「ふわ……」 むくりと身体を起こすと、閉じたカーテンの隙間から太陽の光が入ってきているのが見えた。 眠気の残るまぶたをこすって覚醒させると、まずは時計に目を向けた。 夕べはバカレンジャーと図書館探検部、そしてアスカと亜子、裕奈の全部で11人が集まってほぼ貫徹で勉強をしていたので、全員が全員部屋の床に雑魚寝をしていた。 ここが誰の部屋かといえば、以前から学園長に借りっぱなしになっていて未だに返し忘れていた651の部屋だった。 この部屋は他の部屋に比べて広い。だからこそ、思い出して鍵を部屋から持ってきたときには全員から賞賛されたのだった。 と、話を戻そう。現在の時刻は…… 「8時40分……」 指された長針と短針を見て、呟く。 テストの開始は午前9時。 アスカの表情は、みるみるうちに血の気が失せていくのを感じていた。 周囲を見回すと、まだ全員ぐっすり眠っている。 教師であるはずのネギも一緒になって寝ているのが、さらにマズイ状況であることを示していた。 「みっ、みんなっ! 早く、早く起きて!!!」 遅刻しちゃうよ、遅刻だよ!! テスト開始まであと20分しかないのだ。 今現在、寮に全員いるのだが、20分で学園へ行くにはもう寮を出ても全速力で走らないと間に合わない。 「なにアルか……」 「まだ眠いよぉ……」 「くーちゃんもまき絵も、みんなも早く学園に行かないと!」 「今、何時やのぉ?」 そんな木乃香の問いに、先ほど自分が見た時間を告げると、 「ちちち遅刻だぁ―――っ!!」 全員が跳ね起きたのだった。 魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫− テストの結果は テスト開始5分前を告げる予鈴が鳴り響き、監督の先生が2−Aの教室に入ってきた。 現在、教室にはバカレンジャーを始め数人の席が空席。 委員長でありネギの正式採用を実現するために張り切る雪広あやかは、焦っていた。 「もう予鈴が鳴ってしまいましたわよ! あの5人組はまだ来ませんの!?」 「来ないです―。もうダメかも―」 さらに周囲を見回すと、空席は5人以上。それは、 「あれ、図書館探検部と……」 「亜子と裕奈、それにアスカもいないじゃん!」 釘宮円と椎名桜子が口々に言うように、さらに7人分の席が空いてしまっている。 がっくりと肩を落としたあやかは額に手を当てて、 「ここまで頭数が不足しているとなると、平均点が下がってしまいますわね。そうなれば最下位は確実、ネギ先生はクビに……」 ぶんぶんと首を横に振って考えたことを振り払うと、 「みなさん、今回は20点増しでよろしく!」 「そんなのムリだって―」 「あああ、もうダメかも―― ……」 そんな鳴滝風香の呟きもつかの間。 何気なく窓から外を除いていた28番村上夏美は、校舎への階段を駆け上がってくる集団を発見。 「あ! バカレンジャーたちが来た!」 「図書館組もあの3人も一緒よ!」 3番朝倉和美が叫ぶと、クラスのほぼ全員が窓へと身を寄せた。 こぞって手を振ると、遅刻組は返す余裕すらなく広域生活指導員の新田先生の指示で別教室へ移動したのだった。 「みなさん、試験頑張ってくださいね! 僕のせいで魔法の本もなくしちゃったし、僕足引っ張ってばかりだったけど……」 責任を感じているのか、ネギはそんなことを口にするが。 「ま、まかしといて〜」 「本なんかなくてもなんとかなるアルよ〜」 「ずっと勉強付き合ってくれてありがとうです、ネギ先生」 「あとは任せるでござる〜」 「本捨てたのあんたじゃなくて私でしょうが。なんとか下から2番目くらいにはなってやるから。あんたは安心して休んでなさいよ」 ハ、ハハハ…… なんとも力のない笑みを浮かべたバカレンジャーは、背中に眠気を漂わせて校舎内へ。 それを追いかけるように図書館組とアスカと亜子、裕奈もこぞって入っていく。 「ごめんね、2人とも。妙なことに巻き込んじゃって……」 「そないに気にせんでもええて」 「そーそー。確かに大変だったとは思うけど、結構楽しかったからさ」 謝罪するアスカの肩に2人は笑って手を置いたのだった。 目的の本はカバンに教科書などと一緒に入っているので、テストが終わったら渡しに行く予定だった。 そして、あっという間にテストは終了。 眠気を引きずった数時間だったが、廊下から漂ってきたネギによる活力全快の魔法のおかげか最後まで乗り切ることができていた。 アスカは1人学園長室の扉をノックし、中へと足を踏み入れていたのだった。 「おぉアスカくん。仕事、ご苦労じゃったな」 「…………」 テストが終わって開放感たっぷりのはずなのに、アスカは恨めしげな視線を学園長に向けていた。 