「私が暗黒騎士ロベリア…細いのが凶刃シェザルで、でかいのが悪逆のムドウ。そして、大召喚士オルドレイク…イムニティはもうご存知ね?」
「さしずめ、破滅の救世主候補ってところだな」

 ムドウがロベリアの言葉に付け加えるように、そう口にする。
 破滅に属する救世主候補。
 召喚器を所持しているわけではないが、強さは折り紙つき。
 それは、実際にイムニティと戦ったが一番良く知っていた。

「冗談言わないで! 救世主候補はあたしたちだけよ! 勝手に救世主候補を名乗らないで!」
「…あなたたちはなに?」

 唐突な問い。
 なんの脈絡もなく口にされたその言葉に、問われたリリィは口篭もっていた。

「この世で救世主になれるのはただ1人だけ。ならば『その他大勢』である救世主になれなかったあなたたちの役は何だと思う?」

 救世主になれなかった者たち。
 それは、救世主クラスの中に間違いなく存在するのだ。
 救世主が真に覚醒したとき、残されたメンバーは自動的に『その他大勢』になる。

 彼らの役目は、救世主を助け、来るべき新しい世界を作る助け手となること。
 赤の書の精霊であるリコが知っていた。
 自分の主として契約を結び、救世主として導いていたからこそ。
 残りのメンバーがどうなるのかはよく知っていた。

「では、世界が白と赤の二通りの理で出来ているのなら、その理を補助する者も白と赤、二通りあると考えるのが妥当ではなくて?」

 正論だった。

 こちらに赤の精霊であるリコがいる。
 反対に、破滅には白の精霊イムニティがいる。
 ということは、イムニティが主と認めた『白の主』がいて、彼らはそれを助ける存在だと。
 こちらに救世主クラスがあるように、彼らもそれは同じなのだ。

「デタラメを……第一、救世主は私たち人間を助けるための存在なのよ! お前たち破滅やモンスターなどと手を組むはずないじゃない!」
「貴女は救世主になったことがあって?」
「なっ!? そんなのある訳が……」
「無いのなら、どうして救世主が人間の為だけにある存在と言えるの?」

 そんなロベリアの問いに、リリィは押し黙ってしまっていた。

「救世主は……人間の側ではなく、破滅の側に立つこと。これも、考えられる。……貴様ならわかるだろう、
『!?』

 丸めがねの男性――オルドレイクは、蔑むような笑みを共にを見やった。

「どういう…ことだ?」
「あの男、オルドレイクが……ゼロの遺跡で俺が倒した召喚獣たちを喚んだ張本人。そして……」

 は赤黒い瞳を動かし、オルドレイクに焦点を合わせる。
 その奥には激情が走っている。

 ……倒したはずの人間が生きている。なら、また倒せばいい!!

「俺のいた世界、リィンバウムを混乱に陥れようとした組織のアタマだったんだ」



Duel Savior -Outsider-     Act.52



「なぜ、お前がここにいる?」
「知らん。強いて言えば、白の書に呼ばれたのだろうな。その際、身体をも若返ってしまったようだがな」

 異形と化した青年に潰される寸前。
 彼は白の書によってアヴァターに召喚されていたのだ。
 呼び声を聞いたわけでもなく、本を手にしたわけでもなく。
 ただ、強制的に喚び出されたのだ。
 その反動でか、今の彼は島での戦いの時の彼の姿と酷似している。
 つまり、若返ってしまったのだ。

「リィンバウムに存在していた我はもう死んだ。ここにいる我は…一介の召喚士にすぎん」
「その一介の召喚士が、サモナイト石もなしになぜリィンバウムの召喚獣を喚べる?」
「ふん、簡単なことだ」

 そう口にすると、オルドレイクは白いサモナイト石を懐から取り出した。
 乳白色のサモナイト石。『名もなき世界』に干渉する石だ。

「この石に『無限召喚陣』を刻んだのだ。さすれば…サモナイト石を大量に呼び出すことなどたやすい」

 我が頭脳を持ちてすれば、造作も無いことだ。

 そう口にして、くくく、と含み笑った。
 『無限召喚陣』とは本来、異世界からモンスターを際限なく召喚するもの。
 それを流用し、召喚術用に陣を刻んだのだ。
 コレによって、リィンバウムから各種サモナイト石を強制的に喚び出し召喚術を用いる。

 いくらでも喚び出せるということはつまり、暴走召喚によってサモナイト石を失っても、召喚しなおせば元が取れるというわけで。

「……厄介な」

 舌打つ。
 実際、彼は自分の魔力が続く限り際限なく召喚術を…ひいては暴走召喚を行使できるというわけで。
 相手が5人いる上に足場の悪いこの場所では、都合が悪いことこの上なかった。

「と、とにかく…あの男も敵! そうでしょ、!?」
「あ、あぁ……」

 つまりは、そういうことだ。
 リリィはがうなずくのを確認すると、再び5人をにらみつけた。

「…余談がすぎたわね。さて今、真に救世主たるべき資質を持つ方は、現在最も白の主にふさわしい方でもあります」
「その方が、己の使命を自覚されれば、貴様らなど一瞬にしてこの地上から消し去ってくれよう」
「だから、それまでテメェらとは俺たちが遊んでやるよ」

 嬉しそうに、ムドウは最後にそう告げた。
 つまり、赤と白のそれぞれの救世主候補の力比べ、ということだ。

「……上等だ」
「どちらがより救世主の側近としてふさわしいか、試してみましょうか」

 全員が、武器を取り出した。
 幸いにも、頭数だけなら有利だ。
 しかし、先刻の術を展開されてはひとたまりも無い。
 だから……

、まだいけるな?」
「……ああ、もちろんだ」

 構成は2チーム。
 大河とリリィと未亜とベリオでAチーム。
 リコとカエデとナナシとでBチーム。
 そんなチーム分けを即興で作り上げて、それぞれロベリアとシェザル、ムドウとイムニティとオルドレイクを相手にすることに決まった。

 この場に白の主がいないことが唯一の救いだ。
 オルドレイクの召喚術は発動前に止めさえすればいいだけのこと。
 つまり、そこを押さえてしまえば、不確定要素がない限りは負けはない。

「よおぉし、奴等が事実上破滅の軍の中枢のはずだ、一気に叩いてこの戦争を終わらせようぜ!」

 大河が気合を込めて全員を促す。
 その様子に全員がうなずき、笑みを見せたのだった。










短ッ!!!
ゲーム中の第9話にあたるわけですが、破滅の将5人衆の紹介編ですね。
まぁ、オルはゲームにはもちろん出てきませんので、本来は4人なわけですが。


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