「で、刹那。僕は具体的に何をすれば?」 「そうですね……このかお嬢様は私が影からお守りしますから、アスカさんはいつもどおりみなさんと修学旅行を楽しんでください」 必要なときは連絡しますから、と。 刹那は新幹線のラウンジでアスカにそう告げた。 今は新幹線で移動中。 このとき、客車内では108匹カエル騒動が起こっていたのだが、電車が走る音のせいで2人にはまったく聞こえていなかったりする。 そのときだった。 「コラ―――ッ、親書を返してくださーい!!」 「兄貴、ありゃ『式神』だ!」 「シキガミ!?」 「おうよ! 日本の使い魔だ。あれは紙…無生物だから、ペーパー・ゴーレムってところだな!」 奥の客車から、ネギが走ってくるのが見えた。 何かを追いかけているようだが、アスカにはそれが何かわからずじまい。 「じゃあ、アスカさん。そういうことで、お願いいたします」 「うん、了解」 そう互いに言葉を交わしたところで、扉が開いてなにかが飛んでくるのが目に入った。 ネギは車内販売のカートにつまずき、転んでいる。 相変わらずのドジっぷりだ。 なにか、とは、ツバメだった。 口に手紙のようなものをくわえているが、おそらくネギが学園長から仰せつかったという西への『親書』だろう。 細い通路を突っ切ってきたツバメは、 キンッ 刹那が目にもとまらぬ速さで夕凪を抜刀。 ツバメは色をなくして真っ二つになり、はらりと床に落下した。 「おお」 狭い車内での早業に、思わず拍手。 刹那はほのかに顔を赤く染めていたのだった。 魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫− 修学旅行観光編 「京都ぉーっ!!」 「これが噂の飛び降りるアレね」 誰か、飛び降りれっ!! 京都に到着早々、3−A一行は清水寺を訪れていた。 「清水の舞台から飛び降りたつもりで……」という言葉の通り、飛び降り事件が多発しているこの重要文化財だが、見晴らしはすこぶるよかった。 天気がいいのでさらに遠くまで見えた。 「おぉ〜、スッゴイね。来てよかったさ〜」 「そういえば、アスカはネギ君と同じでウェールズ出身だったよね」 「ってか、アスカ落ちる落ちる」 手すりから身を乗り出して京の街を眺めていたアスカに話し掛けたのは、チア3人組だった。 今にも落ちてしまいそうなアスカをおし留めようとアスカを軽く羽交い絞めにしていたのだ。 隣でネギも同じように明日菜に羽交い絞めにされていて笑える。 「ネギ先生に喜んでいただけてよかったですわ」 クラスに多くの留学生がいるうえに、先生のネギがイギリスの人である3−Aだからこそ、あえて京都を選んだのだ。 選んだあやかは嬉しそうにそう口にしていた。 「ここから先に進むと、恋占いで女性に大人気の地主神社があるです」 『えっ!?』 「恋占い!?」 そんな夕映の一言で、一部の人間の目の色が変わっていた。 びし、と石段の下を指差し、三筋の水が流れ落ちている小さな建物に全員を釘付けにさせていた。 名称は『音羽の滝』。向かって左から健康・学業・縁結びである。 ここはみんな女の子。縁結びにばかり目が行ってしまって、 「左っ、左―――っ!!」 こぞって縁結びの滝の水を飲みまくっていた。 「いぃ所だねカモ君」 「うん、さすがは京都だな」 縁結びの水をガンガン飲んでいくクラスメイトのみんなをぼーっと眺めつつ、 「木で作った古い建物っていうのがスゴくていいっていうか……」 「だが兄貴! 警戒を怠るんじゃねーぞ。ここはもう奴等の本拠地なんだからな!」 京都は『関西呪術協会』のお膝元。 カモは明らかに刹那の存在を疑っていた。 ネギはネギでクラスメイトを疑うことをしたくないのだろう、カモの忠告を聞いて渋っていたが、 「でもよ兄貴。いきなり襲われたら……」 「大丈夫だと思うよ。ほら、アスカと一緒にいたし……」 「い〜や、奴もわからねえぞ。あの刹那って奴にいろんな理由で協力してんのかもしれねえ」 「いろんな理由ってなに?」 「…………」 ネギの突っ込んだ質問に、カモは押し黙ってしまっていた。 その脇で夕映はどこに持っていたのかペットボトルに水をいっぱいになるまで入れているのが見えるが、特に咎めるでもなく。 「なんか、みんな酔いつぶれてしまったみたいですが」 「ええ――――っ!!」 こぞって飲んでいた十数人は「霊験あらたかな味」とか言いながら飲みまくっていたので、その場で眠ってしまっていたのだ。 ネギが屋根の上を確認すれば、その水だけ酒樽から酒が流れ出ていることが判明し、慌てて全員を起こしてバスへ押し込んだのだった。 「あれ、アスカ?」 「ネギ先生」 アスカは押し込まれたメンバーの後に続いてバスに乗り込んだのだが、乗り込んだのは一番最後。 全員を乗せ終えてから、ネギはアスカに続いてバスに乗り込んだのだが。 「あのさ、ちょっと聞いていい?」 「ん?」 おずおずと先を行くアスカに話し掛けるネギだったが、肩に乗っているカモはどこかアスカをにらみつけているようにも見えた。 ……なにか、ヘンなことしたっけ? そんな考えが頭をよぎる。 「桜咲さんと、なにかやってるの?」 「……刹那と、ね」 特に、何もした覚えはない。 ただ、木乃香の護衛の相談をしていただけだ。 「特には……なにもしてないよ」 「ウソつけっ! あの女となんか企んでんだろ!?」 わかってんだぜ! アスカの答えを聞いてか、カモがクラスメイトに聞かれないくらいの声量でまくし立てる。 …なにがわかっていると言うんだ。 カモのことだから、勝手に推測して判断したのだろう。 「ア〜ル〜ベ〜〜ル〜……」 「ひぃっ」 ネギの肩からカモを掴み上げ、尻尾をしっかと握ると、 「うわゎわゎわゎわゎわゎっ」 ギュンギュンと回し始めた。それはもう、ちぎれそうなくらいに。 でも、そこは問題ありません。なにせ、小説ですから(by 管理人)。 走馬灯のように変わっていく景色を見ながら、カモは悟った。 ……コイツはやっぱり悪魔だ、と。 「……とにかく、僕も刹那もネギに都合の悪いことはしてないよ」 例の七天書の守護者の件は言わなくてもいいだろう。 ただでさえ関西呪術協会のことがあるのだから。 これ以上彼に仕事を押し付けるわけにはいかない。 「アルベールも、いいね? 僕たちは何もしない。するつもりもない」 「うぐぐ……へっ、そんなの信じられるか……ハッ!?」 「………」 尻尾を握ったままだったことに気づき、口にしてから後悔した。 しかし、もう遅い。 「第2弾」 「おあわわわわわわーっ」 再び尻尾を中心にぐるぐるぐるぐる。 回しながら、アスカはネギを見やり、 「ネギは、わかってくれるよね?」 「はっ……はははいいいっ!!」 ビシッ、と背筋を伸ばしてそう返事をしたのだった。 とりあえず音羽の滝まで。 この時点ではまだ原作の29時間目の最初だけなんですよね…。 そして、アルベール危うし。 よい子の皆さんは、動物の尻尾を持ってぐるぐる回すのはやめましょう(爆)。 |
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