「キャ―――――ッ!!」

 響き渡ったのは1つの悲鳴。
 しかも声から察するに、まき絵だろう。

「なにかあったんだ!」
「急いで行かんと!」

 亜子が勢いよく立ち上がると、反動で今しがたまで座っていたイスがガタンと音を立てて倒れてしまう。
 慌てて、そのイスを元の状態に戻すと、机の上の食料をそのままに声の方角へと走ったのだった。



『フォフォフォ――!!』
「ネギ君助けて―――っ!!」

 アスカたちとほぼ同時にその現場にたどりついたネギと明日菜は目の前に広がる光景を見て目を丸める。
 なぜなら、自分たちにツイスターゲームをやらせた動く石像(ゴーレム)がまき絵を左手に掴んで襲ってきていたからだった。

「まっ、またあのデカイの――!?」
「動く石像ですよ、アスナさん!」

 一緒に落ちてきてたんだ!!

 ネギは眉を軽く吊り上げると、左手で背中の杖をひっつかむ。
 魔法の始動キーともに詠唱をぶつぶつと呟き、空いた右手を動く石像へと向けた。

「くらえ、魔法の矢!!」



魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
走れエスケープ3



 と、叫んだまでは良かったのだが。

「…………」

 自分で魔法封印したって言ってたじゃないか。
 そんなことを考えて、アスカは額に手を当てて呆れの表情を露にしていたのだった。
 もちろん、ネギにかけられている封印は解けていないからして。



 しぃ〜〜〜ん………



 唱えた魔法が発動されることはなかったのだった。

「なぁ、アスカ」
「ん、なに?」
「ネギ君ってもしかして……」

 呟く亜子に顔を向けて、うなずいた。
 もう、隠すことなどできるわけないので。



『フォフォフォ。ここからは出られんぞ。もう観念するのじゃ』

 迷宮を歩いて帰ると3日はかかるしのう〜……

 妙に年寄りじみた口調で話す動く石像は、まき絵を左手に掴んだまま、まるで全員を焦らせるかのようにそう呟いたのだが。
 すでに脱出の手段は全員が知ってしまっているため。

「ざ〜んねんでしたぁ。私たち、ちゃんと1階までの直通エレベーターがあるの知ってるんだから!」
『ふぉ!?』

 まき絵の声にぎくりと大きく反応すると、動く石像はアスカを視界に捉える。
 苦笑いをするアスカを見て、

『ならばそのエレベーターを使えなくするまでじゃ――っ!!』

 まき絵を掴む手をそのままに、動く石像はズシンズシンと地響きを立てながら、目的の場所へ体を向ける。
 そのとき首元からのぞいた物体を、夕映は指差した。

「あっ。みんな、あの動く石像の首の所を見るです!」

 全員が、首元へと目を向けると。

「ああっ、あれはメル……なんとかの書!?」
「本をいただきます、まき絵さん、くーふぇさん、楓さん!」
『OK,バカリーダー!』

 さすがはバカリーダーとでも言うべきだろうか。
 この場で本を奪取するにふさわしい3人を名指し、呼ばれたメンバーは親指を立てて了解の意を示す。

「いくでござるよ!」
「中国武術研究会部長の力、見るアルよ〜v」

 古菲と楓の2人はバスタオル1枚という姿で動く石像の足元まで移動すると、古菲が「ハイヤーっ!!」の掛け声と共に左足へ正拳を叩き込む。
 そのまま1回転し右足を突き上げると、その先にはまき絵を掴んだ左手が。

「ヤッ!!」
『フォ…!?』

 古菲の右足は見事に動く石像の左手に炸裂し、その反動で掴んでいた手が開きまき絵が宙へと投げ出される。
 そこへすかさず、右手にタオルを持った楓が飛び上がり、まき絵を見事にキャッチ。
 さらにまき絵はお得意のリボンを振るうと、首もとの本を絡めとったのだった。

「みんな、こっちだよ!!」
「アスカっ!」

 大きく手を振り合図するアスカの後ろを、バカレンジャー+αは駆ける。全員の荷物を持った木乃香が着替えを渡して、とにかくスピードを落とさぬよう身に付けていく。

「アスカ、持ってきた荷物は!?」
「あぁっ、しまった!!」

 裕奈に言われるまですっかり忘れていた自分の荷物。
 取りに行ってこようと道をそれようとするが、

「アスカ、あんたがいないとエレベーターまでの道わかんないじゃないの!!」
「あ……」

 そうだった、とそれようとしていた身体を戻す。

「じゃあ、私がちょっと行って取ってくるよ!」
「あ、ちょっ……」

 返事も待たずに、裕奈は道をそれていってしまう。
 背後からの地響きも結構耳に入ってくるので、彼女に声は届かないだろう。
 仕方ない、とかぶりをふると、

「みんな、僕に付いてきてね!!」
「裕奈はどうするん?」

 尋ねた木乃香に「裕奈もエレベーターの場所は知ってるはずだから」と説明する。
 こっちこっちと手を振って滝を指差す。
 緑の非常口灯の下にある白いドア。表面に『非常口』と大きく描かれていた。




「みんな――っ!」
「あ、裕奈や!」

 非常口の扉に辿り着いたところで、アスカの荷物を取りに戻った裕奈が合流。
 日々の部活動のおかげか、素晴らしい俊足だった。

「ちょっと、アスカ!」

 中に入ろうとしたところで、非常口と書かれた下に1枚の石版があることに気付いていた。
 それに描かれていたのは……


「なんで、扉に英語の問題が書いてあんのよーっ!」
「えぇっ!?」


 『問1.英語問題』と書かれた石版を指差して、明日菜はそう叫んだのだった。















「【問1.英語問題……readの過去分詞の発音は?】です」
「僕たちが来たときは、そんなのなかったよ!?」

 そうは言っても、今はこのとおり。
 つまり、問題を解けば先に進めるということなのだろう。
 「僕がやりましょうか!?」と叫ぶネギの横で、滝の水をものともせずに近づいてくる動く石像の顔面を古菲は本を持ったまま蹴る。
 着地したところでその問題を耳にし、

「ムムッ」

 ぎゅぴん、と目を光らせて、

「答えは、[red]アルね!」

 大きな声で答えると、クイズが正解だった時の効果音が流れ、扉が開いていった。
 彼女曰く、本を持っているだけで頭が良くなったらしい。
 ……果てしなくインチキっぽいが。


 中に入ると、頭上に開けるのはらせん階段。
 アスカも亜子も裕奈もこんな場所に見覚えはない。

「と、とにかく上っていけばええんとちゃうか?」

 亜子の提案で、果てしなく続く階段を上り始めたのだった。






第22話でした。
もう2,3話で図書館島編が終われそうです。
次はエヴァ戦。オリキャラ入れてみたいなぁ・・・(未だアイデアなし)。



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