「――おはようございますっ! エヴァンジェリンさんはいますか!?」 教室に入るや否や、ネギはそんなことを口にしていた。 彼の声に口々に反応し挨拶を返す中で、 「エヴァンジェリンさんなら、まだ来てないですが」 「何や、カゼでお休みするて連絡が……」 保険委員の亜子は、用件の書かれた紙をネギに手渡した。 中身を眺めて、ふむと考えこんむような仕草をして、 「よしっ」 「あっ、ネギ。どこ行くのよ?」 バイト帰りでネギよりも送れて教室に入ってきた明日菜の声を聞くことなく、ホームルームもやらずに廊下を走り去ってしまっていた。 「ネギ君、土日はさんで元気でたなーv」 嬉しそうにつぶやく木乃香の隣で、楓が満足そうな笑みを浮かべていたのだった。 ってか、先生が廊下走るんじゃねえよ。 魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫− のんびり第2弾 「くぁ〜〜……」 「おーおー。おっきなあくびだねぇ」 ネギが不在でホームルームもままならなかったので、委員長のあやかが取り仕切って出席確認をすると、1時間目の予鈴はすぐになってしまっていた。 騒ぎ出したら止まらない3−Aのメンツだから、出席確認をするにも一苦労だっただろう。 特にはしゃぎまわる鳴滝姉妹を怒鳴りながら、あやかはひそかに汗をぬぐっていた。 ……委員長も大変だ。 そして、いつのまにやら昼休み。 アスカは昼食を済ませると、眠そうに大口開けてあくびをしていた。 その背後ではなぜか美砂を初めとするチア部が集まっているし、しかもイスの後ろにほっぽったままの茶色い髪を妙にいじくり回している。 「寝不足?」 「いや、食後って妙に眠くなるでしょ。多分アレだと」 前方の自分の席から身体をひねって、アスカを見つつたずねた裕奈にアスカはそんな答えを返していた。 時はまだ4月でぽかぽかと暖かい陽気が続いているし、桜はほとんど散ってしまっているけど。 「な〜んか、このまま昼寝でもしたいかも……ってか、そっちはそっちでなにやってるの? 僕の髪なんかいじったって面白くないと思うけど」 「えっ!? あー…そうそう!」 答えに困った桜子は、天井へ視線を向けつつ言葉を濁すと、 「アスカって、ネギ君と出身同じだったよね?」 そんなことをたずねてきていた。 例の王子様説のことだろうか。 「うん。僕名前が日本っぽいから、元は日本人なんだと思うんだけど……物心ついたときにはウェールズでネギとネギのお姉さんと一緒だったからねえ」 そんなことを言いつつうなずく。 生まれも育ちもウェールズでは『神楽坂飛鳥』なんて名前、まずありえない。 生まれが日本で、何らかの理由からウェールズに引っ越したと考える方が妥当なのだが、どうやらそれは彼がかなり小さかった頃の話らしく、本人もそのときのコトをほとんど覚えてはいなかった。 「そっか〜…じゃあさ、じゃあさ! ネギ君が王子様って、ホント?」 やっぱり。 予想は的中。ネギ王子様説再浮上らしい。 「僕が知る限りだと……そんな話聞いたことなかったけど……」 「ま、そー簡単にどこぞの王子が来るわけないよね……」 円は当然よね、などと言わんばかりにつぶやいた。 「あーっ、くぎみんズルイぞ! こないだはあんなに乗り気だったのにさ!」 「くぎみん言うな!」 論点違うし。 「……もったいない」 『へ?』 アスカの髪をいじりながら、美砂は険しい表情でつぶやいた。 いきなりそんなことを言われても、反応などできるわけもない。 どこか抜けたような声を発して、何がもったいないのかを聞く必要があったのだけど。 「あんた、こんなキレイな髪をそのまんまにしとくのはもったいないわ!!」 「あ、あの…かきざきさん?」 「アスカ、どーすればこんなキレイな髪になるの!?」 スゴイ剣幕だ。 アスカ自身は、亜子とまき絵に「使っていいよ」と言われていたシャンプーやら何やらを使っているだけなのだけど。 「美砂の髪だって、キレーだと思うけど……」 「…違うの、私のとどこか根本的に違うのよ!」 アスカの髪を梳きながら、ふう、とため息をついた。 アスカからすれば、髪のことなどたいしたことではないのだが。 美砂は髪をいじりながら、今度はいくつか分けて編み始めた。 「確かに、美砂の言うことも分かるかな。アスカは自分で髪の毛いじったりしないの?」 「ん」 ごそごそ、と制服のポケットから白く細い布を取り出す。 戦闘時に髪が邪魔にならないように、一つにまとめるためのものだ。 長いこと使ってて、だいぶボロボロになってしまっているが。 「これで、後ろで一つにまとめるの。邪魔になっちゃうから…」 「なんか、かなり年代物よね」 「年代物ってか……使いすぎて、ボロボロになっちゃったんだけども」 こうやって。 自分で髪をまとめて1つにまとめると、中心あたりをまとめた部分にあてがって、ぐるぐると巻きつける。 ある程度の長さまでぐるぐる巻きにしたら、蝶々結びでぎゅっと締めた。 一般では「ポニーテール」と呼ばれる髪型なのだけど。 「なんか、改めて見ると……」 「妙に凛々しく感じるのは気のせいなんかなぁ」 図書館島で一度今の状態のアスカを見たことのある亜子と裕奈は、そのときのことを思い出しながらしみじみとつぶやいた。 凛々しく見えるのは、アスカが竜と戦っていたからだとも考えられるのだけど。 「う〜ん、確かにそんな感じはするよね〜」 「でも、ポニーテールだけじゃもったいない! せっかくだからこの際、アスカの髪を思いっきりキレイにしちゃおう!」 「…へ?」 ………イヤな予感がした。 昼休みは昼休みで髪の毛を思い切りいじくり回され、時は放課後。 「さ、行くわよ!」 「……どこへ?」 たずねるアスカに、美砂は当然のごとく 「どこって、私たちの部屋よ」 「美砂、オシャレにはちょっとうるさいからね〜」 「ゴメン、私には止められないよ。アスカ……」 結局、授業が終わった後もネギは現われなかったので、授業が終わるとそのまま流れ解散になっていた。 美砂を中心にチア3人組がいっせいにアスカの周囲に集まり、腕を組んで引きずっていく。 その後を亜子と裕奈がアスカのカバンを持って追いかける形になっていた。 仲の良い3人だ。 所属する部も同じであれば、寮の部屋割りも同じという、スバラシイ仲の良さだ。 どのような経緯でそこまで仲良くなったのか、本当に気になるところだけど。 「いや、でも僕……」 「いいの! アスカは何も言わずに一緒に来て!」 亜子と裕奈を見ると。 『…………』 2人して苦笑い。 助けてくれと目で訴えても、まったくの無意味だった。 「うぅ……」 仕方ない。 男だとバレてしまうわけではない。 ただ、髪をいじるだけなんだからと。 アスカは自分に言い聞かせて、無理やり納得したのだった。 結局、その日は夜まで3人の部屋でさんざん髪をいじくられていたアスカだった。 ツインテールにしてみたり、後ろで団子にしてみたり、美砂のように軽くウェーブをかけてみたり。 まさにやりたい放題だったということだけを、ここに記しておこう――― と(滝汗)。 すいませんすいません。 チアの3人を同室にしてしまいました! 本来はまだ部屋の番号などは分からないのですが、勝手に決めちゃいました。 |
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