「なんだと思う?」

 原宿から少し離れたところに位置する、森。
 森というよりは、公園といった方がこの場合は正しいのだが。

 現在、アスカとネギがいる場所は代々木公園の入り口だった。

「さぁ、僕に聞かれてもなぁ」

 アスカは入り口の、1本の木を見やる。
 木肌に彫りこんである紋章を見て、眉をひそめた。

「人払いの結界……っ!?」

 なんでこんなところに、と。
 ネギは驚きの表情を露にしている。

 結界が効果を発揮しているのか、公園内には人っ子一人見当たらない。
 そして、2人が感じているのは微量ながらも強い力。

「ネギ、実戦は初めて?」

 隣でサウザンドマスターゆかりの杖を握るネギに尋ねれば、返ってくるのは肯定の意思表示。
 しかし、彼の表情に緊張はなく。

「覚悟してたから」

 と。アスカに笑みを向けたのだった。




魔法先生ネギま! −白きつるぎもつ舞姫−
湧き出る敵群




「ネギ、援護頼むね」

 そう言いながら閉じた両の目をゆっくりと見開く。
 普段の雰囲気を微塵も感じさせず前方に展開する黒い影を射抜くように睨み付けると、懐から手のひら大のカードを取り出し、右手人差し指と中指の間に挟む。

来れアデアットっ!!」

 声と共に、カードが光を帯びる。
 放たれた白い光はアスカの手に収束し、一振りの大剣を形作られる。

 駆け出し、大剣を振り構える。
 その先には獣や人をかたどった異形の怪物が数体、姿を現していた。
















「ラス・テル・マ・スキル・マギステル……!」

 ネギが紡ぐのは魔法を発動するための始動キー。
 アスカは敵の渦中へと身を投じ、バンショウノツルギという名の白き大剣をここぞとばかりに振り回す。
 回転するように大剣を横に凪ぐと、囲んでいた怪物たちを吹き飛ばした。

光の精霊11柱!集い来たりて、敵を射てウンデキム・スピリトゥス・ルーキス・コエウンテース・サギテント・イニミクム!!」

 詠唱中、彼の周囲に光の球が具現する。詠唱を終えると、光の球は11個。
 ネギは右腕を前へかざすと、

「『魔法の射手・連弾・光の11矢サギタ・マギカ・セリエス・ルーキス』っ!!」

 掛け声とともに発生した11の光球はアスカを避けるように飛び、アスカへその巨大な腕を振り上げた異形に着弾。
 背後へと弧を描くように吹き飛んでいった。

「アスカ、大丈夫!?」
「うん、問題なし。上出来上出来。でも……」

 険しい表情をそのままに、見やるのは前方。

「えぇっ!?」

 その先には、倒したはずの異形の怪物。
 数はさらに増加しており、数体では収まらず指折り両手で数えても足りないほど。
 赤い目を光らせて、ゆっくりと近づいてきていた。
 その数に表情を歪め、舌打ち。

「僕がひきつけておくから、ネギは特大のをお願いね?」
「え……」

 話している間にも、敵はどんどん増えていく。
 アスカは黒い大群を見据えると、ネギの返事も待たずに駆け出した。
 取り残されたネギは眉をひそめるが、援護のためにと杖に魔力を流し始めた。

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル……」

 再び、指導キーからの詠唱が始まっていた。
 特大の、と言われて彼が選択したのはウェールズを出発する前に覚えた魔法の中でも、比較的高いランクに位置する魔法。

闇夜を切り裂く一条の光。我が手に宿りて、敵を喰らえウヌース・フルゴル・コンキデンス・ノクテム・イン・メアー・マヌー・エンス……」

 空いている彼の右手が淡く光り始めていた。















 敵を打ち砕こうと、長い髪をなびかせ大地を疾走するアスカは、自身のアーティファクトが秘める力を解放する事にした。
 アーティファクトの持つ、魔法とは違った特殊な力。
 数多に存在する魔法使いの従者<ミニステル・マギ>の中でも、『白き舞姫』という異名の由来にもなった白き大剣を振りかざし、

「大地よ炎よ、絡み合え。地炎、連携……」

 呟きつつ跳び上がり、着地したのは大群の中心。
 それと同時に、大剣を地面に突き刺した。

 かの剣の秘める力とは地水火風、すなわち四大元素を統べる力だった。






龍陣剣リュウジンケンっ!!」
「『白き雷フルグラティオー・アルビカンス』っ!」





 叫んだのは同時。
 ネギの手から放たれた白い稲妻は一直線に大群を突き抜け、敵を吹き飛ばす。
 突き刺された白い大剣は淡く明滅すると、周囲に黄金の円陣を描いていた。

 次の瞬間。

 陣を覆っていた黄金の光が収束し、円陣内で爆発を引き起こした。
 陣の直径は10メートル前後。
 木々や草をも飲み込んで、爆発は突き立てられた白い剣を中心に陣をはみ出んほどに肥大する。
 内部の異形は、それによってその身を滅され消えていった。

 下と正面から迫る巨大な力に、異形たちは消えていく。

 爆発が収まると、アスカは自らの武器を地面から抜き取っていた。




 しかし。




「うそぉっ!?」

 目を丸め、その先を見つめる。
 そこには、地面から湧き出る黒いシルエット。
 倒したはずの異形の怪物が、ゾンビのように地面から姿を現していたのだった。

「どうなってるの、コレ!?」

 ネギはアスカの隣で目の前の光景を目の当たりにして叫ぶ。
 結構な数を倒してきているはずなのに。
 向こうの数は減るどころか増えつづけている。

「もしかしたら、どこかに仕掛けがあるのかも」

 そう考えるのは当然だった。
 隣のネギも同じことを考えているようで。

 互いの顔を見つめ合い、うなずいた。
 次の瞬間に、ネギの顔がこわばる。

「あぶないっ!!」

 叫ぶのと同時に、アスカの背後で腕を振り上げていた黒い怪物はアスカに向けてその腕を振り下ろした。
 鈍い音と共に、巨大な腕が地面をえぐる。
 しかし、そこにはアスカの姿はなく、砂煙だけが舞い上がっていた。

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル……吹け、一陣の風フレット・ウネ・ウェンテ

 風が生まれ、舞っていた砂塵が吹き飛んでいく。

「『風花・風塵乱舞フランス・サルタティオ・プルウェレア』!!」

 黒い怪物はその巨体ゆえ動きが遅い。その間にネギは詠唱を開始。
 周囲に竜巻を起こし、思惑どおり砂煙ごと吹き飛ばしたのだった。

「アスカ……?」
「僕はここだよ〜・・・」

 流れる汗を拭い、先ほどの力の解放により荒くなった息を整えながら、アスカは声を発した。

「今のは……危なかったぁ」

 両手を膝におき、大きく呼吸を続ける。

「ネギ。僕がひきつけておくから、原因の追求をお願いね?」

 学力的には15歳のアスカよりも10歳ネギのほうが高い。
 自分で探すことをしなかったのは、彼が魔法学校に通っていたこともあってのことだった。

 情けないなぁ、などと思いつつも、アスカは大剣を持ち上げる。

「わかったけど、気をつけてね?」
「大丈夫だよ。僕のことは心配しないで、ね」

 了承の声を聞き、足止めをせんと再び地を駆けたのだった。





第08話でした。
ネギくん出張ってます。
そして、初の魔法戦闘でした。

アーティファクトの能力はサモン連載のネタをそのまま流用しました。
他に思いつかなかったというのは内緒です。


←Back   Home   Next→
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送