「簡単に言えばドッジボールというのは……うんぬん」
「ふむふむ」

 アスカは夕映からドッジボールとはなんたるかを伝授してもらっていた。
 しかし、授業時間は有限なので。

「時間が惜しいわ。さっさと始めるわよ!!」

 リーダー格の女子高生・英子がボールをもてあそびながら自信に満ちた笑みを浮かべる。
 ちなみにアスカは彼女から背を向けていたため、

「まずは……な〜んにも知らないアンタからぁ!!」

 力を込めて、ボールを投げる。
 ボールは楕円に変形し一直線にアスカを目掛けて飛んでいく。

「あぶないッ!」
「え?」

 明日菜の声で、背後を向く。

「あれ……捕ればいいの?」
「そうですね、補球ができればこちらのボールになりますので」
「わかったよ」

 立ち上がり、両手を前に。
 すでにボールは目の前まで迫っている。

 次の瞬間。
 乾いた音を立てて、腕を曲げもせずにボールは両手のひらに納まっていたのだった。




魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
ドッジボール前半戦




「け、結構痛いんだね……」

 ボールを片手に手のひらに息を吹きかける。
 息を吹きかけたところで、真っ赤っかな手のひらは赤いまんま。

「「す、すっごぉいっ!!」」

 こちらは歓喜。
 向こうは唖然。

 それほどに、勢いのあるボールを難なく止めたアスカに驚きを隠せずにいた。
 目を輝かせて、アスカに詰め寄ったのは鳴滝姉妹。

「結構強そうな球だったのに!」
「手、痛そうですぅ……」
「それで、これ向こうに投げ返せばいいんだよね……」

 ボールを右手にゆっくりしたモーションをとり、

「えいっ!」

 投げた。
 その勢いは、英子の投げたそれと同じかそれ以上か。

「あたぁっ!?」

 ボン、という音を立てて当たったのだった。

「ナイス、アスカーっ!!」

 振り返り、力こぶを作るように腕をあげるとクラスメイトに向けて笑う。

「よーし……このドッジボール勝負、絶対勝つわよ!」

 年下だからってなめてると痛い目にあうんだから!

 明日菜が高校生チームを指差して、叫ぶ。
 それでも、彼女たちは味方が1人減ったというのに余裕の表情。

「まだ、なんにもわかってないみたいねぇ。あんたたち」

 そう言うと、英子はコートを駆けてボールを持った腕を振り上げる。
 「思いっきり投げますよー!」とその目が語っていて。

「目が本気だよあの人!」
「あああの、みなさん落ち着いて……」

 ネギの忠告などすでに聞いちゃいない。
 誰もが生き残ろうと必死で仲間を押し分けていくが、全員が生き残るほどの時間はやっぱりなくて。

「それっ」

 ぽいっ。

 かるーく、ボールを放り投げた。
 ふよふよと宙をさまよい、

「あぅっ」
「あだっ」
「いてっ」

 トリプルヒット。
 明日菜もアスカも動く間もなく3人がリタイアしてしまっていた。

「それもう一丁!」

 ひょいっ。

「あっ」
「ひゃっ」
「あ―――」
「あっ、うそ!?」

 さらに4人。
 これで味方は15人。
 あっという間に4分の1がリタイアしてしまっていた。



「ハッ、しまった!」

 人数が多すぎて、ギューギューで動けない。
 それを聞いてか、明日菜が声をあげた。

「ドッジボールで数が多いのは有利になってない……的が多くなっただけ!?」
「じゃあ22対11ってハンデになってないじゃありませんか!?」

 そんなこと言いつつも、あやかも明日菜も最初にその条件をのんでいるのでどっちもどっちである。
 気付いたのもそれはすでに遅かった。
 散って散ってと声を掛け合うが、いかんせんコートが狭い。

「次は ―― どう見ても取る気のないヤツ!!」
「史伽っ!」

 なんとかボールを避けようとしたが最後、背後から狙われ鳴滝史伽アウト。
 どんな手段を用いてでも確実に敵を減らしていく彼女たちの戦法に怒りを覚えるのは当然。
 後ろを向いているのも確かに悪いが、相手は自分よりも年下。
 大人気なさ大爆発である。

「次はアンタよっ!」
「本屋狙われてるアルよ」

 助けるアル!

 古菲が助けに向かうが間に合わない。
 投げられたボールはのどかを射程に捉え……

「きゃあ!?」
「……っ」

 たのだが、進行方向に明日菜が入り込みキャッチ。
 のどかは九死に一生を得たのだった。

「大丈夫、本屋ちゃん!?」
「ア、アスナさんどうも〜〜」

 ペコペコと平謝りののどかを見つつ、明日菜はキッと高校生チームをにらみつける。

「女子中学生の底力、見せてやる!!」

 コートを駆け、明日菜は勢いに乗せてボールを投げた。
 バカ力と称されるだけあり、宙を走る速度は速い。
 しかし。



「バカ力が自慢のようだけど……」



 ヒリヒリ痛む手に冷や汗を少し流しつつも余裕の笑みを浮かべる。
 ボールは片手でキャッチされていたのだ。
 渾身の力で投げたのに、と明日菜は目を丸める。

「そもそもあんたたち小ザル集団が私たちに勝てるわけないのよ」
「何せ私たちの正体は……」

 女子高生チームは一斉に黒を基調とした制服を脱ぎ去る。
 アスカは慌てて目を両手でふさぐが、彼女たちは裸になっているわけではなく。

『ドッジボール関東大会優勝チーム・麻帆良ドッジ部【黒百合】!!』

 高校の体操着なのかそれとも部のユニフォームなのか。
 自慢気に全員でそう声をあげたのだった。



「へぇ〜、どっじぼーるに、大会なんてあるんだぁ」
「すごいです!!」

 つい先刻までドッジボールという名前すら知らなかったアスカと、純粋に拍手をおくるネギを除き残りの13人は中央に集まってヒソヒソと話す。
 話題はドッジボール部について。

「……高校生にもなってドッジボールって……?(裕奈)」
「関東大会って、あいつらしか出なかったんじゃない?(明日菜)」
「小学生までの遊びちゃうの?(亜子)」

 とまあ、そんな話だ。

「うるさいわねっ。余計なお世話よっ!!」

 ビビ、しぃ!!

 2人を名指し、英子は指示を出す。
 その技(?)名を聞いて、2人は外野へと駆けていく。
 その名も、『トライアングルアタック』。
 名前の通り、内野と外野でパスを回して相手を翻弄する作戦なのだった。






第14話。
なんとも都合の良すぎる展開で、ひねりもまったくありません。

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