新人たちが、ヴィータを相手に奮闘しぐだぐだになり始めた頃。


「新部隊、なかなか調子いいみてえだな」

 そんな彼の一言に、はやては肩をすくめた。
 相手が自分より一回りも年齢が離れているからとか、そんな理由ではなくて。単に自分が指揮する部隊の運用が外部の人から見てもうまくいっていると認識されていることに、だ。
 しかし、相手は長く付き合いのある上官だ。
 勝手知ったるなんとやら、か。だからこそ、相手が人生の大先輩であっても動揺はなく、

「そうですね、今のところは」

 落ち着いた回答を返していた。

「しかし、今日はどうした? 古巣の様子を見にわざわざ来るほど、暇な身でもないだろうに」
「へへ、愛弟子から師匠へのちょっとしたお願いです」

 相手ははやての師匠。それ以前に、彼女と同様に一部隊を率いる部隊長。
 彼女も今回は部隊長として、彼に会いに来た。
 『ちょっとしたお願い』こそ、この場を持ってもらった理由だった。

「それでですね」

 ビーッ!

 その『お願い』を話そうと口を開いたはやてをさえぎったのは、無機質なブザーの音だった。

「失礼します」
「ギンガ!」
「八神二佐!」

 開いた扉から現れたのは、長い紫の髪を藍色のリボンで結わえた女性――ギンガ・ナカジマだった。
 彼女ははやてに飲み物を持ってきてくれたのだろう、両手に持ったトレイには、2つの湯飲みが乗せられていた。
 はやての師匠である彼の部下にして、愛娘。
 彼女ははやての姿を認めると、うれしそうに微笑んで見せた。

 手渡された湯飲みに口をつけると、口に広がったのは薄く素朴な味。
 古きよき日本の文化。これを飲んでおいしいと感じる私は、つくづく日本人なんやなあ、なんてはやては思ってみる。
 しかし、和むにはまだ早い。

「お願いしたいのは、遺失物のルート調査なんです」

 遺失物、というよりはレリックの。
 とある研究施設で発見されたかのロストロギアを何者かが所持し、違法に運搬されている、つまり密輸されてくる危険な代物が運ばれてくるルートを発見したのがはやてを含めた機動六課のロングアーチスタッフたち。しかし、はやてを除いた彼らに魔法資質はなく、前線の仲間たちをサポートする後方支援こそが彼らの本業。現場に飛んで調査など当然できるわけもないからこそ、はやてはいろいろな部署に手当たり次第に捜査を依頼していたが、地上のことを一番よく知っているのは地上部隊の人たちだから、と彼女はより詳細な情報を、古巣であり、信頼の置ける陸士108部隊に託すと決めたわけだ。

「いいだろう。引き受けた」
「ありがとうございます!」

 ゲンヤはひとしきり思案をめぐらせて、了承の一言を口にしたのだった。



 
魔法少女リリカルなのは The Another StrikerS  #11



「とりゃっ」

 びょいん、と跳ね起きる。
 白い悪魔から情け容赦ない一撃を喰らったあと、真っ黒焦げのまま訓練に参加させられた。
 「せっかくだから、がっつり模擬戦やっちゃおっか」なんて朗らかに言うあのあくまのせいだ。魔力ダメージ著しい今に新人相手に大立ち回り。
 相手は体力満タンやる気満々なだけに、なんとも理不尽。

 模擬戦中は暇なんだから眠くなったってしかたないじゃないか。

 そもそも戦技教導資格なんか持ってないし。
 自分自身、今まで『教わって』きたことなんかなかったんだから教え方なんかわかるわけもないし。
 そもそも、あの人たちは自分に何を求めているかがまったくもってわからない。
 いち武装局員ならまだしも、部隊のナンバー2である隊長格………………あれ、そういや小隊指揮官の資格持ってたっけ?
 昨今は1にも2にも資格資格って、ずいぶんとせせこましい世の中になったものだ。
 もっと心にゆとりを持たないといろんなことがうまくいかなくなっちゃうよ?

