「……これで勝ったつもりなのか?」 そこはとある建物の屋根の上だった。 桜通りでのどかを助けたネギだったのだが、噂になっていた吸血鬼の正体を知った。 名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。見た目10歳ほどの少女にしか見えないのだが、彼女は真祖の吸血鬼だった。 発動させた魔法薬を媒介に武装解除を唱えるが、発生した霧に紛れ込んだエヴァンジェリンはネギの前から姿を消していて。 「さあ、お前の得意な呪文を唱えてみるがいい」 ネギは杖にまたがると、慌てて彼女を追いかけた。 風精召喚の魔法を放つと立て続けに武装解除の魔法を唱え、丸腰になったところで今いる場所に降り立ったのだ。 (新手……!? 仲間がいたのか。仕方ない、2人まとめて……) 頭上からエヴァンジェリンの横へ降り立った人影に驚きながらも、ネギは自らの魔法を放つために魔法の始動キーを呟く。 「風の精霊11人。縛鎖となって敵を捕らえろ!」 右手に杖を持っているため、空いた左手を前方に突き出す。 彼が唱えているのは、風に働きかけて敵の動きを封じる拘束の魔法だった。 目の前で魔法を唱えようとしているにもかかわらず、エヴァンジェリンは余裕を貼り付けて笑みを浮かべている。 音もなく、背後の人影が動き始めた。 「サギ……あたっ!?」 ぽひゅっ 目にもとまらないデコピンをもらい、魔法は不発に終わったのだった。 ひりひりと痛む額を抑えながら人影を見ると。 「あぁっ、君は同じクラスのっ!?」 「紹介しよう。私のパートナー、3−A出席番号10番“魔法使いの従者”……絡繰茶々丸だ」 「こんばんは、ネギ先生」 ぺこりと、緑の髪の少女はネギにむけて頭を下げたのだった。 魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫− パートナー 「ぱ、パートナーくらいいなくたって……」 強気にそう口にして始動キーを唱えるが、それよりも早く茶々丸は行動し、ネギの頬へ手を当てると。 「あううう」 頬の肉を左右に引っ張ったのだった。 その後何度か魔法の詠唱を試みるが、やはり無駄で。 「元々『魔法使いの従者』とは戦いのための道具だ。我々魔法使いは呪文詠唱中、完全に無防備となり、攻撃を受ければ呪文は完成できない。そこを盾となり、剣となって守護するのが従者の本来の使命だ」 つまり、パートナーである魔法使いの従者がいるのといないのとでは、戦いにおいて大きなハンデとなる。 パートナーのいるエヴァンジェリンと1人のネギでは、初めから勝負にすらなっていなかったのだ。 アスカが姉であるネカネのパートナーだ。 ”パートナー”という単語の意味にはそんな意味があったのかと。 ネギは改めて思い知ったのだった。 なぜなら。 「今や恋人探しの口実となってしまっているがな」 コレが理由だった。 エヴァンジェリンは茶々丸に指示をし、茶々丸はネギを羽交い絞めにする。 助けてくれる仲間がいないのでただバタつくことしかできず、絶体絶命。 「ふふふ……ようやくこの日がきたか。……これで私にかけられた呪いもようやく解ける」 「呪い……ですか?」 「そうだ」 ツカツカとネギの前に歩み寄ったエヴァンジェリンは彼の胸元の服を握り上げる。 ずいと顔を近づけて、 「私はお前の父であるサウザンドマスターに敗れて以来、もう15年間もあの教室で日本のノー天気な女子中学生と一緒にお勉強させられてるんだよ!」 『登校地獄』。 それが、エヴァンジェリンにかけれらている魔法だった。 学園都市を覆っている結界から外に出ることができず、本来の魔力の半分すら使うことができない。 おまけに満月でもなければその魔力が戻らないのだ。 カプ、とネギの首筋を加えると、飛び出た牙を軽く突き立てる。 流れ出てくる赤い血を、 ちゅう〜〜〜〜〜〜〜〜…… そんな音と共に吸い上げた。 こんなことなら、パートナーを探しておくんだった、と血を吸われながらも後悔する。 彼女のことだから、自分の中の血がなくなるまで吸い尽くすだろう。 そんなことをしたら、死んでしまう。 そんなときだった。 「コラ―――ッ、この変質者ども―――っ!!」 「……ん?」 気づき、振り返ったときにはすでに遅い。 声の主である明日菜の飛び蹴りが、2人を吹き飛ばしたのだった。 その勢いは突進してくるダンプカーよろしく、エヴァンジェリンの身体を屋根の端まで飛ばす。 着地した明日菜は、顔を上げてその変質者の顔を見ると。 「か、神楽坂明日菜っ!」 「あっ、あれ―――? あんたたち、ウチのクラスの……ちょっと、どーゆーことよ!?」 あんたたちが、事件の犯人なの!? 頬を抑えてゆっくり立ち上がるエヴァンジェリンを見て、明日菜は告げる。 涙目で頬を抑えていたエヴァンジェリンはふるふると身体を震わせた。 「2人がかりで子供をいじめるようなマネして……答えによってはタダじゃすまないわよ!」 普段から強気の明日菜は、エヴァンジェリンと茶々丸に動じることなく怒り口調のままそう口にした。 しかし、それを聞くことなく悔しげに、 「よくも私の顔を足蹴にしてくれたな、神楽坂明日菜……」 覚えておけよ…… 呟くと、屋根から宙へと身を躍らせたのだった。 「ちょっと、ここ8階よ!?」 落ちていった先を見ようと屋根の端に歩を向けたのだが、それはネギの嗚咽によって止められていた。 慌てて彼に駆け寄ると、 「も〜、あんたってば1人で犯人捕まえようだなんてカッコつけて!」 取り返しのつかないコトになってたらどーすんの、このバカ!! 彼の肩を掴んで前後に軽くゆすりながら、明日菜は心配そうにそう告げた。 彼女から見ればネギは子供なのだから、放っておけなかったのだ。 首元から血が出ているのを見てさらに大丈夫かと尋ねるが。 「うわ――ん、アスナさ―――ん!!」 明日菜の腰に手を回すと、大声を上げて泣き出したのだった。 「わっ、ちょっと……どうしたのよ。ここ屋上なんだから」 「こっこわっ、こわ、こわかったです――っ!!」 「はいはいもう大丈夫だから、何があったかちゃんと話して。いざとなったらアスカに相談するし……ちょっと、もーそんなにひっつかないでよ」 新学期最初の夜は、こうしてふけていった。 そして、このときアスカはというと。 「う〜ん……もぉ食べれないよう……」 身内が危険な目に遭っていたというのに、のん気に幸せな夢を見ていた。 ついに第30話を突破しました。 エヴァ編はあとで2,3話で終わらせて、修学旅行編に突入させたいですね。 オリキャラの設定も、すでに終わらせていて出番を待っています。 |
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