机に腰掛けたまま背筋を震わせて、学園長は紙の束に赤い色の墨汁でまるやバツをつけていた。 「ど、どうしたんじゃ?」 「どうしたじゃありませんよ。なんですかあの竜は?」 「竜?」 本を探す過程で竜と戦うはめになったことを告げ、さらに。 「動く石像なんか操って、あんならせん階段上らせて……」 「はて、なんのことかのう〜〜……」 できもしない口笛を吹きながら、学園長は目をそらした。 ため息を吐きながら学園長をじっとりと見つめると、 「僕の今までの経験上、動く石像はしゃべりません」 そう口にした。今までのアスカの仕事は退魔の仕事がほとんどで、動く石像やそれにちなんだ魔法生物などとも戦ったことがあったのだ。 ……ちなみに、竜と戦ったことなど今回が初めてだったわけだが。 それを聞いた学園長は言い逃れができないのか、机の引出しから一冊の本を取り出した。 それは、バカレンジャー+αが追い求めていたメルキセデクの書で。 「すまんのぉ。子供のネギ君が今後も先生としてやっていけるかどうか見たかっただけなのじゃ。おぬしも、ネギ君が先生クビになってしまっては困るじゃろ?」 結局、図書館島での動く石像やらせん階段は全部学園長が仕組んだものだった。 すべては、ネギが先生としてやっていけるかを知りたいがために。 というわけで、アスカへの報酬はテストの免除だったのだが…… 「ふむふむ……」 「なんですか?」 「これなら、問題はなかろうて」 学園長はなにか含んだ笑みを見せたが、それがアスカにわかるはずもなく。 あっという間にクラス成績の発表日となってしまったのだった。 結論から言えば。 麻帆良学園女子中等部2−A………最下位。 ダメでした。 ブービーが発表された時点でネギは帰る準備をするべく会場を後にしていたのだが、アスカも同様に会場を離れて寮に戻ってきていた。 仮契約カードを取り出すと、額に当てる。 「うん、そう。その……まぁ、いろいろあって。うん、いまからネギと一緒に帰るよ」 ネギが学園にいないとなると、アスカもここにいる意味はない。 荷物をまとめ、部屋を出たのだった。 「いやーすまんかったの、ネギ君。実はの、遅刻組の採点はワシがやっとってのう……うっかりクラス全体と合計するのを忘れとったんじゃよ」 放送部の生徒に叱られてしまったわい。 アスカ以外の図書館島に行ったメンバーが目を丸める。 遅刻組は11人。その全員の点数を加算せずに平均を出してしまっていたので2−Aは最下位だったのだ。 そうなると、この11人の点数分を修正することでもしかしたら最下位ではないかもしれない。 その場の全員が一抹の希望を持ったのだった。 「それじゃ、ここで発表しちゃおうかの」 持っていた紙束を取り出したところで、 「あれ、みんな何やってるの?」 「アスカ……ウチらはこれから遅刻組の……ってなんでそんな大荷物背負ってるん?」 「だってネギ先生クビになっちゃったから、僕もここにいる必要はないし……」 ウェールズに帰ろうと思って。 そう言って苦笑いを浮かべたのだが。 それは学園長のうっかり発言で驚きと軽い怒りに変わったのだった。 「まずは佐々木まき絵……平均点66点。ようがんばった」 「ええっ!? ウソっ…66点!?」 さらに発表は進み、古菲67点・長瀬楓63点・綾瀬夕映63点と、バカレンジャー全員は今までにない良い成績だったのか嬉しそうな笑みを浮かべた。 その後で図書館探検組とアスカに付いていった2人の点数も発表され、何気にいい成績で飛び上がって喜んでいた。 「そして神楽坂飛鳥……日本に来て間もないというのに、よく頑張ったのう。70点じゃ」 「70点って、いいほうなの?」 「せやね。かなりいい方や思うで」 亜子のその言葉を聞いて、アスカは苦労しか甲斐があったというもので。 荷物を背負っているにも関わらず飛び上がって喜んだのだった。 「おほん。そして最後に、神楽坂明日菜……71点!」 というわけで。 これらを合計に加算することで平均点は全学年を上回り…… 『や……やったーっ!!』 2−Aは見事トップに輝いたのだった。 ネギを胴上げしながら、事の次第を彼の姉に報告。 2人はウェールズに戻ることなく新学期を迎えることができたのだった。 第24話でした。 図書館島終われました。 正直、長かったです。しんどかったです。 さて、次回から何話かオリジナルを入れようかと思っています。 戦闘ものではありませんが。 |
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