「ふわ、それじゃおやすみぃ〜」 「おいしかたよ。また騒ぐネ」 「アスカさん、ごちそうさまでした〜」 今度は、私がなにかごちそうしますね。 上から9番春日美空、19番超鈴音、24番葉加瀬聡美、30番四葉五月。 アスカが呼んだ酔いつぶれていない2班のメンバーである。 宴もたけなわ、お鍋の具も食べ尽くしてまったり時間を満喫した後のことである。 ずいぶんな時間を騒いだはずだったのに、4班酔いつぶれ組はまったく起きる気配すら見せていない。 ある意味スゴイと感じたのはアスカだけではないと思う。 「おやすみ〜」 4人はそれぞれ言うと、あくびをしながらも自室へと戻っていった。 この場に残ったのは、4班のメンバーと楓だ。 「いや〜、このような場所で鍋にありつけるとは思ってもみなかったでござるよ」 「うむ。それは私も同感だ」 「喜んでもらえたようでうれしいよ…あ、アキラ。悪いんだけど、鍋…洗ってきてもらえるかな?」 「ん…わかった」 皿や鍋の後片付けをしながら、アスカは2人の言葉にそう返す。 アキラは目的の皿を受け取って、廊下へと姿を消した。 「それじゃ…話を聞かせてもらおうか?」 「…え?」 唐突な話の振り方に、思わず素っ頓狂な声が上がってしまった。 話を聞かれないようにさりげなくアキラを誘導したはずなのだが。 「拙者たちに隠し事は…通じないでござるよ」 「今日、お前は特にそわそわしていたしな。ちらちらと私たちのことも伺っているようだったし」 あれじゃ気づかない方がおかしいぞ。 真名はそう口にして、軽く吹き出したのだった。 魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫− 修学旅行依頼編 「……そっか。さすがだね」 「アキラ殿に鍋を洗いに行かせたということは…彼女には聞かれたくない話でござるな?」 ……ずいぶんとめざといと思う。 とにかく、ここまで言われては話さないわけにはいかない。 まぁ、最初から話すつもりだったんだけど。 片付けのために動かしていた手を止めて、2人に向き直ると正面に正座した。 酔いつぶれ組はいまだ起きる気配がないので安全だ。 「実は、2人に知っておいて欲しいことがあるんだ」 そんな言葉から、話が始まったのだった。 ……… …… … 「『七天書』?」 関西呪術協会のことは伏せながら、自分たちの身に降りかかるであろう脅威だけをかいつまんで話をした。 停電の後1日休んだ理由から始まって、学園長から聞いた書に関する話。 7人の守護者と呼ばれる騎士たちが書の完成のために奔走しているということ。 その実力は折り紙付きで、彼らの狙いが強大な魔力だということ。 その辺りを考えると、ネギや木乃香が危険に晒されることは確実だということ。 関東魔法協会の力が及ばず、関西呪術協会のお膝元であるこの京都だからこそ、襲撃をされるのは間違いないということ。 「魔力を駆り集める7人の騎士たち、か…」 「またずいぶんと突拍子もない話でござるなぁ」 端から見ればファンタジーだ。 魔法や魔力なんて、本やゲームの中でのものとしか認識されていないのだから。 「で、その七天書とやらが完成すると、どうなるんだ?」 「うん。その書本来の名前が『七夜統べる魔法書』っていうらしくてさ。完成すると世界を統べる強い力が手に入るんだって。でも、それにも効果時間っていうのがあるらしくて…1週間」 この話は、学園長から聞いた『だけ』の話だ。 書が完成してしまえば周囲の生き物という生き物が死滅するようなので、本当に1週間で効果が切れるかは定かじゃないから。 「話半分に聞いておいてくれい」とヒゲを撫でながら言っていたのはまだ記憶に新しい。 「1週間……でござるか?」 「そ。確たる証拠がないから、そのあたりは微妙だけどね」 「それで、もしもの時のために私たちに助力を願おうということだな?」 真名の言葉に、アスカはこくりとうなずいた。 相手は最大で7人。対してこちらで対抗できるのは刹那とアスカだけ。 明日菜は戦闘に関しては素人同然だし、ネギも魔法が使えても明日菜と2人で1人前と考えたほうが無難というものだ。 魔法使いというものは、もともとそういう存在なのだから。 「しかし、そのようなことを拙者らに話してよかったでござるか?」 「…まぁ、知られて何かあるってワケでもないし、僕がオコジョになるわけでもないし。むしろ知っておいて貰った方が後で戸惑うこともないだろうし」 アスカは『友達』を信じているから。 幻想を抱きすぎているような、そんな感じもないわけではないが、ウェールズでは近しい人間も限られていたから。 それだけ『友達』という言葉は彼の中で強い存在になっているのだ。 「とりあえず、わかったと言っておこう。だけど……助っ人料は、高くつくぞ?」 「鍋の礼もあるでござるし、必要なときは呼ぶでござるよ」 そんな2人の言葉に、笑顔と共に「ありがとう」と口にしたのだった。 「むぅ? あれ、ここどこやぁ?」 むくりと起きたのは亜子だった。 しょぼしょぼと目をこすっているところを見ると、聞かれてはいないようだったので、一安心。 こころなしか、まだ頬は赤い。 「お、おはよう亜子。頭とか大丈夫?」 「頭? だ〜いじょ〜ぶやよ、な〜んもあらへんで」 「そ、そう……」 亜子は皿の積まれたテーブルに目を移して、焦点を合わせるかのように目を細める。 「ほれ、水。飲んでおけ」 「ん、さんきゅ〜な」 真名に渡されたコップを受け取って、亜子はぐいと一気飲み。 「ぷは〜」と全部飲み干して息を吐き出していた。 「あ〜、いー気分やぁ」 「ちょっ……」 亜子はアスカに寄りかかって、再び寝息を立て始めていた。 「おぉ、いい構図じゃないか」 写真でも撮るか? そう言ってカメラを取り出す真名を慌てて止めようとしたのだが、亜子が寄りかかっているので動けず、結局写真に収められてしまったことをここに記しておこう。 亜子をなんとか布団に寝かせて、アスカは鍋に使った皿や箸を洗うために廊下をさまよっていた。 本来なら新田先生に見つかって怒鳴られるところなのだが、なぜか彼は姿を見せることなく、共同洗面所に辿り着いた。 このホテル嵐山、洗面所自体は部屋にあるのだが、廊下を出た先に共同で使える洗面所があるのだ。 アキラもそこでせっせと鍋を洗っていた。泡立ち具合がものすごいことになっていて泡自体が鍋に山盛りになっているが、そこは軽い気持ちでスルーする。 「ゴメン、遅くなった」 「ううん、大丈夫」 社交辞令みたいな言葉を互いに交わして、彼女の隣に積まれた皿をおいた。 「あ。水、結構つめ……」 「うわつめたっ」 言おうとしたときにはすでに遅く、想像以上に冷たい水に手をつけて慌てて引いた後だった。 子一時間の沈黙の後、 「は、ははは……」 苦笑。 水のついた手をひらひらと動かして、再び流れたままの水に手をつけた。 「しかし、スゴイ泡だね……」 「うん。普通に洗ってたはずなんだけど…こんなことになっちゃった」 鍋に盛られた山のような泡を見つつ、再び苦笑した。 「と、とりあえず…全部洗っちゃおうよ」 「そ、そうだね…」 そんな言葉を最後に、2人は食器に目を向けたのだった。 依頼しました。 メインは真名と楓ですね。 そして、アキラは蚊帳の外……ちょっと扱いがヒドイ気がしますね。 アキラファンの皆さん、すいません。 |
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