自分の姿がガジェットに視認されたらしい。
 左右に広がった両腕には無骨な盾が装備され、さらに近づいてみると、今までに確認されているガジェットよりも力強さと凶暴さを感じさせた。
 頭上で揺れる鋭い尻尾は。

『呆けている場合ではないはずですが』
「……そうだね。そうだったそうだった」

 自分自身に生命の危機を震撼させた。

 両腕の中心で、緑のライトが輝く。
 見ただけでもわかる。このガジェットは、今までのそれとはケタが違うことくらい。
 同時に理解する。

「どーしよ」

 今の自分の力では、この敵に歯が立たないことが。
 足りないのだ、色々と。
 能力とか、踏むべき場数とか。
 実戦経験だけならそれに近い訓練を毎日続けては来たが、結局のところ訓練は訓練。今のように身体張って戦場に立つことなんて、今回が初めてだ。

 だめじゃん、私。

 見栄を張りすぎたか。
 確かに自分ならいけるんじゃないかとか、無駄に自意識過剰になっていたかもしれないなー、とか。

『マスター!!』
「え? ……ふわっ!?」

 敵を目の前にしてまでなぜに思考の海を優雅に泳いでしまったのか。
 セイファートハーツに声をかけられたときにはすでに遅くて。
 目の前には、ガジェットが繰り出した複数の光弾が迫っていた。
 シールドも間に合わない。撃ち落とすにも魔力弾生成に時間がかかりすぎる。

 動け私、動け私、動け私!
 考えろ、考えろ、考えろ!!

 光は、目の前。
 どうしようもない、という結論に至るのはあっという間で。

「っ!!」

 少しでも痛くないように、エミリアはぎゅっと、目を閉じた……………のだが。

「あれ?」

 いつまで経っても、身体に衝撃はなくて。
 目の前で、何かが弾ける音が聞こえただけ―――。

「ぼさっとすんなミリィ! さっさとその目ェ開けろっての!!」

 突然耳に飛び込んできた低い声に、閉じたその目を見開くと。
 無数の光弾のすべてを叩き落してなお、無骨な大剣を手にエミリアを守る少年の姿が映りこんだ。

 フォルテ・ディグニティ。
 訓練校時代の同期で、相棒の彼が。
 明らかに格上の敵に臆すことなく、盾の魔法を展開し敵の攻撃を受け止め続けていた。

「なんで……」
「なんでもいいから動け! 敵は目の前にいんだから!」

 ったく、先行して飛んでってこれじゃ、今までの訓練が意味ねーっての!

 足元に円状の魔法陣が展開され、光を帯びた大剣を振るって敵の鋭い尻尾をいなしている。
 貫かれたら即死だというのに、怖くないのかとエミリアは思う。
 そもそも、命の危険が伴っているのだから、彼も自分と同じ条件のはずなのに。

「俺ら2人で1人前なんだから、1人で突っ込もうとすんなよな…………っ、部隊長にさっさと報告しろって! 俺らじゃこのガジェット1体が精一杯だって!」
「……う、うんっ!」

 ……そっか。

「八神部隊長! エミリアです!」

 私たちは2人でようやく1人分。
 1人でダメでも、2人ならきっと。

「こんな状況なんて……ピンチにだってならないんだからッ!」



魔法少女リリカルなのは The Another StrikerS  #14



「紫電、一閃ッ!!」

 炎を纏ったシグナムの一閃は、ただの一振りで眼前のカジャット一型を殲滅した。
 AMFを展開される前に斬撃一閃。曇りなく澄んだ一撃は、彼女と彼女の相棒であるレヴァンティンの持つ変換資質『炎熱』により、その威力を高める。
 カテゴリとしては魔法に当たるが、洗練された剣術により繰り出される一撃は魔法というよりは『技』であろう。

「喰らいやがれェッ!!」
『Schwalbefliegen!』

 グラーフアイゼンのハンマーヘッドから噴出した鉄球は、一直線に奥のガジェットを貫いた。
 AMFを展開されてもなお勢いを止めず、まっすぐに。
 魔力を纏っていれば高い誘導能力を誇る弾丸だが、これだけ数が多いとAMFによって魔力結合を解除されてもその推進力が止まるわけではない。
 それはまるで彼女―――ヴィータの気性を現しているかのように。