『マスター、ミスなのはとミスヴィータは行ってしまいましたが』
「………俺、なんでこんなトコにいるんだろうか」

 本気な悩んだ次第である。

「まあいいや。例の訓練用バーチャなんちゃらシステムで作った街もなくなってるし……10分だけ」
『いつもの、ですね……相変わらず怠け癖はなくなりませんか。……まあ、現状でもずいぶんな進歩ですか』

 アストライアのあきれた声が聞こえる。
 学生時代はそれはもう、いかに楽して物事をこなしていくかを最重要視していたから、訓練というか運動も5分やればいいほうだった位だ。もっとも、たった5分じゃ運動にもなりはしないのだが。あの頃に比べたら今はずいぶんな進歩といえよう。

 もっとも、怠け癖がなくなったかといえばそういうわけではなく、単に訓練しないと食べていけない。生きていけない。
 コレに尽きるからこそ、彼は餓死を回避するために訓練するのだ。
 そのためだけに、彼はやる気を出していた。

『Realization』

 アストライアから光が放たれる。
 彼の魔力を象徴するエメラルドグリーンが1つに収束し、1つの形を成す。
 同じくらいの背格好。
 鍛え抜かれた肉体。
 そして、両手には小太刀。
 かつて彼が師事していた人の形を。
 一定時間の間だけ、思い描いた人物の身体的特徴、能力、背格好までを完全に作り出す、その名の通り具現化の魔法で。

『魔力分離、固着コンプリート。シーケンスクローズしました。バリアジャケット、展開します』

 アストライアの声が響くと同時に、彼はバリアジャケットを身に纏った。
 手には片手剣と魔力で形成する小さな盾。一撃よりも機動力を重視したスパイクフォームを展開する。
 なにせ相手は『あの人』だ。
 腕力よりも手数と速度にものを言わせた戦い方をする人だからこそ、渾身の一撃よりも自分の身を守ること。この人を相手にするなら、それくらいの覚悟でいかないと、相打ちに持っていくことすら難しい。

 自分よりも格上の仮想敵を相手にした、実戦訓練。
 教導資格を持たない自分には、適した訓練の仕方などわからない。彼にとっては今も昔も、任務中に発生する戦闘以外では他にやり方を思いつかなかったのだ。

「さ、おいしいご飯も待ってるし……さっさと10分、やっちゃおう」
『はいはい了解です。ミッション……』

 お互いに得物を構える。
 相手は『あの人』。魔法というアドバンテージをもってしても、正攻法ではまず勝ち目がない。
 いつも最初に思うことだが、正攻法で勝ち目がないなら奇襲や妙手で勝ちをもぎ取るしかないわけで。
 つまるところ、ない頭をとにかくフル回転させるしかないわけだ。
 とにかく、今は。

『……スタート』

 いつもの自分らしくないがんばり方をするだけだ。


 ●


 ご飯も食べたし、シャワーも浴びた。
 昼間の疲れはまだ完全に取れたとはいえないけど、それももう慣れた。六課に入りたてのころに比べたらずいぶんと鍛えられたと思う。身体的にも、精神的にも。
 実際、この前の任務は自分なりにできることが十二分にできたと思うし、隊長たちもそれなりにいい評価をくれた。これらは全て、自分たちのために時間を割いてくれているなのは隊長やヴィータ副隊長、隊長のおかげとも言えるだろう。
 でも、自分にとってはそれだけじゃ足りない。今日の模擬戦でそれを大いに実感できた。
 瞬間的な爆発力は新人いちのスバルに、高い機動力と突破力を誇るエリオ。そして、高い魔力と召喚魔法で仲間をサポートするキャロ。何より、『忍耐』の象徴とされていたデュアルデバイスを手に隊長陣と同等近い模擬戦を見せたフォルテとエミリア。
 この厳しい訓練の中でそれぞれの個性の頭角を現してきた中で、自分は。
 そんなことを考えて、ティアナは首を振った。
 スバルのようなパワフルな立ち回りはできないし、エリオのような機動力もない。キャロのような高い魔力も持ち得ないし、フォルテのような一撃必殺の技もない。
 極めつけは、自分とスタイルの似るエミリアだ。
 あの娘はすごい。扱いの難しいデュアルデバイスを駆り、空を舞い、大出力の砲撃魔法を放ってみせた。
 どれも、自分にはできないことだ。それどころか、他の新人たちにもできないだろう。それほどの資質を、才能を彼女は持っている。
 それがどうにも、悔しかった。今までと同じ訓練をしているようじゃダメだと思った。
 だから今、自分はここにいた。
 訓練着を纏って、腕のホルスターにクロスミラージュを納めて。

