「ぁぁぁぁああああああっ!!」 それは、いつもの風景だった。 すずめも囀る朝っぱら。奇声を上げながらどすんばたんと家中を駆けずり回る音がした。 海鳴市のとある家庭の一風景。 今日もまた、慌しくその1日が始まった。 「、今日は早く帰ってこれるのか?」 「用事なしっ、約束なしっ、仕事なしっ! 今日の稽古もいつもどおりっすよね!?」 「うむ。おそらく俺の帰宅が遅くなる。お前は先にアップしておいてくれ」 「了解っす!!」 慌しく階段を駆け下りて、現れた少年は同居人の青年に元気のよい答えを返す。 そんな彼を見てか、青年は満足げに、見ほれんばかりの微笑を見せた。 彼の名は高町恭也。少年が居候している家庭の、自慢の息子……らしい。 大学3年。恋人あり。しかしほかの大学生と違うのは、その神がかったルックスの内側に見え隠れする鍛え上げられた肉体だった。 21という若さで御神流と呼ばれる剣術を修め、まだまだまだまだ未熟な弟子たちを相手にため息をつく毎日を送っていた。 「は朝から元気だねえ……私はもー眠くて眠くて、ふわぁ」 なんて、大きな口であくびして見せたのは恭也の妹の美由希。大学1年にして弟子1号。 黒髪にメガネ、整った顔立ち。一見地味な文学少女な香りのする彼女だが、これまた地味〜に読書好きな女の子だ。 「ちょっと、地味って言わないでよお!」 「……でも、朝から大きなあくびねえ」 「だって眠いんだもん……」 鍋を両手にキッチンから現れた女性はここ高町家の家事担当にして家の母。 高町桃子というこの女性、こう見えて3児の母である。……にしては、若い。若すぎる。いつもいつも、その活力あふれる若さをうらやましがられる彼女は恭也と並んでも違和感なんか微塵も見て取れないほどに若かった。 「夜更かしはよくないぞ、美由希」 「でもさー、学生はいろいろとやることがあるのですよ。ねー、♪」 「気持ちはわからんでもないが、学生としての本分も大事なんだからな?」 わかってるよな? なんて言いつつ読んでいた新聞から視線を移動させ、いかにもわざとらしいさわやかな笑顔を見せるこの男性。恭也とよく似たその顔立ちに見え隠れする威厳というか力強さ。 いかにもいかにも。彼はこの一家の大黒柱なのだから、それもそのとおりな話。高町士郎というその男性は、まさにこの家の“顔”なのだ。 「うぅ、父さんがいぢめるよう……」 「そんなんは知りませんっ、っていうか俺、もしかして間に合った?」 「お前はもう少し自分の立場を理解するべきだな。……ほら、時計見てみろ」 「うはああ、この家に私の味方はいないのかっ!?」 頭を抱える美由希をよそに、高町家の男性陣はマイペース。時計を確認してあわてて損した、と言わんばかりに食卓についた彼は、。この高町家の居候している、中学2年生。軽く声変わりして少しばかり大人になった。 そしてそんな彼には、ちょっとした秘密がある。 それは、腰のベルトに引っ掛けられている、緑のキーホルダー。 『だから、時計をしっかり見るようにと言ったじゃないですか』 まるでため息をついているかのようにキーホルダーから声が発される。 これこそが、彼の秘密そのものなのだ。 「まあまあ。遅刻するよりマシってもんだよ、アストライア」 それは、アストライアという名前の、いわゆる“魔法の杖”なのだ!!! 『別に、そんな力を込めて説明しなくてもいいです』 「……? 誰に突っ込んでるんだよ」 『マスターには関係ありません』 「……」 とアストライア。彼らは互いに相棒同士。つまり、“杖”であるアストライアを扱うは。 “魔法の杖を扱う者”―――魔導師なのである。 日常を過ごす彼の居場所は、この高町家。ならば、魔法という名の非日常を享受する彼の今の居場所は。 「やー、こないだまでちょっとばかり緊迫してたからさ。時間を気にするヒマなかったんだって」 時空管理局首都防衛隊・ゼスト分隊。 こことは違う魔法世界―――ミッドチルダの平和を守る、軍隊といっても差し支えない組織だった。 ちなみにこの高町家には、もう一人の住人がいる。 兄妹姉妹の末っ子にして、と同じ魔法を扱うことのできる魔導師として今、とある事件に関わって家を空けていた。 もっとも、彼女いわく『 時空管理局きってのエリート揃いである航空武装隊に若干10歳にして配属されてからこっち、仕事に学業にとサラリーマンも真っ青な忙しい毎日を送っている。 「じゃあ、いってきますっ!!」 朝食を終えて、学校への道を歩く。 望んで決めた道を歩き、しかし仕事も頑張れる。彼は彼で、しすぎているほどに充実した毎日を送っていた。 「うーんっ」 身体全体で、少し熱のこもった風を受け止める。 季節は初夏。梅雨の憂いを残した少し湿った風を大きく吸い込んで。 「今日もいい風が吹きそうだ!」 今日もまた、学校への通学路を歩き始めた。 魔法少女リリカルなのは A's to StrikerS - Act. 01 - 「おひゃーっ」 つぶれた学生鞄を左脇に抱えて、は教室への扉を勢いよく開く。 着崩した学ランがどことなくだらしないが、しかしそれも過度でない。