時空管理局のお膝元―――首都クラナガン。
 リンディとレティは久しぶりに面を合わせて、チリ1つない廊下を歩いていた。
 2人の表情には一仕事終わったとの爽快感がある。足取りも軽く、靴音のリズムは軽快。大きな事件を1つこなすことができたのだ。胸にのしかかっていた重たい何かが取り払われて、自然と足取り軽くなってしまうのはむしろ必然といったところだろうか。

「そう……うん、わかった。報告ありがとう」

 今日は家でゆっくり休んでね、という言葉を最後に、リンディは耳に当てていた電話を切った。
 電話の相手はフェイト。
 闇の書の管制プログラムの消滅を確認したという、ちょっとした報告の電話に応じていたのだ。

 このたった1ヶ月の間に、色々なことがあった。
 特に、なのはやフェイトたち現場の人間にとっては。自分たちにはまだ理解の難しい気持ちをひたすら持って、真っ直ぐまっすぐ進み続けた人たちを相手に、一歩も退かない戦いを。時には危険なこともあった。つらくて苦しいこともあった。それでも、彼女たちもひたすら前に進み続けた。
 気を張って、神経ばかり尖らせて、ようやく一息ついたときには、すべてが終わっていた。それほどに、長くて短い1ヶ月だったと、アースラに乗り合わせた皆が声を揃えて言うだろう。
 終わってみれば、重軽傷多数いたものの死者はゼロ。第一級捜索指定遺失物―――ロストロギアの絡んだ事件ではおそらく異例……いや、奇跡といっても差し支えないだろう。

「グレアム提督の件は、提督の希望辞職ってことで手打ちみたいね」

 その奇跡の影には、老いた魔導師の姿があった。11年前に彼が『あの事件』に遭遇しなかったら、おそらく今のような形で終わることはできなかっただろう。
 独自に動いて、資料の隅から隅まで調べ上げて、ようやく訪れた1度きりのチャンス。この時にかけて、彼とその使い魔たちは動いてきた。積み上げてきた年月を結果として形には残すことは叶わなかったが、最終的には彼の望んだ形に納まった。それはきっと、『あの時』から11年過ぎた先に据えられた1つの必然なのだろう。
 11年という月日は、人が老いるには十分な時間。この時にすべてを賭けてきた彼にとって、希望辞職という決断こそ、彼に残されたたった1つの道しるべ。

「故郷に帰るそうよ」

 後に残されているのは、自身の使命を全うした彼の穏やかで平和な隠居暮らしだ。
 心残りはなく後腐れもなく、自分に課されたすべてをやり遂げた男の背中は、後の人生を生きる力となるだろう。

「まぁ、具体的なのはクラッキングと操作妨害くらいだし……実際、そのくらいよね」

 むしろ問題なのは、今回の事件の当事者である少女と。

「……これから、どうなるのかしらね?」
「さあ。すべてはお上の決定次第、って所かしらね、きっと」
「私たちもできる限りのことはしたけれど……大丈夫かしら、くん」

 立場の上では敵だった相手に情報を横流して、さらに協力すらしているという背信行為を行ってしまった、1人の少年のこと。

「あの子なら大丈夫よ。年の割りに、世渡り上手だもの」
「あのねえレティ……世渡りとか、そういう問題じゃないと思うけど?」
「リンディ、貴女はむしろ心配しすぎなの。……いい? あの子は身寄りもいないし、今だってクラナガンで1人暮らし。面倒だ面倒だと言いながらも命じた仕事はきちんとこなすし、戦闘力はお墨付きよ。しかも距離を選ばないオールラウンダーだし、魔力資質は汎用性の高い『風』……これだけのカードが揃ってて、上の連中が手放すわけがないわ」

 よく言えば必要とされている。悪く言えば体のいい道具。おそらく、今回は後者を理由にして、せいぜい長期謹慎どまりといったところだろう。クビとかは、普通にありえない話だ。
 そんなレティの物言いに、眉間にしわを寄せるリンディ。彼女もまた同じ事を考えて、少年の扱いが『人』としてのそれではないことに……いや、その事実を少しでも考えてしまった自分に腹を立てる。
 確かに大人びていて、自分の考えをしっかり持っている。大人の精神とさほど変わらない心の持ち主だ。しかし、彼はまだ、年端も行かない子供なのだ。能力さえあれば子供ですら入局できるこの組織に、思わず嫌悪感すら懐いてしまう。

