永遠に続くのではなかろうか、と思うくらいに長いらせん階段を延々と上っていた。 下から爺さん言葉をしゃべる妙な動く石像(ゴーレム)が壁を破壊しながら上ってきているため、休んでもいられない。 すでにかなりの距離を上ってきたから、みんなの疲れもピークに近い。 しかも。 「今度はなに?」 「え〜、【問10 大化の改新で重要な役割を果たし藤原氏の祖となった人物は?】」 このように、上へいかせないように問題の書かれた石版が邪魔をしていた。 その都度、奪取したメルキセデクの書を持ったバカレンジャーが次々とといていったのだが。 一緒に階段を上っていて、来るときはこんな場所存在していなかったことに疑問を抱いていた。 「はぁはぁ……アスカ、なんかココ変じゃない?」 「うん。僕たちが来た時には、こんなのなかったよね」 「アカン、ウチもう走れんよ〜」 「ほら、亜子。つかまって!」 すでにヘロヘロの亜子に手を差し出し、握る。 前の方でも夕映が木の根に足を引っ掛けて捻ってしまったようだが、楓が彼女を抱えることで事なきを得ているのが見えた。 「あんたは大丈夫なの?」 「ハ、ハイッ!」 息を乱してはいるものの、ネギは魔法が使えないにも関わらず周りにしっかりついていっていた。 魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫− 図書館島脱出 階段を上り始めて1時間を突破。 比較的運動能力の高いアスカもさすがに息を乱し始めていた。手を引く亜子はすでにマズイ状況に陥っていたのだが、なんとかまだついてきていた。 「あ!」 問30に指しかかろうとしたところで、楓に抱えられた夕映が携帯に電波が入ったのを確認した。 地上が近いことを告げると。 「ああっ、みんなアレを見てくださいっ!!」 ネギの指差した先には、『1F直通』と書かれたエレベーターが見えていた。 そこへたどり着くには問30と書かれた石版をどかさなければならないのだが。 「なっ、なにこの問題――!?」 まき絵の叫びのとおり、そこには。 「【問30 次の長文を全て訳しなさい】……って、多すぎや! こんなんウチらにはできんえ!!」 「なら、僕がやります!」 彼は10歳と言えど英国人。 このくらいの長文なら少し時間があれば解いてしまうのだが、なにぶん量が多くて動く石像が追いつくまでに解ききるには時間が足りなさすぎた。 初めの2行ほどを訳したところで、 「いくらイギリス人の僕でも、量が多すぎますよぉ――!」 悲鳴が上がったのだった。 「裕奈、亜子をお願い」 「え」 アスカと裕奈、それに亜子の3人は、バカレンジャー+αとは少し送れて走っていた。 ネギの悲鳴を聞いてアスカは眉間にしわを寄せると、握っていた亜子の手を裕奈に預ける。 気を足に集中すると2人の声を聞かずに、 「みんな、そこどいて!」 叫んだ。 その声に振り向いて驚いた表情を見せるが、アスカの表情を察してか道を開けた。 走りつかれている身体にムチ打って走る速度を上げ、最後の問題が書かれた石版へ向けて気を集めていた右足を振り上げると、 「せぇぇぇいっ!!」 どごぉぉんっ!! 蹴り飛ばしたのだった。 振り上げた右足は見事石版を貫通し、石造りのそれは崩れていく。 「早くしないと、動く石像が来ちゃうよ!」 ぽかんと口を開け閉めしている数名を尻目に、そう全員に告げたのだった。 その中で楓は当然だといわんばかりにその表情を変えず、古菲は目を丸めていたのだが。 エレベーターまで見事たどり着くと、ボタンを押して扉を開く。 「みんな急いで乗って乗って―っ!!」 バカレンジャー+αが乗り込み、少し送れて亜子と裕奈が到着する。 全員息を荒げているが、これで地上に戻れるということでその表情は笑顔だった。 のだが。 ブブ―――――ッ 『重量オーバーデス』 エレベーターのコンソールには【重量OVER】の文字が点滅している。 「なっ」 『なんですと〜〜〜っ!?』 無情にもブザーがなりつづけていたのだった。 「地底図書館で2日間飲み食いしすぎたアルか!?」 「あああ勉強ばっかりしてたから……」 「まき絵さん今何キロです!?」 「私はやせてるよっ!」 動く石像は目の前だというのに、すでにエレベーター内はパニック状態。 明日菜がエレベーターから足を出すと、ブザーの音が消える。 