「おおおぉぉぉっ!!」
『Cruelty Blow』

 ガジェット1体に対して振りぬかれた拳風は、衝撃波を伴い周囲のガジェットをも爆散させた。

 元々、彼はデバイスというものを持たず戦ってきた。
 ただただ、拳を武器として生き抜いて、仲間たちを守るために習得している数少ない魔法を行使する。
 そんな彼がデバイスを持ったのは、機動六課に配属された直後のことだった。
 機動六課の任務がレリックというロストロギアが元で引き起こされる問題に対処することであるからこそ、より強い守りの力と、攻めの力が必要になる。
 守るべきものが多くなれば、今までよりも強く在らねばならないから。

 だからこそ、彼は主であるはやてに進言した。
 今のままでは何もかも足りないのだと。

 そうして手にしたのは、肩までを覆いつくす手甲を模した近接格闘特化型デュアルデバイス『フェンリル』。
 彼にも、ウインド分隊配属にはきちんとした理由があったのだ。

 デュアルデバイスは忍耐の象徴。
 それを実戦で難なく使いこなしている姿の裏には、それこそ血のにじむような努力があった。
 デバイスとの意識合わせや、魔力行使における互いの役割の認識と、それらを実践する意味での模擬戦の繰り返し。
 時にはシグナムが、時にはヴィータが。そして時たまが相手をさせられた。
 前者2名は『それでより自分たちが強くなれるのなら』とザフィーラの要請に快諾したのだが、そんな2人にも仕事がある。そんなときに白羽の矢を立てられたのが同じデュアルデバイス使いのであった。
 そんな彼らの強力のおかげで、

「よし、まだまだいけるな。フェンリル」
『もちろんであります、主殿』

 相棒の答えに頼もしさすら感じるほどに、ザフィーラは今までよりも強くなれた。

『敬愛すべき上官である主殿のためならば、はどこまでも貴方と共に在りましょう。そして、あのクソ虫共を滅殺するのです!!』

 少しばかり、AIの性格に難があるように思うのだが。


 そんな彼らの攻撃を受け、無数の破片と化すガジェットのさらに奥には、さらに多くのガジェットの群れ。
 破壊しても破壊しても終わらない。しかも、一型が今までの一型とは違うような印象を受けていた。
 まるで、何者かの命令を受けて組織的に動いているような。

「キリがないな……」
「数にもの言わせてゴリ押す気かよ?」
「それにしたって、敵の動きが良すぎる……どこかに司令塔がいるのだと考えるのが妥当だが、レリック『かもしれない』ものにそこまでするとは思えん」

 シグナム、ヴィータ、ザフィーラ。
 3人で背中を合わせて、終わりの見えない戦場を見回して、どうしたものかと思考を巡らす。
 もっとも、巡らそうにも敵の数にモノを言わせた波状攻撃の対処に追いやられてそれどころではなかったりするのだが。
 必死になるのも当然だろう。
 彼女たちの後ろには新人たちが、そして、オークションに参加している一般客がいるのだから。
 背後に防衛ラインを敷いていることに安心してはいけない。

『みんな、聞こえるかー?』

 そんなときだった。
 彼女たち3人と、隊長陣に向けて念話が発されたのは。


 ●


「むーん……」

 エミリアの報告を耳にして、はやてはうなる。
 あまりよくない状況だ。
 相手はガジェットの群れの対処と、それを統率しているのであろう『指揮官』を探す必要が出てきたからだ。
 一般人を守るためには、ただでさえ多いガジェットの侵攻を喰い止めなければならない。しかし、そのガジェットを喰い止めるのに一番手っ取り早いのが指揮官の討伐。
 現在の状況を脱するにはどちらの対応も必要で、指揮官の討伐は迅速に行わねばならない。
 ならば、外の戦力だけではまだ足りない。ただでさえいっぱいいっぱいなのだから。

「内部から送り出すしかない、か……ま、外で全部終っちゃえば、中での仕事はないからなー」

 今ホテル・アグスタ内で待機している3人の隊長たちの中から、誰かに状況の打開を託すことにした。
 さて、ならば次に考えねばならないのはその大役を誰が遂行するか、ということだ。
 事態は急を要するからこそ、迅速な判断が必要だが。