「深く考え込んじゃダメ。そんなコトしてたら、不満だらけで頭パンクしちゃうわよ」

 そんなレティの言葉に、リンディは苦笑しつつ浮かんでは消える不満もろもろを思考の外へと吹き飛ばしたのだった。



   
魔法少女リリカルなのはRe:A's   #49



 どんな茶番だこれは。

 そんな言葉がよく似合う、裁判とも言えないような裁判が始まった。雰囲気こそ厳かであるものの、聞かれる内容はほとんど雑談のようなもの。後に『闇の書事件』と称されるようになる今回の事件のことについて少なからず触れてくるものの深くまで入り込んでこないような、裁判というよりはむしろどこぞの視聴者参加型テレビ番組だった。望んでもいないのに参加させられて、ただ見世物にされているサルの気分とはきっと、こんな感じなんだろなーとか考えながら、裁判長の問いに淡々と答えていく。
 それはもはや、レティの思惑通りだった。
 ただ力を持っているバカな子供だから、体のいい道具として操れると。
 それを考えている人間ばかりではないのだろうが、この場にいる連中は皆、から見れば『腐った大人たち』だった。

「…………今回の一件で、君は何を考えて内通行為を行った?」

 言うまでもなく、な大人もいるわけだが。
 というか、まともな質問に嬉しく感じてしまってはきっと、ダメなんだとは思う。

「俺はただ、自分と同じ体験をさせたくなかったんです」

 まともな大人には、まともな返答を返す。今回、初めて名ばかりの裁判を受けて得た教訓だった。
 まだ10を超えたばかりの子供がたった1人で生活して、管理局で生計を立てているという、現実離れした寂しい生活を遅らせないためにも。それが『家族』である彼女たちの笑顔になるならと。

「生まれてこの方、家族というものをよく知りません。必要を感じなかったし、欲しいとも思わなかった。でも、今回の事件でいろいろとわかったことがあります」
「……それは?」

 返された問いに、は一度、大きく息を吐き出した。
 今は目の前にいる彼とだけ話をしているのだと。聞こえてくるなんか無視だムシムシ、とあえて自分に言い聞かせる。
 ゆっくりと瞼を開けて、男性の目をじっと見つめる。

「人の本当の心を……他人を大切だと思う、『好き』という気持ちを。そして、自分自身の……本当の望みを」

 それは、この事件を通して知った、とてもとても大切なこと。
 知らなければならないことで、すごくすごく大事で、絶対に忘れてはならない気持ち、望み。

「そうか……」

 それを聞いた男性は、数度小さくうなずくとメモのようなものにペンを走らせた。働き盛りといった様相の寡黙そうな男性だった。
 その男性は、地上事件において慢性的な人員不足に悩まされている武装隊の隊長という立場にいた。は後に、この男性と深く関わっていくことになるが、それはまた別の話。

「判決を言い渡す!!」

 木製のハンマーを打ち鳴らし、裁判長は声も高らかに。

「……時空管理局員嘱託・に1年間の謹慎、ならびに魔法行使の禁止と謹慎後の任務従事を言い渡す!!」

 判決を下した。
 しかし。

「あの、さいばんちょーさん」
「なんだ?」

 せっかくだから、1年なんて言わずもっともっともっともっとをぶんどってやろうなんて、とんでもないことを考えてしまった。
 なにかを企んでいるような、それでいて楽しげなの小さな笑みに、裁判長を初めとした彼らは気付かない。察することができたのはおそらく、彼にまともな質問を投げた男性くらいだろう。ちらりとその男性を視界に納めて、彼が含み笑っているのを認めて、裁判長へと向き直ると。

「あの、本当に1年間だけでいいんですか?」
「……は?」

 仕事の始まりだ、と言わんばかりに口を開いた。

「だって、敵に内通していたんですよ? これって、大きな組織にとっては結構重罪だと思うんですけど」
「む……」
「裏切り者には、それ相応の罰が必要じゃありませんか?」
「むむ、確かに……」
「それに俺、正直言うと今までの任務、全部1人でやってたんですよ」