「さて、と」

 中空に浮かんだキーボードを叩き、周りにいくつもの魔力スフィアを浮かべる。
 点灯したスフィアに銃口を向ける。ただそれだけのことだが、いざというときに確実に相手を撃ち落とすためには、瞬間的な照準合わせは必須。
 これはそのための訓練だ。
 双銃形態ツインモードのクロスミラージュを両手に構える。
 みんなの隣に並び立つために……何より、ランスターの銃に撃ち抜けないものなどないことを、証明するために。

「……っ!!」

 スフィアが灯る。目敏く見つけて、そこに銃口を向ける。
 ゆっくり、徐々に早く。灯る間隔の狭まりと、自身の反応速度が上がっていく。それだけで、体力はあっという間に削られていく。
 ただでさえみんなより体力が足りないのだ。
 だからこそ、みんなよりも多く訓練しなければ。

 そんな日々も、もう1週間になる。
 私にとってはまったくもって、『時間』は足りなすぎるものだった。

「ったく、10分って言ったろアストライア?」

 そんなときだった。
 どこからともなく声が聞こえた。当然、そんなことで訓練を止めたくないのであえてむしムシ無視。
 相手は声で理解できた。普段の行動からして隊長らしくない隊長なので、最近は敬意を払うことも忘れていたりするが、特に何も言われないのでこのまま通させてもらう。
 どうせ、なにも文句など言わないはずだから。

「……お?」

 どうやら、向こうも自分に気づいたらしい。


 10分、って言ったのに。

 アストライアは必死な自分にかこつけて、10分どころか1時間も……っ!
 まったく、無駄にたくさん運動させて、こいつは俺に何をさせたいんだか。
 奮戦むなしく、模擬戦まがいの訓練は大敗北。四方八方からの連撃を捌くだけで精一杯で、反撃することもほとんどできなかった。
 “あの頃”から8年もたっているのに。魔法ありのアドバンテージをもってしても、『8年前のあの人』にすら未だに届かない。自分自身、ずいぶんと成長したからそれなりに強くなったと思うわけだが。

『あの方が稽古の時にどれだけ手加減されていたかが、手に取るようですね』
「返す言葉も出てこないとはまさにこのこと」
『まあ、相手はこの道10年を超える猛者ですから。歴10年に届かないひよっこの貴方など本気を出すのもおこがましい、といったところでしょうか?』

 ここぞとばかりにずいぶんな物言いだ。しかも正論だから余計に反論しようがないんですが。
 もっとも、そんな相手に“そこそこ”戦えているだけまだマシといったところだろうか。リミッターのせいでフルドライブできないのでこっちも全力でないといえるのだが。
 せめて、おこがましいじゃなくてまだ早いとか言ってほしかった。

『それはただの言い訳ですけどね』
「まーそうなんだけど」

 結局のところ、こっちはアドバンテージをもってしても負けてしまったのは変えがたい事実だった。

「さて、さっさと帰って寝よう寝よう。そう、明日は絶対になのはちゃんから逃げ…………お?」

 視界の端に淡い光。
 隊舎脇の森で、いくつもの魔力スフィアを相手に奮闘する影を認めた。
 自分に気づいていないのか、スフィアの点灯にあわせて一心不乱に銃口をに向けている。しかし、スフィアの点灯にどんどんと身体が追いつかなくなり、ミスを連発していく。ミスというよりは、銃口を向けたときにはそのスフィアの灯りは消えている、つまり目で追えても身体が追いきれていないというべきか。
 頭では反応できていても身体が言うことを聞かない。瞬発力を養う訓練ではよく聞く話だ―――もっとも、自分はそんなまじめな訓練はしたことはないのだが。