「中から送り出すにしても、今度は中の警備を手薄にはしたくないし……そうすると、単独行動の経験がある方がええな」

 任務中に単独行動経験が豊富なのは、フェイトとだろう。
 フェイトは執務官としての立場から単独で行動しなければならない局面があっただろうし、彼女はその戦闘スタイルからオールラウンダーとしての気質が強い。
 だとすれば適役かとも思えるが、単独行動だけで言えばむしろの方が得意だろう。
 彼の単独行動経験はそれこそ子供の頃まで遡る。子供にとっては過酷な任務もあっただろうが、それをこなしてこれたのはもはや彼の才能ともいえるだろう。
 ちょっと危険なサバイバルスキル。あんまりほしくない才能だが、それにプラスして彼の相棒はアストライア。彼らは熟練したデュアルデバイス使いなのだから、こちらもまた捨てがたい。
 もっとも、面倒くさがりの彼のことだ。お願いしたところで「面倒だからやだ」と最低1回は拒否の言葉が返ってくることだろうが。

「ま、あれでちゃーんと仕事はしてくれるからなー……ん、決めた! みんな、聞こえるかー?」

 はやてはそれを伝えるべく、隊長陣に向けて念話を飛ばしたのだった。





『と、ゆーわけや』

 隊長陣に向けて放たれたはやてからの念話は、にとっては非常に残念な結果に終わるものだった。
 オークションにかけられたロストロギアを目指して押し寄せるガジェットの群れ。それらを統べる司令塔がこの付近に潜んでおり、ガジェットたちを指揮している。
 それに加えて、確認されたガジェットの新型。
 先行したエミリアの報告によれば、巨大なサソリ型とのことで、自分たちでは1体がやっとだそうだ。
 そんな今までのガジェットとは明らかに異質なはやて命名『ガジェット亜種・通称スコーピオン』は全部で3体。その他のガジェットを掃討する戦力を鑑みると、残りの2体を各1体ずつ、2人が相手をするのが望ましい。

『ことは急を要する。せやから、ホテルの中から……くん。行ってくれるか?』

 だからこそ、単独行動に長けたに白羽の矢が立っていた。
 彼女の言っていることはもっとも。外だけで足りないのだから、必要な分だけ他から捻出しなければならない。その追加戦力がたまたま、ホテルの中を警備して回っていた自分たちだけだったという話。
 当然、は警備しているというのはもちろん嘘で、2階席の最後方でふわふわな椅子に腰掛けてぐーすか寝息をぶっこいていたわけだが、もちろんそれを彼女たちは知らないわけで。

「りょーかい……はぁ、ツいてないなぁ」

 そのときの彼のげんなりした表情は、しかし彼女たちも見慣れたそれで。
 そんな顔してるんだろうな、と容易に想像できるくらいで。

「2人もがんばってるわけだし、俺もたまにはがんばりますかね」
『私としてはたまにではなくて、いつも頑張ってほしいところですが』

 アストライアの静かなる言葉のトゲは、久しぶりに出したのやる気をいともあっさりと半減させたのだった。

『残りの1体はザフィーラに頼むわ……よろしくな』
『……心得た』

 静かな、しかし力強いザフィーラの声を聞きながら、は惰眠を貪っていた椅子からゆっくりと立ち上がる。
 周囲の観客に気づかれないように、ゆっくりゆっくりと、外へ向かう。
 奇しくも気づけばウインド分隊が最前線に勢ぞろいすることになってしまった。
 エミリアもフォルテも、自分たちの部隊にも実は副隊長がいたのだということに驚くことだろう。
 たぶん、はやてもわかって最後の1体をザフィーラにお願いしているはず。

 そうでなきゃ。

『ド派手にいったれ! きばりやウインド分隊!!』

 非常事態だというのに、こんな素っ頓狂なこと口走るわけがない。



 ちょっと小走りにホテルの外へ。
 今まで暗い室内にいたからか、太陽の光が目に眩しい。
 その光の強さに思わず目を細めるが、それもまた仕方ないこと。つい今しがたまで、堂々と居眠りしつつ仕事をサボっていたのだから。

「アストライア、フォルテとエミリアは?」
『ここから10時の方向に500m、と行ったところでしょうか。しかし、徐々に押されているようですね。2体目が合流していて、それらの猛攻に守りに徹している、といった状況でしょう』

 アストライアの答えに、はふむ、と思索する。
 最終防衛ラインの守りを固めている新人たちの背中を視界に納めると、その視線に気づいたのか彼女たちは目を丸めた。

隊長!?」
「おーう。隊長ですよ、っと……ティアナ、状況はどんな感じ?」
「シグナム副隊長、ヴィータ副隊長、ザフィーラがガジェットたち大半を潰してくれているので、あたしたちは取りこぼしを……」
「取りこぼしって言っても、副隊長たちの攻撃でダメージを負ってここに来るからねぇ……」
「スバル、そんなどうでもいいこと言わなくていいでしょ」
「へへ、ごめーん」
「ふーん……」