 そう、彼はずっと1人で動いていた。組織だって動くときも、上からの命令を受けて動くときも。
 命令なんか無視して勝手に動いて結局、それが全部任務達成につながった。
 そんな自分勝手な人間を、たった1年間の謹慎だけで済ませるのか、と。
 簡単に言えば、はそれが言いたいわけで。

「そんな自分勝手な人間が何をしでかすか、わかったモンじゃないでしょう?」
「……お前、自分で言ってて悲しくないか、それ?」

 裁判長が見せる哀れなものを見ているかのような視線を受けつつ、かかった、と内心でほくそ笑む。
 もちろん、自分から刑の引き伸ばしをしようとしている目の前の光景に驚き、ざわめている。
 話になかった、と言わんばかりのどよめきだ。

「……まぁ、悲しいかどうかはどうでもいいです。要は、そんな危険な人間をたった1年の謹慎処分に留めておくつもりですか、と言いたい訳で」
「…………むむ」

 裁判長は数瞬、考える仕草を見せる。
 の言い分はもっともで、しかし『罪人』からの進言にそこはかとなく怪しさを感じながら、うなる。
 周囲のどよめきが、その激しさを増す。
 タイミングを見計らってか、は先ほどの男性へと視線を向ける。男性は、まるで申し合わせたかのように、ばんっ、と机を叩いて立ち上がる。

「裁判長、この子供は危険です。今回の行為を反省させるには、1年の謹慎だけじゃ足りないでしょう」
「……しかし」
「裁判長は、コレがまた同じことをしでかすのではないかとお考えにはなりませんか? ……もう1年、期間の延長を」

 この言葉で、裁判長はついに。

「……謹慎、2年とする」

 陥落した。
 内心で高笑いしながら、さらには裁判長に追い討ちをかけるように。

「あの、もう1つ」
「まだあるのか!?」

 完全に、一回りも二回りも年上の裁判長を手玉に取っていた。
 このあとさらに、魔法行使禁止の命令を解除させるに至ったが、

 2年間ずっと魔法使わないで、いざ復職というときに腕が鈍ってて使い物にならなかったら困るでしょ。

 なんてひどくもっともらしい理由を付けて、裁判長は最終的に言い負かされた。
 とりあえず、その過程がひどく鮮やかだったことだけ記しておくこととする。
 きっとあの裁判長は、この先数年はあの場所に座ることをためらうだろうとは思うわけで。



 裁判は、どよめきも収まらないまま終わりを告げた。
 結局、に課せられた刑は謹慎2年と謹慎後の任務従事のみ。自分が望む形で、裁判を進行させるという偉業を成し遂げた。もっとも、魔法行使には大きく制限がついてしまったが。
 魔法行使の禁止については、言うまでもなく相棒であるアストライアにそばにいて欲しかったから。
 そしてなにより、今の状態に落ち着くことができたのもひとえに、リンディ・ハラオウンとレティ・ロウランという『提督』という立場にに籍を置く2人からの発された事前の口ぞえがあったからこそ。

「やー、上手くいったぜ……へっへ〜、休暇2年だよアストライア」

 まったく、提督様々である。

『……あなたの自堕落ぶりを改めて実感しました』
「もーアストライアったら、素直じゃないんだから☆」

 もはや、出す口もないらしい。アストライアはその後言葉を発することはなかった。
 束縛から開放されて、は1人、久しぶりの自宅への帰路につくべく出口への廊下を歩いている。
 周囲に人はいない。いやいやながら付き添ってくれたクロノも、今はもういない。自分を送り届けたあと、今回の一件の残務に就いたのだろう。報告書やらなにやら、執務官という立場は大変だ。

「とりあえず、リンディ提督に報告に行こうか。あとレティ提督にもね」
『…………知りません』

 と、満面の笑顔を貼り付けて闊歩していたときだった。


「?」

 突然かけられたトーンの低い声に、振り向いた。
 その先に立っていたのは、先の裁判での悪だくみに乗って口添えた男性だった。
 近くで見るとわかる、の数倍もある大きな体躯。真っ直ぐ自分を見下ろす鋭い視線。とても、先ほど自分の言葉に悪ノリした男性と同一人物とは思えなかったが。

