「うぅ……」

 そこはアスカにとって生き地獄そのものだった。





「さっきのアスカ、すごかったね〜」
「……うん」

 2−Aの教室内。
 現在そこは、普通の男子ならば狂喜乱舞するだろう禁断の聖地だった。
 満面の笑みでアスカを賞賛する亜子は上着を躊躇なく脱ぎ、同じようにうなずくアキラは体操着姿。

 次の授業は体育。
 つまり、普段制服を着ている学生たちは体操着へ着替えなければならないわけで。

(早く外に出たいよ〜……!!)

 仮にも男であるアスカは1人、女子中学生たちの生着替えを目の当たりにしていたのだった。

「転入初日の真っ赤な顔がウソみたいにあの人たちと話してたもんね」



 アスカの時計進ませ作戦(そのままかよ by作者v)のおかげでか、授業開始まで少し時間があるため、おしゃべりしていたのだった。
 しかも話題は先刻の高等部の人とのケンカについて。
 1人早々と着替えを済ませさっさと教室を出ようとしたのだが、出口周辺で数人がまだ着替えてすらいなかったため出るに出れない状況になっていたのだ。

「ネギ君はちょっと情けなかったかな」
「10歳なんだからしょうがないじゃん」

 まき絵の声を聞きながら、裕奈はスカートの下からズボンを履いた。

「でも、私たちじゃ高校生にたてつくなんてできそうにないよね」
「そうだよねー」



 そんな話を聞きながら、木乃香が事の顛末を明日菜から聞くと。

「またですかぁ?」
「みんなやられてるよー」

 ムカつくよねーっ!

 22番鳴滝風香と23番史伽姉妹はそう言っては眉をひそめる明日菜にうなずいていた。

 下級生にここまで言わせる高校生は、悪い意味で意味すごいのではないだろうか?



「ねぇ、アスカ!!」
3.14159265358979323846264338327煩悩を消え去れ消え去れ………はっ!?」

 目の前に広がる光景を見るまいとまぶたを強く閉じたアスカは、雑念を消し去るためにと円周率を小さな声で暗唱してみたり、よくわからない単語を並べたりとそんなことに集中していたせいか裕奈の声に気付くまでに時間をかけてしまっていた。
 永遠につづく円周率をどこまで暗記しているのかは定かではないのだが。

「もう、みんな行っちゃうからアスカも行こうよ」
「ほっ、ホント!?」

 アスカは見事、生き地獄を耐え切ったのだった。




魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
どっじぼーるってなに?




 今日の体育はバレーボール。
 生徒数の割にコートが少ないので、2−A一行は屋上へ移動。
 そこには。

「あら、また会ったわね。あんたたち」

 偶然ねv。

 昼休みに場所の取り合いをした高等部2−Dの人々が、屋上を占拠していたのだった。


「あんたたち、高等部の校舎は隣じゃない。わざわざ中等部の屋上までくるなんて……」

 ようするにイヤがらせである。
 ……どこの幼稚園児だよ。

 アスカが1人額に手を当て呆れ果てていたのは言うまでもない。
 しかも、彼女たちの中にはネギの姿も見える。

 体育の先生が来れなくなった代わりらしいが、来たらすでに屋上を乗っ取られていた。
 見つかったが最後、抱きかかえられ今に至る、とそんなところだろう。

 そして、口論の末に発展したのは取っ組み合い。
 すでに授業もへったくれもない状況に陥っていた。



「ハックシュン!!」




 混乱の末、場を収めたのはネギのくしゃみだった。
 風の魔法が暴発し周囲に突如強風を巻き起こしたのだ。

「い、今の風なに?」
「そんなの風のま……」

 まき絵に尋ねられたアスカ。

「ま……まぐれ……そ、そう!気まぐれじゃないかな?」

 冷や汗を顔に伝えながら、人差し指を立てるとそんな言葉を口にしていた。

「あはは、おかしなコト言っちゃって〜」

 はぐらかしたかのように聞こえただろうが、追求されなくて良かったと内心で安堵の息を吐く。
 そんな話をしているうちに、コートの左右に中等部と高等部で分かれてようとしていた。
 しかも、中等部組の人数が高等部の倍ほど。



「手伝わんのか?」
「え?」

 尋ねたのは龍宮真名だった。
 彼女のほかに数人がコートに入っておらず、運動会などに用いる煙だけの花火を打ち出す人(ロボ)や応援する人が周囲を取り巻いていた。

「真名はいかないんだ?」
「ああいったイベントは好かんのでな」
「刹那は?」

 アスカを挟んだ隣に腰を下ろす刹那に真名が尋ねれば、「くだらん」の一言が返ってきていた。

「楓も出ないの?」
「拙者もこのような催しはちょっと……」

 アレだけの戦闘能力があるのだから、出れば楽勝なのだろう。
 しかし、彼女たちは残念ながら不参加。

「そう言うお前は出ないのか?」
「出る出ない以前に、これから何をやろうとしてるのかすら……」

 そこまで言ったところで、





「アスカー!!」
「ほら、呼ばれているぞ」





 真名に背中を押されてコートに踊り出たのだった。


「なんで一緒に来てくれなかったんですかぁ〜!?」
「ボクたち、アスカが運動神経いいの知ってるんだからね!!」

 中等部組に合流したところで鳴滝姉妹にどつかれるが、アスカはそれにほとんど動じることなく、

「その前に聞きたいんだけど、これからなにやるの?」
「何って……アンタ聞いてなかったの!?」

 よほど気が立っているのか、明日菜の剣幕に押され気味になるものの質問に対する答えを求めようとメンバーを見回す。

「わたくしたちは、これからあのオバさま方とドッジボールの試合をするのです」
「どっじぼーる……」
「みなさん、頑張りましょう!!」

 ネギの音頭で士気が上がるが、1人思い悩むのはあやかから答えを聞いたアスカで。

「どうしたネ?」
「あ、くーちゃん。あのさ、もう1回だけ聞いてもいい?」
「なにアルか?」

 古菲は首を傾げる。
 アスカの口から発された言葉は、日本に長く住む人間なら誰もが驚くことだった。




「どっじぼーるって……なに?」




 全員がその問いにぴしりと固まったのだった。







第13話。
爆弾発言の話でした。
彼は小さな頃から人の少ない山奥で暮らしていたので、ドッジボールを知りません。
じゃあ何でネギは知ってるんだ!?とお思いの方いらっしゃるかと思いますが、
彼はその辺のことをそれなりに勉強したのだということにしておいて頂けると幸いです。

上のセリフを言わせたいがためにこのような形をとった次第です〜。


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