 統率されているとはいえ、所詮は単純行動のみをプログラミングされた無人機械、といったところか。
 数だけ多くても行動パターンは単純で、ただレリックを追いかけるだけだからこそ、たった3人の魔導師でも対処できているのだろう。
 余計な知恵でもつけられていないだけ、まだマシといったところか。

「それより、にぃ……じゃなかった、隊長はどうしてここに?」
「あー、なんかガジェットに新型だとさ。ティアナ、最前線のモニターできる?」
「はいっ」

 シャマルから直結された最前線の映像を映し出す。
 そこには、無数の穴が出来ていた。
 目の前にそびえる巨大な影は、エミリアが見たであろうサソリの姿。そして、2人でフォーメーションを組んで守り続ける背中が見えた。
 両腕の盾を合わせての体当たりや、その鋭い尻尾を使った刺突、薙ぎ払い。さらに、他のガジェット同様に生成される光弾。
 AMFは搭載されていないようだが、重厚感溢れる体表面は太陽の光を浴びて鈍い光を放っていた。
 そんな相手が、エミリアとフォルテの前に2体。
 確かに。

「こりゃちょっとヤバそうだなぁ」

 状況はよろしくない。

「あの、これが新型のガジェットなんですか?」
「ああ、そうらしいね。どうよエリオ……あの2人、なんとかなりそうかな?」
「え?」

 考えてもいなかったかのように、問われたエリオはきょとんとする。
 この場所はまだ静かだ。だからこそ、今のようにこうして最前線の様子を鑑賞していられる。
 しかし、もし自分たちがあの場にいたらと考えることはなかったのだろう。実際、立っているのはフォルテとエミリアであって、自分たちではないのだから。

「ま、あれだ……現場の外から見て『がんばれ、がんばれ!』じゃなくてさ。もし自分たちがこの状況になったらどうするかって、考えてみてもいいと思うよ?」

 自分ならここでどうする、どう動く。
 自身の能力と照らし合わせて、勝てる相手かそうでないか。それを肌で感じ取るのもまた、訓練の一環になるだろう。
 そうすれば、明らかに格上の相手であっても、互角以上に戦うことだって出来るだろうから。
 過去にがそうであったように。
 単独任務で明らかに勝ち目のない相手から逃げ続けて幾星霜。容赦ない攻撃を死に物狂いで避け続けたのも、今となっては少なからず自身の糧になっているという自負もそれなりにあることだし。

「さて。スバル、ティアナ、エリオ、キャロ……みんなだったらこの相手と、戦う?」
『マスター』

 アストライアの急かす声を耳に、映像の2人がちょっと追い詰められつつある状況を目に、正装姿のはバリアジャケットを纏う。

「4人はこのままここを死守。どーせあとではいっぱい出来ると思うから、せめて気ぃ張っとくくらいはしときなよ?」

 ふわりと浮かび上がりながら、は言う。
 自分が追うべき司令塔の姿が確認できず、かつフォルテとエミリアの状況が芳しくない以上、最前線へ急行するのがにとっての最優先であろう。

「ま、どうするかはお前さんたちの気持ち次第だと思うけどね。んじゃ、あとよろしく」

 はそんな一言を残して、風と共にすっ飛んでいってしまった。

隊長ってさ……」

 そよそよと風が吹きぬける中、スバルがつぶやく。
 突然現れて、話すだけ話してあっという間に飛んでいってしまった。
 その姿を。

「風、みたいだよねえ」

 マイペースで、何を考えているのかもわからなくて、何より自由奔放に見える。
 どんなに状況が逼迫していても、彼はいつものようにへらへら笑って行動するに違いない。当然、あせりとかイラツキとか、そんな感情もまったくなく、ただ普通に任務をこなすのだろう。
 ランクだけならAA+。なのはやフェイトと比べると一般的に近いレベルの魔力保有量だが、それでも彼はストライカーと呼ばれるまでになったのだから。

「……っ!」

 そんなことを考えてしまったティアナは、浮かんだそれを吹き飛ばすかのように首を振る。

「みんな、気を引き締めましょう。さんのことなんて、後でいっくらでも話せるんだから!」







「お、あれか」

 どすん、どすん、と砂煙が上がっているのが見える。
 フォルテもエミリアもまだ持ちこたえているようで、不本意ながら訓練に参加した甲斐があるといったところか。
 一度状況を確認してからさほど時間は経っていないものの、2人の劣勢ぶりを考えると長続きもできないだろうから、早いところ助けに入らないといけないのだが。

「スコーピオンは?」
『変わらず、2体は固まっているようです。しかし、もう1体が合流するのも時間の問題でしょう』
「ふーん……」

 スコーピオンたちの目的は、レリックではないのだろうか?