「がんばるねぇ」
『貴方もあれくらいやれれば、今頃ここにはいなかったかもしれませんね』
「や、それはないだろ」

 彼女の爪の垢を煎じて貴方に飲ませてあげたいくらいです。

 の返答をあっさりスルーしてそんなことをのたまうアストライアをさらにスルーして、必死に訓練にいそしむ彼女―――ティアナを見やる。
 大量の汗は地面をぬらし、疲れているだろうにそれを感じないほどに激しく動き回っている。
 そんなにがんばってどうするやら。
 彼女を否定するつもりは毛の先ほどもない。ヘタなことを口にして色々こじれたら面倒この上ないからだ。
 今の状況を見るに、不用意な一言は鬼門であったから。

「あせってるねえ…………まあがんばるのは良いことだけどさ。さ、アストライア、帰ろう」
『声、かけていかなくてよいのですか?』
「いらんいらん。こんなに近くにいて反応なしってことは、邪魔だから声かけんなってことだろうし。ってか、早く帰って寝たい」

 そうですか、というアストライアの返答もそこそこに、は何も言わずその場を離れ隊舎へと足を踏み入れたのだった。

「あ、くん遅かったね。隊長陣はこれから緊急会議だよー」
「え」

 入り口を偶然通りかかった制服姿のなのはの一言に、は思わず膝つき項垂れた。


 ●


「まずは、これを見てほしいんだ」

 フェイトの声と同時に暗い会議室に浮かび上がるモニター。即興のプレゼン用スクリーンと言ったところか。お世辞にも大きいとは言えないが、それでも会議室にいるメンバー全員にはっきり見えるほどの大きさのスクリーン。そのど真ん中に映っているのは、ガジェットであろう機械に埋め込まれた青い石。
 その石を視界に納め、驚きの声を上げたのはなのはだった。
 それもそのはず。
 この青い石は、彼女とフェイトの出会いの象徴。
 かつて2人がこの石――ジュエルシードを巡って幾度となくぶつかり合った。母の愛が歪み歪んで、その結末をもまた体験した1人であった。彼もまた、最後の最後で飛び入り参加しフェイトの母に当たる人物を死力で殴り飛ばした感触は、8年前の出来事であれ鮮明に残っていたりする。
 現在は本局で厳重に保管されているはずなのだが、そんな代物がなぜ、ガジェットの内部に搭載されているのか。

「ガジェットを作った人間が厳重なセキュリティを突破して、ジュエルシードを持ち出した、って考えるのが普通やね」
「でも、普通の人に管理局のセキュリティ、突破できるかなぁ?」
「一朝一夕じゃ無理や。情報管理部のスキルの高さは折り紙つき。そう簡単に手ぇ出せるとは思えんな」
「その人間が、普通じゃないとしたら?」

 フェイトの一言に、言葉を交わしていたなのはとはやては口をつぐむ。
 彼女の視線がまっすぐ、否定したはやてに向かっていたからだ。
 はやてに向けていた視線を眼下へと戻し、コンソールに指を当ててスクリーンの矢印をスクリーンの右上、金色のレリーフを拡大した。

「ジェイル・スカリエッティ。ロストロギア関連を含め、数多くの事件で広域指名手配されてる次元犯罪者」

 モニターに映し出されたのは、1人の青年。

「この人か……」

 はやての納得交じりの声。
 映し出された青年は、ジェイル・スカリエッティ本人であった。
 生命操作や生体改造、精密機械に深く精通する違法研究者で、数々の事件で起こしているにもかかわらずその存在は謎に包まれている。
 当然、はやても彼のことを知らない。知っているのは、高い技術の持ち主であり犯罪者でなければ間違いなく歴史に残るほどの天才であるということだけ。
 それほどに高い評価を得ている彼であれば、管理局のセキュリティを突破するなどいとも容易いことなのだろう。

「わざわざ自分の名前を刻んでいるのは?」
「本人だったら挑発、他人だとしたらミスリード狙いだと思う。ちょっと事情があって、何年か前から彼のことを追っているから、みんなより彼のことを知ってるつもりだよ」
「確かに、それほどの人物ならロストロギア技術を使ってガジェットを製作できるのも納得できるし、レリックを集めている“理由”も想像がつくなぁ」
「彼は自己顕示欲が強い。事件の中で自分から通信をよこしてきたこともあったから、製作者としての矜持もあるんだと思う」

 コレを作ったのは自分であることを、相手に知らしめるために。
 その気になれば、もっととんでもないこともできるんだという、相手への警告。
 それらの意味を含めての刻名であろう。

