「今日もいい天気だね〜」
「せやねぇ」
「こんな日は、学校サボってピクニックにでも行きたいかも!?」

 今日は終了式。3学期の終わりを告げるこの日は、すがすがしいほどにいい天気だった。
 テストも無事終わって、これからある終了式を過ぎれば春休みだ。

 まだ入学したてのアスカから見れば、いきなり休みになったりするものだから少し物足りなかったりもしたのだが。

「あっ、ネギ君たちだv」

 お〜い、と走りながらまき絵は手を振る。
 合流すると、互いに挨拶を交わした。

「おっはよ―」
「おはよ―」

 テストが終わって休みが迫っているからか、みな元気だ。



魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
届いた小包



 終了式は滞りなく終わり、来年度から正式に英語教師として赴任したネギの紹介もされた。

 壇上に上がった彼はとにかく上がりまくっていたのだが、しゃべったのは学園長だけで。
 ネギは深々と一礼しただけだったのだが。

 そのとき来年度から3−Aとなる25番長谷川千雨だけは口を大きく開けて驚いていた。
 そして現在は、教室内でホームルームとなっていた。

「みなさん、3年になってからもよろしくお願いしま―――す!!」
「よろしくネギ先生―――っ!」
「ネギ先生、こっち向いて!!」

 報道部である和美は10歳で教師という異例の事態をスクープとするため、彼をデジカメに納めてシャッターを切る。
 まき絵は妙に派手な装飾を施されたトロフィーを掲げると、

「ホラ見て! 学年トップのトロフィー!」

 そう口にしたのだった。

 そんなこんなでホームルームは進み、ざわつきもおさまってきたところで風香が1人挙手をした。

「先生は10歳なのに先生だなんて、やっぱり普通じゃないと思います!」

 そんな彼女の発言に教室内がざわついたのだが、

「それで史伽と考えたんですけど〜……」

 そのざわつきは次の発言で喧騒へと変わったのだった。

「これからみんなで『学年トップおめでとうパーティー』やりませんか!?」
「おぉ〜、そりゃいいねえ!!」
「それじゃ、ヒマな人は寮の芝生に集合ね!!」

 ということで、ホームルームはお開きになっていた。




「あ、来た来た!」
「え?」

 寮に戻ってきて荷物を置いたところで、先に戻ってきていたまき絵に声をかけられたのだった。

「はい、これアスカに」

 そう口にして渡されたのは小包だった。
 宛名は流暢なフランス語でかかれており、まき絵には読めなかったようだ。
 誰からの小包かと言うと……

「ネカネからだ」
「え、誰?」
「ネギのお姉さん」

 魔法学校に通っているはずの、ネカネからのものだった。
 『われもの注意』、『天地無用』というシールが貼られた小さ目の小包のふたを開けて中をのぞくと。

「ビン?」
「それと、手紙だ」

 かさかさと音を立てながら手紙を開こうとしたのだが、その手を止めて目の前のまき絵を覗き込む。
 彼女は向けられた赤い瞳に首を傾げるが、

「ゴメン、先に行っててもらってもいい?」

 後から行くから、とまき絵の背中を押すと、

「え、ちょっ、アスカ!? もぉ、先行くからね!!」

 半ば締め出すような形で先に行ってもらったのだが、彼女は特に気にしていないようだった。
 扉が閉められるのを確認して手紙を開くと、

『お久しぶりねアスカ。元気にしてるかしら?』

 手紙が光を帯び、ホログラフのように人の姿を形作った。
 長い金髪に、魔法学校の制服。
 満面の笑みを浮かべた彼女は明らかにネギの姉、ネカネ・スプリングフィールドだった。

『手紙じゃなくてもよかったんだけど、この小包が日本につくのがいつになるか分からなかったから』

 ウェールズは日本のほぼ真裏。時差を考えれば、今は夜中から明け方なのだ。
 そんな時間にカードで念話するのは、さすがに気が引けた。
 テストの時は帰ることを告げるためだったので仕方ないと言えば仕方ないのだが。