「……とりあえず最初に、1つだけ言っておく」

 トーンの割りに軽い話し方に、拍子抜けた。

「お前、いらんことに頑張りすぎだ」

 先の、どれだけ休みを引き伸ばせるかをまるで競っているかのような軽快なトークに呆れ、1年から2年まで謹慎が伸びたにもかかわらず満足せず、魔法行使の禁止すら撤廃し制限させるだけという形に押し留められたというその頭の無駄な回転の早さにため息。
 管理局の制服に身を包んだ男性は、不名誉な偉業を達成した本人を前にして大きくため息を吐き出した。

「あの、そんなにため息ついてると幸せが逃げるって昔誰かに聞きましたよ?」
「……裁判が終わっても、そんなノリかお前は」

 びし、と軽く飛んでくる手刀。それを甘んじて受けつつ、ばつが悪げに空笑いしてみせる。
 今回のような厳正な裁判でさえチャンスだと思って、謹慎という名前の休暇を引き伸ばす。考え方は変わっても、根っから面倒くさがりなところは何も変わっていなかった。

「まあ、それはいい。少し、お前に話がある」
「?」

 こっちへ来い、と連れられたのは、武装隊の地上本部だった。
 他の武装局員は皆出払っているのか、姿はない。
 男性は会議用のイスにどっかと座ると、にも座るように促すと。

「単刀直入に聞く。謹慎が終わったら、ウチの隊に来る気はないか?」
「…………は?」

 まだ謹慎にすら入っていないにも関わらず、そんな言葉を切り出した。
 聞けば、彼の所属する首都防衛隊は慢性的な人員・戦力不足に悩まされているとか。自身がSクラスオーバーでストライカークラスの魔導師であったとしても、やはり1人では頻発する地上事件に対応しきれない。
 そこで必要になってくるのが、やはり力のある若い人材。その大半が航空武装隊に持っていかれて、とにかく困り果てているのだと彼は言った。それで、なぜそこにが登場するかというと。

「いや、言い直そう………………お前は絶対に、ウチに欲しい」

 彼が、という1人の人間を気に入ってしまったからだった。
 裁判という厳正な場でも(平然と自分がいかに楽をするかを考えて)臆することなく発言し、しかも過去の功績を調べてもその達成率は極めて高い。失敗はほぼゼロと言っても過言ではないくらいに。
 そんな人材を、航空武装隊の連中が放っておくわけはない。それはもちろん、人員不足の首都防衛隊のいち隊長も同じこと。精鋭ぞろいの航空武装隊の連中を相手に必要な人材を手中に納めるには、先手を打つ必要があったのだ。
 多少クセがあったところで気になどしてはいられないし、何より。

「お前の経歴を事前に調べさせてもらったが、今日の裁判での発言を聞いて確信したよ」

 彼は心底、という人間を、自分の隊に必要な人材だと認めてしまった。

……お前の力を、俺に預けて欲しい」

 少年の判断がどのようなものとなるのか。
 それを決めるのは、すぐ先の話である。



君!」
「り、リンディ提督」

 建物から外に出た彼に声をかけたのは、レティと別れたリンディだった。足音高く駆け寄ってくる彼女の姿に、は驚きと共に目を丸めていた。いかにも心配してました、な表情で整った眉をハの字に自分を見る彼女はただ、その言葉どおり彼を心配していたのだ。
 年端も行かない子供でありながら、その内側に有する確かな力に完全に頼り切ってしまっていたから。
 子供だからこそ、その考えがいかに大人びていようともその曖昧な思考を完全に失念してしまっていた。

「……どうだった?」
「あー……」

 数瞬の沈黙から放たれたのは、が受けた裁判のいきさつ。
 有望な少年の将来を思い、しかし己の立場と責任から苦渋を飲み込んで、彼女は彼の裁判を要請した。彼の未来を闇の中へ送りたいわけではない。彼が心から嫌いなわけでもない。ただ、自分の立場を優先してしまっただけの話。ありのままを報告しろと言われて、そうしてしまっただけ。

