バカレンジャー+αを見つけるのに、さほど苦労はしなかった。
 アスカと亜子、裕奈が最初に来た砂地のところに全員倒れていたのだから。
 全員が気付いてからどうやってココにいたのかと問えば、

「ツイスターゲームでミスをしてしまって、ここまで落とされたようです」

 どこに持っていたのか、『でろり濃厚・高原の味』などというよくわからない飲み物を口に含みながら、夕映はそんな答えを返していた。
 彼女が指さす天井へ顔を向ければ、高い天井に小さな穴が見て取れる。
 よくあんなトコから落ちて無事だったな、と改めてバカレンジャーの生命力に感心する。
 バカレンジャーとは無縁の木乃香がいることを考えれば、ここは2−Aと称するべきだろうか。

「ところで、アスカ。仕事は終わったの?」
「うん」

 まき絵だけには事前に話していたので、彼女はソレだけを口にする。
 ほかのみんなは仕事の内容を知らないわけだから……

「学園長に頼まれて、本を探しに来たんだよ。亜子と裕奈も一緒に」

 つけられたなどと言っては疑われることうけあいなので。
 手伝いを頼んだんだよ、と説明を施した。

 地底図書室までわざわざやってきてまで探さなければならない本ってなんなんだろう?

 夕映はストローを口に咥えたまま首をかしげたのだった。

「それじゃあ、あんたたちもしかしてここから出る……って、アスカケガしてるじゃない!」
「ケガしてるのはアスナも同じやん」

 ツッコミどころはそことは違うのだろうが、明日菜の左腕には包帯が巻かれていた。
 ……だいぶ緩まっていたけど。




魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
地底図書室にて




「アスカ、アスカ」
「あ、ネギ先生。なんか大変だったみたいだね」
「そうなんだよ……って、そうじゃなくて」

 そんなことを言うと、ネギは苦笑いを浮かべながら頭を掻く。
 しかし、彼が聞きたかったのはそんなことではないらしく、

「間違いだったらいいんだけど、アスカ、もしかして何かと戦ってた?」
「…………」

 彼は魔法使い。
 ここに来る以前からかすかに感じていたんだ、と。
 彼はそう言ってアスカの真紅い瞳を見つめた。

「まぁ、そうだね。ケガもしちゃったし、言い訳もできないだろうし」
「治癒の魔法が使えればよかったんだけど、今は……」

 彼は、1人の教師として生徒たちとぶつかるために魔法を封印しているのだとか。
 右手首を見せながら、ごめんね、と舌を出した。
 魔法が使えないのは3日間だから、刻まれる刻印は3本のはずなのだが。手首の刻印は2本になっていることから、あと2日魔法がつかえない。

「ま、なにかあっても僕が何とかするから」

 魔法使いのネギと違って、僕はオコジョにされる心配はないからね。

 そう言って、恨めしそうに自分を見るネギに苦笑したのだった。

「そうだ。亜子と裕奈に、僕が男だってことと従者だってことがバレちゃってるから、そこのとこよろしく」
「よろしく、って……なにがよろしくなんだよぉーっ!!」

 そんな声が、地底図書室に響き渡ったのだった。















「何ですって!?」

 麻帆良学園は基本的に土曜日も登校する。
 まだ朝も早い時間だったのだが、2−Aのクラスメイトはかなりの人数が集まっていた。

「どうしてそんな大事なこと言わなかったんですの」

 桜子さんっ!!

 あやかは大好きなネギ先生の一大事に取り乱し、真実を語った桜子に詰め寄っていた。
 思いっきり前後に肩をゆすりまくって、桜子は慌てまくっていたのだが。

「ネギ坊主が?」
「クビだって」

 来たばかりで早速クビとは、さすがにかわいそうすぎる。
 なによりあやかは、愛しのネギ先生のためにと、

「とにかくみなさん……特に普段からマジメにやってない方も、テストまでちゃんと勉強して最下位脱出ですわよ!!」

 千雨や刹那に向かって指をさし、叫んだのだった。
 しかし、それでもマズイ状況が2−Aにふりかかることは、彼女も知る由もない。
 ハルナとのどかが勢いよく扉を開けて、

「みんなー大変だよ!!」
「ね、ネギ先生とバカレンジャーが行方不明に……」
「え……」

 雪広あやか、絶体絶命。

















「これからどうするの?」
「う〜ん……」

 全員で輪になって、今後の身の振り方を考えていた。

 最優先事項として、この地底図書室から脱出すること。
 次に優先する事項として、テストに向けてしっかり勉強すること。
 そして、テストを受けて絶対に良い点を取ることが挙げられた。

