「む……」

 朝。
 カーテンの隙間から差し込む光に目を細めながら、アスカは目を覚ました。
 時計を見ると、まだ起き出すには早い時間だ。

「目、さめちゃった……」

 ごしごしと目をこすると、すでにほとんど眠気がないことに気づく。
 顔を洗ってこようかと、ベッドを降りた。



「……っ」

 顔を洗って、制服に着替える。
 亜子とまき絵はまだ眠っているが、朝ご飯でも作っておこうかと思い立つ。
 ご飯と目玉焼き。それに、味噌汁。
 日本の食卓には欠かせない、至って典型的な朝食のメニューだった。
 ちなみに味噌汁は、以前亜子とまき絵に教わったもの。

「さて、ちゃっちゃと作っちゃおうかな」

 今日も、一日が始まる。
 エヴァンジェリンさんの様子が気になるけど、いつもどおりいこう……



魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
アルベール・カモミール



「姐さん、おはようございます」

 いやー、コレぬくぬくッスよー。

 さて、冒頭から女性用の下着に囲まれて嬉しそうにしゃべったこの物体は。

「――ったくもう! 下着ドロのオコジョなんて、とんでもないペットが来たもんだわ!」
「まーまー、アスナ。きっと布の感じが好きなんやろ」

 ネギの肩に乗って、周囲をきょろきょろと見回す、白いソレは。

「カモくん、学園ではあんまりしゃべっちゃダメだからね!」

 本名アルベール・カモミール。
 自称由緒正しいオコジョ妖精………らしいのだが。

「だったらネギのパンツでもいいじゃない!」
「女物やないとやわらかさがイマイチなんとちゃう?」

 ネギとの再会初の朝から、下着ドロをかます一応ネギの使い魔ペットである。
 再会初日にのどかとネギを仮契約させようと一芝居打ったり、故郷ウェールズでは下着泥棒2000枚とかやらかしたり。
 とにかくやりたい放題のオコジョである。

「アスナ、このか。おはよう」
「ネギ君おはよーっ!」
「おはようさん」
「あ、アスカや。亜子もまき絵もおはよう」
「あっ、ちょっと聞いてよ――」

 挨拶をしたとたん。
 明日菜はアスカの肩に手を回すと完璧なひそひそ話モードに入っていた。
 ちらりと、ネギの肩に乗ったオコジョを見つつ。
 カモは身体を固くして、カタカタとその身を震わせて冷や汗を流し始めた。

「あ、兄貴! なっななななななんであの人がここに!?」
「え、カモくん知らなかったの? アスカはお姉ちゃんに頼まれてここに来てるんだよ」

 カモ自身、アスカの女装はすでに見慣れていたから、そこに関してツッコんでくることはなかったが。
 しかし、あの怯えようは尋常じゃない。

「しっかし、相変わらず、よく似合ってるッスよね――」
「カモ君! アレで結構気にしてるんだから、そんなこと言っちゃダメだよ!」

 しーっ、と、ネギは口元に人差し指を当てて、言わないようにと念を押した。






「ちょっと、なんなのよあのオコジョは!」
「あぁ。やっぱりあれ、アルベールなんだ」
「あれ、ってあんた……」

 かんらかんらと笑い、

「ある意味はっちゃけたヤツだけど、テキトーに付き合ってやってよ」

 ネギのお姉さんには伝えておくから。

 そう告げて、明日菜の肩にぽんと手を置くと。
 輪の中に戻っていった。

「どんなことしちゃってもいいからさ」

 そんな言葉を残して。



「アスカー、教室行くで」
「うん」

 明日菜はネギのお守りなのでその場に残し、亜子とまき絵に連れられて教室へ。
 階段の先へアスカが消えたのを確認して、

「あの子、微妙に黒いのね……」

 明日菜はそんなことをつぶやいたのだった。









「あの2人ッスね!? あの2人がその問題児なんスね!?」

 不良ッスか!?
 校内暴力!?

 明日菜とネギの2人になったところで、現われた2人。
 「ネギ先生が担任になってからいろいろと楽になった」と口にしたエヴァンジェリンとその従者茶々丸である。

「許せねえ! ネギの兄貴をこんなに悩ませるなんて! 舎弟の俺っちが……」
「あのエヴァンジェリンさんは吸血鬼なんだ。しかも真祖……」
「ぶち、の…めして……」

 つい今までの勢いが徐々に消え、そそくさと旅支度を終えると。

「く……故郷へ帰らせていただきます……」
「コラ」

 逃げようとしたカモの尻尾を明日菜がぐいと掴み上げる。
 半ば冗談だったようで、すぐに旅支度をどこかへしまい込む。
 階段の手すりに立つと、

「それにしてもよく生き残れたなぁ兄貴……真祖って言えば、最強クラスの化け物じゃないッスか」
「なんでも結界…とかいうので魔力が弱まってるらしいのよ。次の満月まではおとなしくしてるつもりらしいけど……」

 前半はアスカから、後半はエヴァンジェリン本人から聞いた話だから、間違いない。
 真祖のことを話だけ聞けば、かなり危険だということが明日菜でも理解できた。

「なるほどな……フフフ。でも、安心しろよ」

 オコジョのくせに不適な笑みを浮かべて、カモは2本足で立ち上がる。
 とてもじゃないけど、オコジョとは思えない。
 むしろ人間だと思っても遜色ないくらいだったり。

 しかもその笑みが、自分に向いているような気がして。
 明日菜は自分の身体をぶるりと身震いさせた。
 ……なんか、ヤな予感。

「アスカに手伝ってもらえばいいんスよ。あの人、なんだかんだ言って半端ねぇ実力持ってるし」
「そっ、そーなの!?」

 明日菜は驚いていた。
 ネギの関係者で、昨日の口ぶりから結構いろいろ知ってたりするんだろうとは思っていたけれど、まさか魔法使いだったとは。
 正確には魔法使いではないのだが、彼女からすれば同じようなものである。

「そっ、そんなのダメだよ。アスカは…その……」
「アスカには私が大まかに話したわよ。なんか反応はフツーだったけど」
「さすがです姐さんッ……ブッ!?」

 飛びつこうとしてかばんではたかれるカモミール。
 なんつーか、哀れだ。

「てて……でも、相手はあの真祖だ……いつもアスカの助けがあるとは限らねえ。そこで……」

 フフフ、と血を滴らせたカモは明日菜を見やり笑みを浮かべる。
 再び階段の手すりへ飛び乗ると、2人にずいと顔を近づけた。

「ネギの兄貴と姐さんがサクッと仮契約を交わして……相手の片一方を2人がかりでボコッちまうんだよ!」
「「え〜〜〜〜〜〜っ!?」」

 明日菜の予感は、的中した。

「姐さんの体術、見せていただきやした。いいパートナーになりやすぜ」

 カモは、驚いている2人を見てふふん、と自慢げに笑みを浮かべたのだった。











 結局。

「……もうっ。ほ、本当に一回だけだよ?」

 カモミールにいいように丸め込まれて、ネギまでその気になって。
 さらにそのネギに懇願されて。

仮契約パクティオー!!」

 描かれた魔法陣の上で、妙にいい気持ちになりながらもネギの額にキスしたのだった。

「あ、姐さん。おでこはちょっと中途半端な……」
「い、いいでしょ何でも――ッ!!」



「え―い!! とりあえず仮契約成立! 『神楽坂明日菜』!!」









というわけで、ネギと明日菜は仮契約しました。
カモ君とアスカの間にはどのような関係があるのでしょうか!?


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