 もっとも、それがまさかあのような形でひっくり返ってしまうとは思いもしなかったわけで。

「まぁ、すこし長い休みをもらいましたよ」
「!? ……それは、どのくらいなの?」

 表情が翳る。

「とりあえず、2年くらいです」

 落ち込んでいるのは明らかだった。
 少年の未来より自分の立場を優先してしまった自分自身に自己嫌悪する。言うまでもなく、そんな彼女を諌めるのは目の前にいるの役目。

 ……まったく、なんで俺がいい歳の大人を慰めにゃあならんのか。

 なんて思いつつも、

「……まあ、半分は俺のワガママなんですがね?」
「………………は?」
「や。だから、2年のうちの半分は自分から」

 リンディ硬直。

「やー、2年も長期休暇がもらえるとは思いませんでしたよ♪ 管理局ってのは気前がいいですなぁ〜」
「…………」

 かんらかんらと笑うをぽけ、と見下ろすリンディ。
 無理もない。なにせ、悪いことばかりを押し付けたはずの彼が、満面の笑みを称えて刑そのものを喜んでいるのだから。……しかも、謹慎と休暇を完全に混同して認識して。
 1人シリアスぶった彼女が滑稽に見えてしまうほどに、その笑顔はさわやかで。

「……あー、それじゃなにかしら。私、1人で考えすぎ?」
「しかも、ちょーっと揺さぶったらそりゃもう! 何でもかんでも俺の話聞いちゃって、魔法の使用も禁止から制限に止まりましたよあははは思い出したらおかしくなってきた!」
「し、心配は要らなかったみたいねえ」

 よかったわ、ととりあえずリンディは言うと、小さくため息をついた。
 ……まったく。やはり、局の人間についてはレティには敵わないらしい。

「あっはっはー。大人をからかうのって楽しいですよね〜」

 …………

 将来、彼がひねた大人にならないことだけを切に願ったリンディだった。

「まぁ、色々とありましたけど。とりあえず2年っていう時間をもらいました。合法的に」
『合法じゃないです。これはあなたの姦計ですよ、マスター』

 アストライアの突っ込みは、あえて無視。
 話をまとめようとしていただけに、はばつが悪そうにツンツン髪をかき乱し、ちいさく息を吐き出した。

 彼は今回の事件で、1つの答えを見つけた。
 それは彼ですら知りえなかった無意識の願い。
 平々凡々な生活を送るという、誰でも持っているような当たり前のもので取りとめもない願いではあったが、しかしそれは間違いなく彼の見出した1つの答えなのだ。

「とりあえず、2年間は普通に……子供らしく学校に行こうと思います」

 魔法が使えなくなったじゃない。ただ、厳しく制限することを言い渡されただけ。
 2年という長い休暇だ。利用しない手はないというもの。幸いにも資金はある。今までの仕事の中で稼いできたものをすべて、自分の願いの成就に当てようじゃないか。
 そうと決まれば話は早い。

「俺、海鳴に引っ越すんでよろしく!」
「……」
「さあ忙しくなってきた……っていうか、今の家はあのままでもいいかなぁ」

 どう思います?

 まったく、今まで気にしていた自分がバカみたいだ。
 彼は最初に言っていた通り、今の状況と立場を何もかも受け入れて、笑っていた。
 いや、単に開き直ってるだけかもしれないが。

 リンディは頭の隅に残ったいろんなものをため息と一緒に吐き出して、

「あのねぇ君。あなたが今まで稼いできたお金だけで、2年間も暮らせると思ってるの?」
「へ? 無理なんですか?」
「今までは仕事があったから良かったかもしれないですが、これから2年間は収入がこれっぽっちもないの。『金は天下のまわりもの』って言って、生活してるとあっというまに消えてっちゃうのよ?」
「ま、まじっすか……貯金、どんくらいあったかなあ」

 今までこもってた全部を吹き飛ばして。
 2人はとりあえず、アースラへの道を歩く。とりあえず今しばらくは、あの船が彼の家だから。

 みんなが待ってるあの場所へ。


「あ゛〜っ! 面倒だなこんちくしょーっ!」





すいませんでした(orz。
まぁその、これでいいってことにしておいてください。正直、私にはここが限界でございます。
私の低脳では、これ以上難しい言葉は出てきませんので(汗。
あとは、彼の今後について、少しばかり複線を。誰かは、StrikerSを見ていた方ならば
お分かりでしょう。

…はい、あの人です。


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