「みんな、持ってる荷物とか服を捨てて!」 先ほど同様に片足を出してブザーが止まることを証明してみせると、 「ホンマや!」 「おお、脱ぐアル! 脱いで軽くするアルよ――!」 古菲がそう言ったところで。 「うえぇっ!?」 バカレンジャーの5人が身につけていた制服をおもむろに脱ぎ出したのだった。 情けない声を上げたのは制服を着たままのアスカで。 アスカのことを知っている亜子と裕奈も同様に脱いでほんのり頬を赤らめていたのだが、慌てて目を隠すアスカを見て気の毒そうに苦笑したのだった。 「アカン、まだブザーが止まらん!」 「もうちょっとなのに!」 止まらないブザーの音を聞いて、亜子と裕奈は声をあげる。 すでに動く石像は目の前。 「うわぁん、どうすれば……っ!?」 「ネギ坊主!」 おもむろに、ネギがエレベーターから飛び出したのだった。 「僕が降ります! みなさんは先に戻って明日の期末を受けてください!」 「あんた何言ってんの!」 今、彼が魔法をつかえないことを知っている明日菜が声をあげるが、ネギはそれでも動く石像を見据える。 彼は教師。 魔法が使えなくとも、生徒を守ってみせるという彼のマジメな思いが彼を突き動かしたのだ。 「動く石像めっ! 僕が相手だっ!!」 と、りりしく叫んだまでは良かったのだが。 「あっ、れぇ!?」 首根っこをつかまれて、エレベーターの中に引き寄せられてしまったのだ。 彼が背後へ振り向くと、目の前には明日菜の顔があって。 「あんたが先生になれるかどうかの試験でしょ? あんたがいないまま試験を受けてもしょーがないでしょーが」 ガキのくせに、と愚痴るように言ったのだが、1人降りたはずのネギを引き寄せた彼女は結局。 右手に奪取した本を取ると、思い切り振り上げた。 こんなのがあるから襲われる。 これがなければ、きっとエレベーターは動くはずだから。 「それ――――っ!!」 力の限り、本を外へと放り出したのだった。 彼女のまわりでバカレンジャーが名残を惜しんでか投げ出された本へ視線を向ける。 するとなぜか本を光を帯びて、動く石像の前へ。 エレベーターが閉まると同時に、強く発光して動く石像を奈落の底へと突き落としたのだった。 「や、やった動いた!!」 「脱出よ〜!」 エレベーターは高速で上へと上昇。 地下30階だったらせん階段の頂上から遠ざかり、現在地を示す数字には『15』が点灯していた。 「助かったぁ〜」 「いや――、図書館島は散々だたアル」 「あの、今日曜日の夕方ですけど……」 危険を回避したことの反動か、テスト勉強のことなど頭にないかのようにネギの声を無視して雑談をはじめてしまっていた。 アスカは目的の本が入った荷物に手を突っ込むと、持ってきていた制服のシャツを取り出した。 「とりあえず、みんなコレ着ない?」 「あーっ、あんたなにその荷物!?」 「え?」 一人一人にシャツを手渡しながら、アスカは声を荒げた明日菜へ顔を向ける。 彼女は涙目で激昂しており、 「その荷物を捨てれば、さっきの本捨てなくてもよかったじゃない!」 「いや、でも……」 「でももヘチマもないの! あぁ、私たちの苦労がぁ……」 さすがに、この荷物を捨てられてしまうのは激しく困る。 中には封印済みとはいえ危険な本が入っているのだから。他のものならまだしもその本だけは捨てられてしまうことは避けたかった。 だから、アスカからすれば他の人には悪いが今の状況は僥倖と言えた。 「あのな、このカバンの中にはアスカが仕事で使った大事なモンが入ってるんやて」 「シャツも借りれたんだから、いいじゃんアスナ。ね?」 2人のフォローでアスナは「まぁいまさらだしいいんだけどね」と引き下がってくれた。大感謝である。 2人に感謝の言葉を口にすると、 「今度なんかおごってくれればいいよ」 「あ、ウチもウチも―っ!!」 テスト明けにおごる、という約束をされて事なきを得たのだった。 「とりあえず、テストまであと……15時間。勉強しないとね」 「ウチが教えたるで」 「みなさん、頑張りましょう!!」 おー、と。 外に出たところで全員の手が赤く染まった空へと向かったのだった。 第23話でした。 図書館島無事脱出しました。 次回でなんとか図書館島編を終われます。 |
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