アスカは女の子になってしもたんやねv

 頭を抱えていた。
 確かに、性別的には男であるアスカが女子校に通うことじたいよろしくないことだったのだが、これでそのことを考えなくて済むのは確かにありがたい。
 だけど、コレを使ってしまっては……

「お、男としての尊厳が……」

 そう。
 以前から中性的な顔立ちで女装させられまくっていたこともあり、ここで魔法で女になってしまっては男としての尊厳などないに等しくなる。
 ネカネの言ったとおり、これから学園生活を送るに当たって大いに役立つのだが……複雑だった。

「やっぱ、女の子になっても顔立ちとかは変わらないんやね」
「そりゃ、もともとこういう顔だからね……」

 もっと早く、説明書きに気付いていれば。
 そんなことばかりを考えていたのだった。

 しかし。

「まぁ、こうなっちゃったのは仕方ないし」

 そう言って説明書きを流し読む。
 効果は1週間。身体能力を変えることなく、見てくれのみを変える薬のようで。
 効果は実証済みよvと書かれていたことから今回は自分で実験したのだろう。

「なんとかなるかな?」

 アスカは、どこまでも前向きだった。





「でも……」
「?」

 難しい顔をして口元に手を当てると、亜子は軽くうなる。

「ウチより胸がおっきいのがどことなくショックや……」

 ガックリと肩を落とす亜子を見て、苦笑したのだった。



魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
おめでとうパーティー



 ピンクの薬を飲めば、男が女に。青い薬を飲めば女が男になる。
 説明書きの始めには、そう記してあった。

「身体能力や個人の特徴をそのままに、外見だけを変える薬です……」

 自分で自分の胸に触れてみると、やわらかい感触が手のひらに伝わってくる。
 詐称薬、と書いてあるのだから一種の幻術に近いものだと思っていたのだが、そうではないらしい。

 もしやと思って探ってみたのだが、男性の象徴すら忽然と姿を消していて。
 コレは本物だ……などと感じたりもしていた。

 もはや、誰もアスカを男だと思うことはないだろう。

「青い薬は飲まへんの?」
「え、ああ……飲んでみようか」

 亜子を実験台に使うわけにはいかないので、青い薬を取り出して口に放る。
 飲み込むと先ほどと同様に身体が熱くなり、気付いたら胸のふくらみはなくなっていた。

「さすがというか……なんというか」

 頭を掻きながら、さらに説明書きを読み進めると。
 赤い字で『Caution!』と書かれた部分を見つけ、読み進める。

「なになに、『頻繁に飲みつづけると元の性別を保てなくなりますので注意です』……」
「薬なんやから、副作用とかあらへんの?」
「えと、今のところ特になし……だって。今のところっていうのが気になるけど」

 できたてらしいので、仕方ないのだが。

「とりあえず、返事の手紙は後で書くとして……とりあえず、下行く?」
「ピンクのヤツ飲まんでええの?」

 亜子に言われて、問題ないだろうがとりあえず薬を喉に通して身体が変わったのを確認して2人で部屋を出たのだった。











「あーっ、2人とも遅いよ!」
「ゴメンゴメン」

 すでに準備を終えていたパーティーの主犯格である風香と史伽に叫ばれながら、苦笑いを浮かべる。
 2人の他にチアの3人や図書館探検部の面子もおり、全員がそろうのを待っている状態だったようで。

「ネギ先生は?」
「ホームルームが終わった後、どっかに行っちゃったけど……」
「そう言えば、さっきの小包なんだったの?」

 追い出されるように部屋を出てきたまき絵は、ずっとそればかりが気になっていたようで。
 亜子の問に答えたハルナを軽く押しのけて、そう尋ねてきていたのだった。
 どう答えればよかろうかと、一筋の汗をたらしながら、

「えっと……く、薬だよ。僕の」
「薬? アスカ病気でもしてんの!?」
「そんな大層なものじゃないんだけど、今の僕に必要なものなんだ……多分」

 向こうに忘れた時はどうしようかと思ったのだけど。

 送ってもらえてよかったよ、と告げると、笑みを浮かべたのだった。
 ……激しく不本意だったのだが。





 徐々に人は集まり、最後にネギがコスプレした少女を引き連れて寮から出てくると、一斉に声があがる。

「ハックション!!」

 そして、ネギがくしゃみをした瞬間、お約束のごとく風の魔法が暴発。
 少女の着ていたバニーの衣装を見事花びらへと変え、虚空の彼方へと飛ばしてしまったのだった。






「へっへぇ〜……vvv」
「な、なに?」

 宴もたけなわ、といった時刻。すでに夕日が差し込んでいる中で、つつつ、と近寄ってきたのはまき絵だった。
 特に気温が高いわけでもないのに、顔を真っ赤に染め上げている。
 そして……微妙ににおうアルコール臭。

「な、まき絵お酒飲んだでしょ……っていうか、お酒買ってきたの誰!?」
「ア〜ス〜カっ」
「うひゃあっ!?」

 両手を上下に振りながら慌てたように叫べば、まき絵はそれを気にすることなくアスカに飛びついていた。
 助けを求めようと周囲を見回すが、好奇心旺盛なクラスメイトは全員「いいぞいいぞ〜」なんて言ってまき絵の行動を止めようともしない。
 まき絵に負けず劣らず顔を真っ赤にすると、さらに範囲を広げて自分を助けてくれそうな人を探す。

「あっ」

 満開になった1本の桜の木の根元に腰を下ろしている3人を見つけ、

「うああんっ……刹那、真名、楓……助けてよ!」
「悪いな。それは無理というものだよ、アスカ?」
「なんでさっ!?」
「見てて面白いからな」
「なにそれっ!」
「がんばるでござるよアスカ殿……ニンニン」
「ニンニンじゃないよーっ!! ……って、うわっ」

 頼みの綱だった3人にすらもナチュラルに断られてしまったため、ついにはまき絵に押し倒されてしまう。
 にんまりと含みのある笑みを見せると、アスカの身体に馬乗りになったまき絵は手を伸ばす。

「ちょっ……」
「むふふぅ〜……ぅぅ」

 貞操の危機を感じたアスカだったが、まき絵はこてん、とアスカ上に倒れこむとそのまま眠ってしまっていた。
 助かった、とばかりに大きく息を吐き、起き上がる。

「惜しかったわね〜、せっかくネタになりそうだったのに……」

 本当に、本当に悔しそうに、ハルナは舌打ちをしつつ指を鳴らす。

 あのままいっちゃってたら、同人誌のネタにしてたのに〜。

 などとのたまっている。

「で、お酒買ってきたの誰?」

 周囲は騒いだままだが、それでもそう口にする。
 というか口にせずにはいられなかったのだ。

「すみません、アスカさん。マスターが」
「え?」

 以外にも、答えたのは10番の絡繰茶々丸だった。どう見てもロボットにしか見えないのだが、そのあたりは置いておく。
 彼女は右手に緑色のビンを持っており、聞けばそのビンに入っていたものが酒だったらしい。
 貞操の危機はくしくも回避できたので、

「まぁ、いいか」

 マスター、というのが誰のことかは知らないが、彼女はそう言うとぺこりと一礼してアスカに背中を向けたのだった。







第26話でした。
オリジナル話第1弾でした。なんかへんな展開で申し訳ないのです。
次回は、くーちゃんメインでいきます。



←Back   Home   Next→
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送