「それでは! 納涼・肝だめし大会・・・はじめま〜すっ!!」


『お゛おお゛ぉぉぉ゛ぉぉ゛ぉっ!!!』



 というわけで、始まりました。
 ご近所同士である2校の親睦を深める肝だめし大会!
 実況は私、新堂勇人がお送りしまーす! 拍手ーっ!!


 …………


 えー、ごほん。気を取り直しまして、場所はこちら。やっぱりご近所にある県下有数の超広大な墓ーーー地!!
 巷では『墓地迷宮』なんてシャレた名前がつけられるほどに広ーい墓地だ!

 さて、ここでこの墓地について簡単に説明しておこーう!
 この墓地は先に述べたとおり『墓地迷宮』の名にふさわしいほどにとにかく広い!
 初めて来た人は必ず迷う上に、夜中は幽霊が漂っているらしいぞ!
 イェーイッ!!







 …………








「ハヤトのヤツ、妙に嬉しそうだな?」
「まぁ、滅多にない親睦会ですし。なんだかんだいっても、彼はこういったイベントが好きですからね」

 妙にハイテンションなハヤトを見て、アヤとは思わず苦笑。
 話に上がっていたハヤトは十数人の男女の前で、筒状にした紙をマイク代わりに嬉々として説明を施していた。
 親睦会とはいっても、至ってシンプルなもので。
 両校の生徒会が厳正かつ公平な審議によって決められたメンバーで、こうして参加させられているのだ。
 生徒会役員はもちろんのこと、さらにランダムに選ばれた各学年各クラスの代表者で構成され、押し付けられたにもかかわらずこうして全員が出席しているのを見ると、生徒会の能力がいかに高いかが理解できた。






 きもだめし。 −前編−






「それじゃ、ルールを説明するぜ!」

 敷地内に隠された白いろうそくを持って、さらにどこかに設置されているチョー極太ろうそくの火で白いろうそくに火を灯す。さらに各ペアごとに配布する提灯に入れて戻ってくる!
 もちろん地図は渡すから心配ナッスィングだぜ!!
 そして! ペアはもちろん男女1人ずつが大原則! 例外は認めないぜ!!
 フゥーッ!! ロマンだぜ!!



 …………



「何がそんなに嬉しいやら」
「新堂くん、1年の時からバスケずくしですから。その辺りが関係しているんじゃないですか?」

 嬉しそうに声を張り上げるハヤトとは対照的に、は冷め切っていた。
 本当なら彼は今晩、『全日本裏剣道選手権』なる番組を鑑賞するはずだったのだ。
 ちなみに、『裏剣道』とは名前のとおり、公には決して表れない競技だ。
 武器が竹刀であることだけを条件に、あとは何をしてもOKという、危険度折り紙つきの裏武道である。
 父リクトが出場するので、1時間も前からテレビの前で待っていたのだが。
 そこへトウヤが現れ、強引に連れ出されたのだ。

「……で、トウヤは?」
「深崎先パイなら、生徒会のみなさんと一緒におどかし役らしいですよ」
「あらエミちゃん、こんばんは」
「こんばんは樋口先パイ、先パイ♪」

 にっこりと笑う彼女は、1つ下の後輩のエミ。
 色恋沙汰に夢中の、いわゆる今時の女子高生だ。
 さらに情報収集が趣味なのだとか。

「ちなみに、橋本先パイもおどかし役に回ったそうです。人数あわせってヤツですね」

 ということで、ナツミもこの場にはいなかった。






「よっしゃ、説明も終わったところで、早速ペア決めするぜ!」
『おおおおぉぉぉっ!!』

 ハヤトの声に呼応し、男性陣が同調する。
 すごい気迫だ。
 せっかくの機会だから、これを機に女の子とお近づきになろう。
 これが彼らの魂胆である。

「ここに男女別に分けたボックスがある。1人ずつこの中から紙を取って、中の番号が同じヤツがペアだ!!」
『うおおぉぉぉっ!!』

 ハヤトの周囲に集まった男性陣は、大盛り上がりだ。
 まぁ、『男のロマン』だ。仕方ない。
 その中にはエミの幼馴染であるカツヤまで混じっているのだから、これまた驚きだ。

「カツヤまで一緒だし」
「私的にはぁ、あれに混じらない先パイがおかしいと思いますけどぉ?」
「…………」

 先パイも人気あるんですから、とエミは口にしていた。






 …………で。







「なんか、変わり映えしないのな」
としては僥倖だったんじゃないですか?」

 とアヤは互いの紙を見せて苦笑した。
 双方共に書かれていた番号は“1”。
 つまり、2人がトップバッターなのだ。
 目当ての男の子、女の子とペアになれたと喜ぶ人もいれば、逆にペアになれず悔しがる人と、表情は十人十色。

「トウヤとナツミがなにか企んでるのは間違いないだろうしな」
「でしょう?」

 は、ゾンビが大の苦手である。そりゃーもう、話を聞くだけで一目散に逃げてしまうほどに(お題『さ』参照)。
 今回、トウヤがおどかし役に回ったのは、その辺の意味合いが強いだろう。もちろん、そんな弱点など知られたくはないからして。
 幼馴染で気心知れたアヤがペアだったのはまさに渡りに船だったわけだ。

「さぁ、楽しい時間の始まりだぁ! トップバッター、キャモォォォンッ!!」


 ……


 すでにハヤトははっちゃけてしまっている。
 むしろ半分やけくそになっちゃいないだろうか。



「……行くか」
「ええ」



 とアヤは、はっちゃけすぎて悦に浸っている変人ハヤトのもとへ向かって歩き始めたのだった。




46音お題より、『ろ』でした。
肝だめしネタです。長くなりそうだったので、前後編に分けることにしました。


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