「ともかく、今回の事件の首謀者がわかっただけでも十分な収穫や。ありがとうな、フェイトちゃん」
「いや……」

 と、フェイトはテーブルの端で動きを見せないに目を向ける。
 彼は椅子にどっかと腰掛けたまま、腕を組んでうつむいていた。
 肩は上下に動いているから息はしているようだが、微動だにしないのでは話にならないというもの。

「寝てるんやないの?」
「……………………………マタ?」
「なのは、おちついてなのはおちついて」

 ちゃき、と構えたのはレイジングハート。

「起きてるよ。ちゃんと話も聞いてた」

 そんなとき、うつむいたから声が響いた。
 話すタイミングをうかがっていて、気づいたら何事もなかったかのように会議を終わろうとしていたから、自分に話が振られるのを待っていたというのが真実だった。

『空気嫁、です』
「オイ」

 アストライアの辛口コメントに突っ込んでみるが、周囲の目があるのでほどほどに留めておく。
 小さく息を吐き出すと、同僚を見回す。はやて、なのは、フェイト。自分と立場を同じくする隊長陣。基本的に頭の良い彼女たちなら、気づくと思っていたのだが。
 ある意味、面倒くさがってやるべきことを人に押し付けて成り立たせていた性格だからこそ、現状を客観的に見れているのかもしれないが。
 そもそも彼女たちとは見ている視点が違っていたことに気づいたのは、割と最初のことだったりする。

「そのすかりえってぃとやらを追うのはいいと思うけどさ。もっと内側にも目を向けてみない?」
「内側……?」
「どういうことや?」

 首をかしげる彼女たち。意識がスカリエッティとジュエルシードに向いている証拠だ。
 だからこそ、彼は新たな命題を提示する。

「彼を追いかけるだけで済むのかね」

 彼が感じた疑問。
 それは。

「あのたくさんのガジェットたちの制作費用はどこから? ロストロギアの技術を使うにしてもそれなりの資金が必要なはずだよ……その金は、どこから来た?」
「「「………………」」」
「彼のバックには、いわゆるスポンサーってのがいるんでない?」

 それだけではなく、もう1つ。

「彼の風貌からして、間違いなく戦闘タイプじゃないよね……だとすると、実行班がいるってことだし、その実行班を手引きした人間もいるかもしれないよ」

 立場も白衣姿から見ても、現場で動く人間とはとてもいえない風貌。仮に動ける能力を持っていたとしても、彼は間違いなく自分から行動するタイプではなく、“駒”を使って事を成すタイプだろう。
 先入観でしかないが、スカリエッティの姿を見れば誰でも同じように考えるだろうけど、この場でそれを思ったのはだけだったらしい。

「ま、ガジェットみたいな無駄に高性能な機械をあんなにたくさん作り出せるほどの資金を持つ人……というか組織かね。ミッドチルダでそんな組織といえば、管理局くらいのモンでしょ」

 だからこそ、彼は内側にも目を向けてみるべきだと言った。
 正直、彼は知らない。管理局の裏側のことなど。管理局内に潜む闇のことなど。正直、理解などしたくもない。

 面倒だし。

「つまりくんは、局内にスカリエッティと通じている人間がいると?」
「さあ?」
「さあ、って……」

 当然、ただの憶測でしかない。
 あくまで『かもしれない』だけなのだ。だから、断言などできるわけもない。断言したところで、それが正解であるとも限らない。は苦笑してみせた。

「ただの当てずっぽうだよ。8割くらい信じなくていいから」
「8割て」
「ま、細かいことは俺はわからないからね。そのあたりの判断は任せるよ……ね、部隊長どの?」

 結局のところ、そのあたりのことは全部、時間が解決してくれるだろうし。


くんて、たま〜に唐突に核心突くよね」
「そやね……鋭いのか、あたしらと考え方が違うのか、いまいち理解できんわ」
「そ、それがのいいところ…………だと、思うよ?」
「………」

 彼女たちの失礼な物言いにため息。

「ま、別にいーけどさ」





第12話。
軽くアンチ管理局テイストにしてみました。
やる気ないのにちゃんと会議に参加してるあたり、なのはに見つかった時点で
あきらめているのでしょう。
逃げ場などないと。


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