「すぅ……」
「むにゃにゃ……」
「すぴー…」

 音羽の滝に流れていた酒を飲みすぎて酔いつぶれてしまったメンバーをバスに押し込んで、『ホテル嵐山』に辿り着いていた。
 いくらゆすっても起きそうにないので、同じ班の人が抱えて部屋に連れて行くことになったのだが、

「まったく、調子に乗るからこんなことになるんだ」
「まぁまぁ。修学旅行ではしゃぎたかったんでしょ?」

 4班で酔いつぶれていなかったアスカと真名、アキラの3人はそれぞれは裕奈、亜子、まき絵を抱えて寝かしつけた。
 さすがは中学生。飲酒すらしてはいけないというのに、思い切りのみまくったせいで抱え上げたときも下ろしたときも起きるそぶりすら見せない。

「でも、アスカもかなりはしゃいでたよね」
「そりゃそうだよ。僕、京都初めてだし」

 アスカはウェールズからの(一応)留学生だ。
 名前から元は日本人ではないかと思われるが、本人がまだ小さい頃になにかの事故に遭って以来それ以前の記憶がない。
 そのため、実際のところはよくわからないのだ。
 唯一の手がかりは自らの名前だけなのだが、本人が現状に満足してしまっているのでそのあたりはまったくわからなかったりする。

「あぁ、はしゃぎすぎて小腹が」

 きゅるる……

 3人を下ろして一息ついたところで、アスカの腹の虫が小さく鳴いた。



魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
修学旅行食事編



「ちょっとネギ、ネギ!」
「あ、アスナさん…」

 カモとの談議も終わることなく、ネギはロビーでため息をついていた。
 新幹線の中でのカエル騒ぎや、今回の事件。
 すでに関西呪術協会のいやがらせは始まっていると見て相違ないのだが、気になるのはクラスメイトのこと。

 桜咲刹那。
 名簿に『京都神鳴流』と書かれている上に、アスカが微妙に絡んでいるようで、いまいち関わりがわからない。
 ネギ個人としては敵であってほしくないのだが、万が一ということもある。
 そんな理由から、どうすればいいのかとため息をついていたのだ。

「とりあえず、酔ってるみんなは部屋で休んでるって言ってごまかせたけど……」

 一体なにがあったって言うのよ?

 そう詰め寄る明日菜に、ネギはことの次第を話した。
 自分たちが関西呪術協会に狙われているということや、クラスメイトの刹那とアスカのこと。
 「ぜってえヤツらは敵だよ!」なんて言い張るカモの言もあって明日菜は終始驚いていたが、ただの推測にしか過ぎないので信憑性は皆無だ。

「とりあえず、続きは自由時間になってから聞くわよ。ウチこれからおフロだし」
「は、はいっ」
「OKっす、姐さん」

 そんな感じで別れたのだが、明日菜はとりあえずアスカのいる4班の部屋へ足早に向かっていった。
 先日のエヴァンジェリン騒動で助けてくれたアスカが、関西呪術協会の刺客だとは思えなかったからだ。

 ……軽く話だけ聞いて、お風呂入っちゃおう。

 そんなことを考えたまま、明日菜は4班の部屋の前にやってきたのだが。

「あれ?」

 なんだか、いいにおいが部屋の中から漂っている。
 確認するように鼻をひくつかせながら、扉をノックした。

「ちょっといいー?」
「……あれ、アスナ。どしたの?」

 扉を開けたのは麻帆良学園の制服に長い髪を後ろで軽く縛った――いわゆるポニーテールにしたアスカだった。
 開かれると同時に先ほどからのにおいがむわっ、と明日菜の鼻を襲った。
 …おいしそうなにおい。

「アンタたち、一体なにやってんのよ?」
「え? ああ……せっかくだからアスナもどう?」

 一度ちらりと中を見ると、明日菜を招き入れて扉を閉める。
 中では、

「おお、いらっしゃい」
「お疲れ様です」
「…………」

 ぐつぐつと煮えている。
 机に乗っかっているのは主に卓上コンロと土鍋、さらに取り皿と割り箸が置いてある。
 土鍋の中では白滝や白菜、豆腐、魚といった食材が湯気を立てていた。
 そんな光景にぽかんとしつつ、アスカに言われるがままに鍋の前にちょこんと座ってしまっていた。

「真名、アスナにお皿渡してくれる?」
「よしきた」

 何がなんだかわからない。
 まだ夕飯の時間でもないのに、この部屋ではなぜか鍋料理が展開されている。

「アキラ、そろそろよさそう。ポン酢をほらほら」
「……うん。おいしそうだね」

 ってか、土鍋とかコンロとかどっから仕入れてきたのよ!?