『それで、この小包なのだけれど……』

 そこまで彼女が話したところで、ガチャリと扉が開く音がして慌てて手紙を閉じる。
 玄関の方を見やれば、

「誰もおらへんの?」

 それは今帰宅した亜子だった。
 彼女にはバレてしまっているので特に隠す必要はない。
 小さく息を吐くと、「おかえり」とお決まりの言葉を口にする。

「あれ、アスカはパーティー行かへんの?」
「行こうと思ったんだけど、まき絵から小包届いたって……」

 両手に抱えた小包を彼女に見せる。
 先ほどと同様にネギのお姉さんから、と告げると、彼女は驚きへと表情を変えた。

「ウチも見てってええ?」
「まぁ、亜子ならいいかな」

 そう言って再び手紙を開くと、飛び出し絵本のように浮かび上がった彼女の姿を見て、亜子は驚きの声をあげた。

『だけれど、私が丹精こめて作った薬よ。きっと貴方の役に立つからv』

 最初はピンクの方を飲んでみてね、と。
 彼女はにっこり微笑むと、じゃあねと言って手紙を終わらせたのだった。
 巻き戻しのマークを押して彼女がビデオの2倍速のような細かな動きを見せつつ消えていったのを見て手紙を閉じた。

「さ、さすが魔法やね。手紙でこんなこともできるんや……」

 そんな亜子の声を聞きつつ、アスカは小包に入っているビンを取り出すと、中には人差し指の先くらいの大きさで青とピンクの丸薬がたくさんつまっていた。
 ビンのふた部分を顔の高さまで持ってくると、しゃかしゃかと振ってみる。
 もちろんそんなことをしたところで、なにかが起こるわけではないのだが。

 キュポ、とコルク製の蓋を開けて中をのぞき見る。
 青とピンクの小さな丸薬は数的には同じくらいありそうで。

「と、とりあえず……飲んでみようかな」
「大丈夫なん?」

 たぶん、と答えつつも、一抹の不安を感じる。
 以前から、彼女には怪しげな薬の実験台にされていたのだから、そう感じてしまうのも無理はないのだ。
 ビンに手を突っ込んで、ピンクの薬を一粒取り出す。
 見てくれを確かめるように、それを眺める。冷や汗を流して、喉をごくりと鳴らすと、ぎゅっと目を閉じた。

「ええい、ままよっ!」

 ビンの底に説明書があるにも関わらず、それに気付くことなく開いた口に薬を放り込み、水も使わずにごくりと飲み込んだ。




 ・


 ・・


 ・・・・




「…………」
「何も起きひんな」

 特に何かが変わったとか、そんな感じは見受けられない。

「あれ……ネカネの作る薬だから、なにかあると思って…………っ!?」

 急に、身体が熱くなっていくのを感じ、その場に膝をついた。

「ちょっ、しっかりしい! どないしたんや!?」
「うあ……ぁ、身体が、あつ……熱い……っ」

 度重なる薬の実験でだいぶ免疫はついただろうと思っていたのだが、実はそうでもなかったらしい。
 亜子がうずくまるアスカの肩を揺さぶるが、薬の効果なのか感覚を感じない。

「うっ……ぁ」

 そして、次の瞬間。
 身体の熱さが収まって、ゆっくりと立ち上がると。


「あれ?」


 どこか身体に違和感を感じた。
 それ、それとその場で身体を捻ってみたり軽く上下運動をしてみるが、身体を動かすにはなんら変わったところはない。
 しかし、どことなく感じる………重み。
 重みを感じた部分に目を向けると。

「ぶっ!?」

 なぜかふっくらとしていた。
 アスカが重みを感じて目を向けたのは、胸元。

「なんや、ふっくらしとるな」

 そんなことを言いつつ、亜子は膨らんだアスカの胸元へ手を伸ばす。
 すると、ふにゅ、と簡単にへこんでしまっていた。

「……まさか?」

 床に置かれたビンに目を寄せると、

「なあ、ビンの底んとこになんやくっついてへん?」

 亜子は蓋の閉まったビンを持ち上げると、底の部分をアスカに向ける。





  『青いお薬・ピンクのお薬 性別詐称薬』





 まず目に入ったのは、ででんと書かれたこの丸薬の名前だった。
 その下に、小さな文字で説明書きがなされているが、とりあえずそれはおいておく。

「性別詐称……」
「ということは、つまり……」



 アスカは女の子になってしもたんやねv



 とくに驚くことなく、亜子はそう口にしたのだった。







第25話でした。
というわけで、オリジナルの話を2,3話入れてからエヴァ編です。
かなりありきたりで申し訳ないのですが、性別反転ものですね。
あんまり関係ないかもしれませんが。



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