 そんな疑問がよぎるが、意思のない機械の行動の意図ことなど当然わかるわけもない。
 とにかく必要なのは、2人の助けになることくらいのはず。

「ザフィーラさん、残り1体をよろしく」
『心得ている』

 すでに肉眼で確認できる場所にザフィーラの姿を見つけて、念話を飛ばす。
 返ってきた声は彼らしい静かで、力強い声で。

「んじゃ、突っ込みますか!」

 どことなく、自分自身にも力が湧き上がるような気がした。







 光弾が飛来する。巨大な質量が自分たちに向かって突っ込んでくる。長い尻尾に薙ぎ払われる、突かれる。

 ……

 ヤバい。
 とんでもなーくヤバいですよ。

「フォルテ、伏せっ!」
「うおぉっ!?」

 地面に伏せた自分たちの頭上を太い尻尾が通過。
 情け容赦がまったくない。感情とか常識とか、どっかにおいてきているんじゃないだろうか?
 ……機械だから、感情とか常識とかの類のものはないのは当然なのだが。

 当然、敵の攻撃はそれじゃ終わらない。
 1体目を凌いでも次の1体が尻尾を頭上に掲げているのが見えた。先が自分たちに向いていてとても危ない。
 一発喰らえば即死だ。

「あ!」
「ドレッドキャリバー!!」
『無理です。回避間に合いません』
「相変わらず無愛想だなコノヤローッ!」

 動く間もない。
 一撃の威力は何度も見てきたから、躱す暇さえなく身体は動かない。
 太陽を、影が遮った。

 まったく、今日はこんなことばっかりだ。
 というか、前の任務に参加できなかった、ある程度戦えるようになったからってちょっと調子に乗りすぎただろうかとか考えてみる。
 ……や、私は最初から無理って言ってたっけ。
 そうすると、悪いのは突然自分たちに難題ふっかけてきたさんが!
 ……人のせいにするのはさすがにどーかと。

「「あああああああ!!」」

 そんなどうでもいいことを考えている暇はなく、ただ衝撃が来るのを待つのみで。
 あー、ついさっきも同じようなことがあったなあ。
 なんて、ふと思ったりしたのだが。

『Storm Blade Bleeze Shift』

 耳に届いたのは斬撃音と、どすん、という大きな何かが落ちた音。

「2人とも、いつまでも呆けてないでさっさと体勢と整えて。もうすぐ3体目もここに来るから」
「「さん!?」」

 自分たちの窮地を救った青年が、にか、と笑みを浮かべて見せた。
 当然、彼らはがこの場に現れた理由を知らない。しかも、今は非常時だ。理由を尋ねている暇はない。

「うううおおおおぉぉぁぁ!!!」

 雄たけびと共に目の前の敵2体の背後に現れたのは、スコーピオンの顔面を渾身の力で殴り、吹き飛ばしたのだ。
 砂塵の中から現れたのは、褐色痩躯の男性。

「「だれっ!?!?」」
「とか考えている暇もないぞー。フォルテ、エミリア……2人には1体任せる。俺と、あのおにーさんで2体担当する。サクッと終わらせて、それで任務完了よ」

 あとは他の連中にお任せな。
 あくまでらしく、目の前の2体に牽制をかける。

「さ、行くよ……ウインド分隊、ちょっとばかり気張っていくぞ!」
「了解した!!」
「「了解!!」」

 元気の良い返事を聞きつつ、ウインド分隊初の集団戦が開戦した。





第14話です。
ようやくウインド分隊を思いっきり戦わせてあげることができますね。
あと、ザフィーラさんのデバイスについては、完全オリジナルです。
前々から、何で彼だけデバイス持ってないんだろうかと思っていた次第で、
今回執筆に当たって彼にもデバイスを・・・というか出番を作ってあげようと思ったりしたわけです。
世界設定とかいろいろ無視してる感があったりなかったりなので、
根本からしておかしい点などあれば、メッセージ下さると幸いです


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