『――こちらは放送部です……これより学園は停電になります……』

 誰もいない麻帆良学園都市に、人口の鉄塔に備え付けられたスピーカからトーンの高い声が響く。
 街灯はジジジジ、と音を立てて明滅し、今にも消えそうな雰囲気だ。

『学園生徒の皆さんは、極力外出を控えるようにしてくださ……』

 少々のノイズを走らせながら、トーンの高い声はさらに言葉を続ける。
 しかし、その言葉は最後まで放送されることはなく。

 大時計台の長針がXII、短針がVIIIをさす。
 学園都市全体の電源が落ち、光という光が一瞬で消え去った。




「封印結界への電力停止――予備システムハッキング開始…成功しました」

 電力が落ちているというのに、なぜか光を放ちつづけているパソコンを前に、茶々丸はつぶやく。
 その瞳はロボらしく虚ろだが、キーボードを叩く指は早い。

「…………すべて、順調」

 動かす指を止めることなく、

「マスターの魔力、戻ります……」

 かち。
 最後のキーを押した瞬間。
 学園都市に強大な魔力が膨れ上がっていった。



魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
合流



「……う〜ん」

 そんな中で、我らがアスカくんはと言うと。
 うなされていた。

「…ち〜がうよって。だからぁ……あっ、ちょっ、ちょっとまっ……」

 だらだらと冷や汗が流れ、

「ぎ、ぎぃやぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!?!?!?」

 ばさあっ!

 見事に跳ね起きていた。
 息切れがヒドイ。心臓はドッキドッキいってるし、冷や汗が頬を伝った。

「よ、よかった…夢で……」

 一体、どんな夢を見ていたんだろう?
 なんて、考えてしまう。もちろん、そんなことは彼にしか分からないのだけど。

「ま、いいか。とりあえず、もう一回寝て……」

 ばさりと掛け布団をかぶり、目を閉じるが。

「ダメだって!!」

 再び跳ね起きた。
 感じる巨大な魔力。ルームメイトは2人して部屋にいない。
 ベッドに入った形跡もない。
 …ということは。

「やっ、やられた! ってか、僕今夜だって知ってたじゃん!!」

 本人から聞いていたのに、見事に忘れて寝入っていた彼ですが。
 慌てて立ち上がり、服を着る。
 もちろん、誰がいるか分からないので学園の制服を着用する。
 誰かがいたところで、戦っていればそれこそ怪しまれるのは当然なのだけど。

「急がなきゃ!!」

 窓を開ける。
 そして……その身を投げた。

「投げてないっ!!」

 ……すいません。

アデアット
「来たれ!」

 万有引力の法則に乗っ取って落下する中、アスカはカードを取り出して告げる。
 カードは光を帯びて、一瞬のうちに真っ白い大剣へと姿を変えた。
 その切っ先を迫り来る地面に向けて、

  旋じ風
「whirlwind!」

 叫ぶ。
 すると、刀身が風を纏い、地面の寸前でふわりとその落下を止めていた。
 すと、と地面に降り立つと、一目散に走り出す。

(移動してる……さっきは大浴場、今は……学園の端っこ?)

 というわけで、目標変更。

「急げ、急げ!」

 魔力の感じる方へ。
 アスカは進路を取っていったのだった。













ウェニアント・スピリトゥス・グラキアーレス・エクステンダントゥル・アーエーリ
「来たれ氷精、大気に満ちよ」

 何か目的を持っているかのように、宙を疾走するネギを追いかけ、エヴァンジェリンは呪文を唱えていた。
 彼女の得意とする氷の魔法。
 魔力の枷が外れているからこそ、行使できる魔法なのが彼女自身納得いかないのだけど。

トゥンドラーム・エト・グラキエームス・ロキー・ノクティス・アルバエ
「白夜の国の凍土と氷河を…」

 全開ではないがここまで魔力を行使するのも、かのサウザンドマスターに登校地獄の呪いをかけられてから15年ぶり。
 ……最高だ。
 そんなことを考えつつ、

クリュスタリザティオー・テルストリス
「『こおる大地』!!」

 魔力を帯び、光る右手をネギに向けた。
 彼は丁度橋にたどり着いたところで、発生した氷は着地しようとした彼を襲う。
 直接食らいはしなかったものの、その余波で吹き飛ばされ背中から地面に落ちていた。

「この橋は学園都市の端だ。私は呪いによって外に出られん。ピンチになれば学園外へ逃げればいい、か?」

 意外にせこい作戦じゃないか?

 ゆっくりと橋上に降り立ち、ネギを見据えると笑みを見せる。
 反対にネギは地面に寝そべったまま、険しい表情でエヴァンジェリンを見つめていた。
 あきらめたのか、何か策があるのか。
 その答えは、

 パシィィィンッ!!

「やった!」

 ネギは勢いよく立ち上がった。
 エヴァンジェリンと茶々丸を中心に展開されている魔法陣。
 2人が来るのを今か今かと待っており、中心にやってきたところで一気に開放したのだ。
 陣から複数の光の帯が2人に伸び腕を、身体を、足を。
 巻きつき、拘束していた。

「これは…捕縛結界!?」
「もう動けませんよエヴァンジェリンさん!」

 コレで僕の勝ちです!!