 生活に困らず、大好きな本に囲まれているこの場所。
 ずっとここにいてもいい、などと言ってしまう人もいたのだが。

「出口だったら、僕知ってるよ」

 アスカと亜子、それに裕奈の3人は1階から直通のエレベーターを使ってきたのだから、当然といえば当然なのだが。
 知ってるなら昨日の時点で教えなさいよ、などと明日菜に不満をぶつけられてしまっていた。

「とりあえずすぐに出ることはできるようですが、せっかくテキストもあるみたいですし……ここで勉強していきませんか?」

 先生らしい、ネギの発言。
 ということで、ギリギリまで勉強して帰ろうという結論に至り、簡易教室を作ろうと準備を始めたのだった。











 そしてさらに1日が経過。アスカを含む総勢9人で勉強を始めていた。
 メンバーはアスカとバカレンジャー。それに木乃香と亜子と裕奈で9人である。

「では、これわかる人―」

 どこにあったのか、指示棒でさらにどこにあったのか塾などにありそうな黒板を指し、尋ねる。
 数学のテスト範囲内の復習、ということで、バカレンジャーは四苦八苦していたのだけど。

 比較的後ろに位置するバカレンジャーではない組は、アスカを囲んで問題の解き方を教えていた。
 情けない話なのだが、アスカも英語以外は勉強があまりできないことが判明したのだ。
 バカレンジャー以外のメンバーが付きっきりで教える事はないのだが、3人の力を借りて何とかテストも乗り切れるラインまで問題が解けるようになっていた。

「あ、アスカ。ここ、ちょっとちがうよ」
「え、どこどこ?」
「ここだよ、ここ」

 裕奈に指差され、ノート代わりに使っている白い紙につらつらと書かれた筆算を見て、改めて計算をしなおす。

「あ、ホントだ!」
「ケアレスミスは、テストじゃ命取りやから。気をつけんと」
「しかし、アスカは飲み込みは早いんやね〜。みんなにあっという間に追いついてしもたで?」

 3人に感謝をしつつ、さらにテキストのページを進める。
 ネギの姉、ネカネに戯れがわりに教わっていたとはいえ、それは基本的な計算のみ。中学2年の問題など、授業だけではほとんどできていなかったのだ。
 ヘタをしたら、自分もバカレンジャーの烙印を押されてしまうのではないかと思い、今回の勉強会を提案してくれたネギに多大な感謝をしたのだった。








 休憩時間。
 思わぬところで水浴びをしていたまき絵や古、楓や裕奈とばったり顔を合わせてしまい、からかわれたネギは、本を一冊とってページをぱらぱらとめくっていた。
 水に浸かっていたはずなのに、なぜか劣化はおろか本当に水の中に置いてあったのかすらわからないくらいに本は綺麗な状態を保っている。

「!!」

 考えてもわからないものはわからない。
 本を閉じ顔を上げると、目の前の池で1人水浴びをしていた明日菜を発見。
 取れかかった包帯をそのままに、すいすいと池を泳いでいく彼女に、ネギはつい見とれてしまっていたのだが。
 明日菜に気づかれたところで、ネギはそそくさとその場を離れようとしたところで、

「こぉら、何やってんのよネギ坊主!」

 先回りされた上に、微妙に怒られてしまった。








「しかし、いろんな意味でスゴイなぁアスカは」
「何をまた急に……」

 もくもくと持ってきた食べ物を口に入れ、呟いた亜子にアスカは尋ねていた。
 その向かいで、亜子もアスカと同様にどこかより調達してきた食料を口に含んでいる。

「だって、ウチらがちょっと教えただけで勉強もできてまうし……その、あんなバケモン相手に戦っとったし……」

 怖くなかったん?

 この間の、竜との戦闘を裕奈と共に間近で見ていたから、未知の生き物と平気な顔をして戦っていたアスカが不思議でならなかったのだ。
 すこしの沈黙の後、

「怖かったよ」

 アスカはそう答えていた。

「あんなの相手にして、怖くないわけないじゃない。1つ間違えたら、今ここにいることはなかったかもしれないんだから」

 相手は幻想種の中でも上位に位置する竜。
 いくら自分が逃げずに戦っていたとしても、きっと勝てなかっただろう。
 アスカは苦笑いを浮かべながら、食料をつまんで口に入れる。

「でも、僕には……」
「?」

 言いかけて、やめる。
 ぶんぶんと首をふると、

「いや、なんでもないよ」

 そう言って、微笑んだのだった。


 数分の沈黙の後、


「キャ――――っ!!」


 どこからか、悲鳴が上がったのだった。







第21話です。
ジュースの名前は某ゲームから、ちょっともじってみました。
私の文章力では、彼女の飲むものの名前まで考えきれませんでした。



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