 周囲をとりまく和み空間に唖然としつつも、

「ちっ、ちっがーうっ!!」

 我に返ったアスナは…吼えた。
 だんっ、と勢いよく立ち上がると、アスカの首根っこを掴んで真名とアキラが見ている中、廊下へ引っ張り出す。
 ぺいっ、と首根っこから手を離しアスカを開放すると、

「コンロとか土鍋とか割り箸とか……なっ、なんなのよアレはーっ!!」

 まくし立てた。
 なんなのと聞かれても、「お鍋です」と言うしかないのだけど。
 元はと言えば、以前の真名との約束を果たしていただけなのだ。

 今度料理食べに来て。

 そんな約束。
 刹那や楓もその時一緒にいたのだが、刹那は木乃香の護衛で忙しい。
 楓はこれから誘おうかと思っていたところだったり。

「お鍋以前に、道具とかどっから仕入れてきたのよ……」
「ああ、それはね……」
「いや、いい。やっぱりやめて。言わないでいいから」
「あ、そお?」

 なんだか、彼女がアスカを尋ねた趣旨が変わってきているような気がする。
 なので、現在の状況に頭を抱えながら急激に方向転換。

「…あのね、ネギたちが刹那さんは敵だーって言ってんだけど?」
「…………………………え?」

 目の前でアスカを見つめる明日菜の目は真剣で。
 鍋の話はここで取り下げたほうがよさそうで。

「敵って……一体なんの話?」
「何の話って、ネギたちから聞いたわよ。京都なんたら流の刹那さんに協力してるって」
「刹那……あー、あぁ」

 ぽん、と手を叩いて理解したかのようなそぶりを見せて、笑った。
 口元を押さえて、吹き出さないようにする。

「…ちょっと。なんで笑ってんのよ?」

 じとりとアスカを見やる明日菜はどこか訝しげだが。

「僕も刹那も、ネギを危険にさせようとか思ってないよ」

 刹那もアスカも、『木乃香を守ってくれ』と学園長から直々に頼まれただけなのだ。
 最も、アスカはすこし手を貸すだけなのだけど。
 関西呪術協会の他にも、『七天書』という脅威が迫っていることはアスカが魔力を奪われた時点で明白。
 本来なら気は抜けない状況なのだけど。

「大丈夫だよ。頼りになる仲間はいっぱいいるから」

 明日菜にそう告げて、ニッコリ笑ったのだった。
 最も、彼女はなんとも納得しがたい表情をしていたのだが。

「とりあえず明日菜もお鍋、一緒につつかない? これから楓とダメもとで刹那も呼んでくるけど」
「へ? あ、ああ……これからおフロ入ろうかと思ってたトコだし、ネギと話もしなくちゃだから、ゴメン」
「そっか。それじゃあ、僕はこれから楓の部屋に行ってくるから!」

 あとよろしく!

 そんなことを口にして、ぴゅーっと廊下を走って姿を消してしまった。
 その場に残された明日菜はぽかんとしていたが、

「…あとよろしくって、なにが『よろしく』なのよ」

 そんなことをつぶやいていたとか、なかったとか。











 その後、楓を含めた酔いつぶれていない2班を含めたお鍋大会が催されたのだった。
 ちなみに、その日の夕飯は参加人数が少ないと言う理由で申告制になったことをここに記しておこう。









はい、冬なのでお鍋ネタです。

道具とかどこから仕入れてきたの!?
という質問にはノーコメントとさせていただきます。
主人公には謎がいっぱい(?)みたいな感じにしておいてください。
ヘンな文章ですいません。


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