「ねぇ〜、オナカスイタ」
「・・・・・・」

 島を出て、帝都を抜けて早ひと月。
 とユエルは・・・


 迷っていた。


 見渡す限り、なにもない。
 草と木が茂っているだけだった。
 空には太陽が強い光でその下を歩く2人を照らしている。

「う〜ん・・・この辺にあると思うんだけど・・・」
「オナカスイタ、オナカスイタ、オナカスイタ・・・」

 背中をまげ、舌を口から出してユエルがつぶやく。
 そして、さきほどから恨めしい目でを見ていた。

 は、島で貰ったリィンバウムの地図を頼りに進んでいたのだが・・・

 「・・・北って結局、どっちなんだろう?」
 「・・・・・・・」


    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    プロローグ


 うーん、とうなって地図とにらめっこ。
 かなり細かい地図なのだが、出ていた記号はほとんど解読不能だった。

 この世界にきてから、文字だけは読めるようになっていたが、地図記号に関してはまったく教わっていなかったのだ。

 きょろきょろとまわりを見回す。
 まわりは、草と木。
 無情にも、風がの頬をなでた。





「こ、こっちに来ないでェ!!」
「「!?」」






 まだ幼い、トーンの高い声が突然聞こえた。

「ユエル、どっちだった?」
「あっち!」

 聴覚の鋭いユエルが声を聞きつけ、指をさす。
 とユエルは、急いでその方向へ走り始めた。





「グルルルル・・・」
「こ、こないでよぉ・・・」

 木を背中にして、少女がつぶやく。
 目の前には、はぐれ召喚獣。
 口からぽたぽたとよだれをたらし、今にも彼女に襲い掛かろうとしていた。



「あそこだ!!」

 は、はぐれ召喚獣を見据えて刀を抜いた。
 ユエルは、今までの旅で体力がほとんどなかったのか、へろへろしていた。

「ユエル、君はゆっくり来るんだ。あの召喚獣は俺がなんとかするから」
「うう・・・わかったよ〜・・・」

 は、走る速度を緩めるユエルを見てさらにスピードを上げた。



「っ!!」
「グルアァッ!?」

 はぐれ召喚獣の首元に蹴り入れ、横に吹き飛ばした。
 召喚獣は、首元を抑えてを視界にとらえるとゆっくりと近づき、飛び掛った。

「・・・あぶないッ!!」
「・・・っ!!」

 少女の声が響く。
 ははぐれ召喚獣の攻撃を後ろに下がることでかわした。

に・・・手を出すなぁっ!!」

 横から、ユエルが爪を振るう。
 腹部に傷を負い、血をにじませながら逃げていった。

「ふう・・・お疲れさん、ユエル」
「ううー・・・今ので余計に疲れたよぉ・・・」

 ユエルは、ゼェゼェと息を切らすユエルを見て、ニシシと笑うを恨めしい目で見つめていた。
 その視線に彼はゆっくりと彼女の頭に手を置くと、

「悪かったって。多分もうすぐ街に着くはずだから、ついたら・・・」
「あ、あの・・・」

 少女が、の言葉を遮る。
 そちらを向けば、彼女は長い金の髪を1つにしばり、うすい桃色の上着に白いスカートを着ていた。
 年は、10歳前後といったところだろうか。
 身体にそぐわない長い杖を持って、2人を見ていた。

「ああ、大丈夫かい?危ないとこだったね」
「いえ・・・ありがとうございます!」

 深く頭を下げる少女には手を横に振る。

「いいって。俺は 。こっちはユエルだ」
「ユエルだよっ!!」
「あ・・・ボクはイリス。イリス・アルフェルトです」

 互いに名乗りあって、その場に座る。
 はぐれ召喚獣に襲われていた理由を聞きたかったからだった。

 彼女は、すこしはにかんで事の顛末を話し始めた。








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