 杖を片手に、得意げに拘束されたエヴァンジェリンにネギはそう告げる。
 しかし、彼女の表情に焦りはない。

「そうだな、本来なら…ここで私の負けだろうな」

 首だけを回し、茶々丸に向けると。
 一緒に捕まっていた茶々丸はコクリとうなずく。

「結界解除プログラム始動。すみません、ネギ先生……」

 両耳のアンテナを変形させ、結界に干渉する。
 すると、瞬く間に彼女たちを拘束していた光はひび割れ、

「15年もの苦汁をなめた私が、この類の罠になんの対処もしていなかったと思うか?」

 このとおりだ。

 結界は見事に破壊され、2人を拘束するものはなくなっていた。
 いわゆるハイテクというものらしい。
 苦労して作った結界が水の泡だ。

「ぅうっ! ラス・テル・マ……はうあっ!」

 魔法使いは、詠唱時は無防備。
 以前エヴァンジェリンが言っていた言葉だが、それすらも忘れてネギは自らの始動キーを紡ぐ。
 しかし、彼の杖を茶々丸に奪われていた……普通に。
 「奴の杖か」と一瞥したエヴァンジェリンは、彼の杖を橋の外へ投げ落としてしまっていた。

「うわーん、ひどいー! あれは僕の何よりも大切な杖なのに……」

 ぐずりながらも、はっきりと言葉にしてエヴァンジェリンに食ってかかるが。

「一度戦いを挑んだ男がキャンキャン喚くんじゃない!」

 一喝。
 ネギは涙目になりながらも、口を閉ざしたのだった。

「ま、お前はよくやったよ。ぼーや。さて……血を吸わせてもらおうか」

 エヴァンジェリンは、そうつぶやいて橋の手すりに寄りかかっていたネギに覆い被さったのだった。













「あ、アスナ!」
「アスカじゃない!」

 橋へ続く合流地点で、アスカとアスナ&カモは互いに駆けながら顔を見合わせていた。
 目的はもちろん、ネギのいる橋の中腹地点。
 明日菜は何も持っていないが、アスカはその手にアーティファクトである大剣を持っていて。

「あんた、それ……」
「そういや、茶々丸さんを助けたときは見てなかったね。コレ僕のアーティファクト」

 重たそうな白い大剣を片手で明日菜に見せながら、アスカはへにゃりと笑う。

「姐さん、アスカ! 今はしゃべってる場合じゃねえぜ! 早えトコ兄貴のところに行かねぇと!」

 そんなカモの声で我に返り、再び顔を前に向ける。
 派手な戦闘はやっていないらしく、とても静かだ。
 明かりがないので、さらに不気味にも思える。

「あ、あそこ!」

 明日菜の指差す先。
 そこで、エヴァンジェリンがネギに覆い被さっているのが見えた。

「大変だ! 血吸われてる!?」
「コラ――――ッ!! 待ちなさ――い!!!」
「は、早ッ!?」

 明日菜は額に青筋浮かべて、走るスピードを上げた。
 あっという間にアスカとの距離を離すと遮ろうとした茶々丸をカモが足止め。

「オコジョフラーッシュ!!」

 どこからか取り出したマグネシウムとライターを両手に、カモは茶々丸の目の前で強い閃光を放っていた。
 茶々丸に謝りながらもあっという間に目的地にたどり着くと、展開された魔法障壁をぶち抜いてエヴァンジェリンに飛び蹴りを加えていた。
 明日菜の走る勢いと飛び蹴りによる足の力が加わり、エヴァンジェリンは数メートル先まで吹っ飛ぶ。
 体勢を立て直して正面をにらみつけるが、

「あれ?」

 明日菜とネギ・カモの3人の姿は忽然と消えてしまっていた。





「くっ、どこだ!?」
「申し訳ありません、マスター」

 アスカは、そんな場面でやっとこさエヴァンジェリンの元へ辿り着いていた。

「エヴァンジェリンさん、鼻血でてるよ?」
「マスター、鼻血が……」
「えぇい、どこに行った………って、神楽坂飛鳥…貴様いつの間に!?」

 気づけよ。
 白い大剣を携えたアスカを凝視し、奪うように差し出されたティッシュを受け取ると、鼻血を拭った。

「今、2人は相談中。だから……少しでもネギの勝率が上がるように、僕の相手、してもらうよ?」

 大剣を肩口にかけ、告げた。





「ほう、貴様などが私に勝てるとでも?」
「勝てはしないだろうけど、時間稼ぎくらいならできるよ」

 大剣の切っ先をエヴァンジェリンに向けるが、彼女はさほど焦る様子もなく。
 ただ余裕とも取れる笑みを浮かべていた。

「……いいだろう。では、相手になってもらうぞ『白き舞姫』よ」
「『白き舞姫』? なにそれ……って、まぁいいか」

 実は、アスカは自分が『白き舞姫』と呼ばれていることを知らなかった。
 彼はもとより男だから『姫』じゃない。
 白い大剣は使っているけど、そんな噂耳にしたことすらなかったのだが。

「いけ、茶々丸!」

 そんなことは問答無用で、橋上決戦第2ラウンドが開始された。




オリキャラ出てきません。
次回出ます。必ず。
まずは主人公vsエヴァンジェリン&茶々丸をやりたかったんですよね。


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