに足をかけると、うなずいた。
 しかし、問題ないと言わんばかりにアスカはにか、と笑みを見せる。

「それじゃ…」

 一気に行くよ!!

 真名が同じように飛び降りる準備が完了したのを確認すると、同時に身を投げ……もとい空中へ踊らせたのだった。



 万有引力の法則にしたがって落下していく。恐怖心はまったくない。
 一緒に落ちている真名はまぁ、自分たちのいた場所が2階だから、あまり高いわけでもないので恐怖心はない。
 ってか、普通に下りれる高さだし。

 というわけで、問題なく音もなく降り立ったのだった。









「とりあえず、ココから離れよう。巻き込むワケにもいかないし」
「よしきた」

 というわけで、腕に回すはずの『気』を全身にめぐらせて身体強化。
 局部的強化もなんとか修得しているのだが、そのあたりは特に気分で。
 地を蹴って宙へ跳びあがると、ぴょんぴょんと屋根をつたってホテル嵐山から離れたのだが。



「おいおい、俺たちに用事か?」
「やややっ、かわいらしいお嬢さん方やねぇ」



 宙に浮かんでいる、2人の人影を視界に納めた。
 月明かりではっきりとはわからないが、声色からして男女1人ずつ。

「アスカ」
「うん」

 その場でうなずき合って走るスピードを緩めると、5メートル程離れたアスファルトの上に降り立った。
 1人はアスカより真名より長身で外套のようにはためく上着を羽織って、胸当てが装備されている男性。
 もう1人はアスカよりも背は小さく、例えるなら刹那と同じくらいの身長で膝上までのパンツに無地のシャツの上から薄手の上着を羽織っている。
 実に動きやすそうな服装だった。

 そして、2人に共通すること。
 背中に黒い弓と矢。二の腕くらいまでの長さの双剣が鞘に納められていることから、現代ではあり得ない“武器”を持っていることだ。

 つまり。

「君たち…エクレールの仲間だね?」
「ああ、その通り。俺はヴィルテス。七天書の守護者が二、ヴィルテスだ」
「ウチはシンシア。七天書、守護者の五ば〜んめ。シンシアや」

 砕けた口調のヴィルテスと、木乃香とよく似た口調のシンシア。
 よろしく、と2人は月をバックにニッコリ笑って見せた。



「私たちは修学旅行で忙しいのだが、急ぎの用事だったのかな?」
「いえいえ、そないなわけではあらしまへん。せやけど、ウチとこの主はんには必要なことなんよぉ」
「俺たちゃぁ、あそこの連中が寝静まった後にサクッと魔力をもらいたいだけなんだ」

 わりぃけど、見逃しちゃあくれねえか?

 苦笑しつつ、ヴィルテスはそう口にしたのだけど。
 もちろん、そんなわけない。魔力を奪われた後のことは、一度奪われているアスカにはよくわかっているので。

「ダメだよ。そんなことしたら、せっかくの修学旅行がダメになっちゃうし」

 魔力を奪われると、最低でも1日は動けない。
 だからこそ、ここは死守せねばクラスメイトたちが…ひいてはネギや木乃香まで犠牲になってしまう。

 ……負けるわけにはいかないよ。

 いつもどおり戦えるように『気』を腕に集中させる。
 唯一使える扉(ゲート)の魔法をいつでも発動できるように、事前準備のためにもぶつぶつと高速詠唱。
 真名は肩にかけていたギターケースを地面に置くと、振動を与えて2丁の拳銃を掴んでセーフティを解除した。
 中には特殊な術の施された銃弾が装填されているという話だ。
 ちなみに拳銃は拳銃ではなく、ただのエアガン。銃刀法違反にはならないことをここに記しておこう。

「そか。それじゃーしかたねェよな」
「悪いけど、あんたたちにはしばらく寝ててもらうえ」

 ヴィルテスは背中の短剣を引き抜き、シンシアは両腰の双剣を構えた。
 背中の弓を使わないのは、2人がオールマイティに動けるということを見抜いているから。
 真名のエアガンはともかく、アスカの大剣は接近戦として主に使うようにしか見えないのだけど、彼のアーティファクトの場合は別だ。
 エヴァンジェリン戦でも速度のある雷撃を放っているため、遠距離からでも攻撃は可能。
 おそらく、エクレールに話を聞いたのだろう。

「麻帆良学園女子中等部3−A……神楽坂飛鳥」
「同じく龍宮真名だ」

 向こうの名前だけを知っておいて、こちらの名前を告げないのはなんとなくイヤだから。

「Ready……」

 口にしたのはヴィルテス。
 戦闘開始を告げる合図。
 それに続いたのは、シンシアだった。

「GOv」

 2対2の…タッグ戦が始まった。






はい、次回はバトルです。
タッグバトル。2対2。とはいえ、戦闘自体は個別になるかと思われます。


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