服装に対する規則が比較的ゆるいこの学校だからこそ、ささやかな生徒の自由が許されるのだ。 木造の削り傷がおびただしい引き戸を開いた瞬間、 「おおおりゃああっ!!」 「うをっ!?」 掛け声とともに突貫してくる人影がに襲い掛かった。 繰り出される拳。力強く踏み込まれる右足。鍛え上げられた筋肉がしなり、の腹部を目標に伸びる。 しかし、彼はその拳撃をその視界にしっかりと捉えていた。 軽い驚きの声を上げながらも、その黒い目は突き出された拳の先だけを追いかけて、空いた右手をゆらりと突き出した。 「……すうっ!」 小さく息を吸い込んで、繰り出された衝撃を和らげるように突き出した手とともにバックステップ。 現れた人影は、と同じ年の頃の少年だった。爽やかな短髪をそのままに、巻き上げられた拳風が短い前髪を揺らす。圧縮された風を右手に感じながら、瞳の黒が交錯する。 次の瞬間。 「どぅあっ!?」 ごす、という音とともに、彼の脳天に直撃する鞄の角。 脇に抱えていた鞄の底を手に、蓋の部分を人影の脳天に落としたのだ。 ただでさえ堅い鞄だ。それにいくら力がこもってなかろうと、重力にしたがって落下しただけとはいえそれはもー痛い。痛すぎる。 「つ〜……」 頭を抱えてうずくまるこの少年は、ことあるごとにに勝負を挑んでは負け続けている勉強より運動派のクラスメイトだった。 「気は済んだ?」 「ったく、お前はいつもいつもいつもいつも! 面倒くさげにこの俺を一蹴してくれやがる」 「お前さんは一度、意味もなく付き合わされるほうの身になって考えたほうがいいね…………おはよう、仁」 「……おう、おはようさん」 遅い挨拶を返してきた少年の名前は、沢渡 仁(さわたり じん)。 お祭り好きな熱血漢。元気を絵に描いたような少年だった。 相変わらずうずくまったままの仁を置いて、ひょいひょいとは扉をくぐる。こんな光景も入学から1年経てば、みんな慣れるというもの。顔をあわせるクラスメイトたちは特に気にも留めることなく、 「くん、おっはようっ」 「おはよう」 「今日も見事な一撃だったな!」 なんて、笑顔でと挨拶を交わしていた。 「あ、おはよーくん」 「やっと来たわね」 遅かったじゃん、と言いつつ歯を見せて笑う少女は、金髪碧眼。一見外国人とも思える外見とは裏腹に、中身は英語の『え』の字も知らないちゃきちゃきの日本っ子。 そんな彼女はリリス=雪村(りりす=ゆきむら)。ヨーロッパのとある小さな国の人と日本人のハーフだ。 なぜ国名がわからないかというと、 「その方がそそるっしょ?」 いい女には秘密はつきものさ、なんて言っていつもはぐらかすからだった。 そして、彼女が腰掛けている席についている紺色の髪をショートボブに切り揃えた小柄な少女。 長いもみあげをヘアピンで留めた彼女は、御園さとり(みその さとり)。 ちょっぴり内気な委員長さんだ。 「今日は遅刻じゃなかったですねー」 「まあそりゃあ……たまにはこういう日もないとね、おはようリリスにさとり」 遅い挨拶を交わしながら、さとりの一言を聞いてばつが悪そうに苦笑する。 彼は中学2年に進級してからというもの、学校の出席率が突然悪くなったのだ。 理由はいうまでもない。時空管理局の仕事が突然飛び入りで入ってくることが多いのだ。朝でも昼でも授業中でも。そしてトイレで用を足しているときでも。その場合、もちろん本当のことを言うわけにはいかない。 だから、なんていって休もうか、なんて言い訳して早退するか、どうやって授業を抜け出そうかと試行錯誤するのが最近の彼の悩みの種だった。 ……なんて贅沢ななやみだ、なんて思われるかもしれないが、彼にとってはかなりの勢いで切実なのだ。 「ねえねえさとり、今日の数学の宿題やってきた?」 「え? そ、そりゃもちろんだけど……って、まさか」 「ふふん、言うまでもないわ。…………あたしやってないから写さして」 リリスは、大の勉強嫌いだった。 世界中の何よりも、やれといわれてもやる気になどもちろんやれるわけもなく、宿題なんか中学入学からこっち、自力でやってきたところをもさとりも見たことがなかった。 「あのさリリス。宿題って、人のを写しても意味ないんだぞ?」 「知ってるけど、それが何か?」 「「…………」」 だめだこいつ。 「いーじゃない。別に勉強した全部が将来役に立つわけもなし。あたしは、自由に生きる女なの!!!」 突然立ち上がり、そう豪語する彼女は、どーみても来年に受験を控えた立場とは思えない。 ただでさえ少しずつ意識しだしているころであるはずなのに、だ。 「あたしは自由を求めて世界をさまよう“ヲトメ”! あたしの未来はむげんだ……」 「この、ばかち――んっ!!」 「いいいぃぃぃぃ―――っ!!」 鈍器で一撃。 座っていた椅子を大きく振り上げて、フルスイング。 ホームランボールよろしく飛んでいくリリスを尻目に、はそんな超一撃をかました少女を見やる。 「さとり。その癖……直したほうがいいと思うよ、ほんと」 御園さとり。 ちょっと内気な委員長さん。 そして同時に、暴走しかけたリリスを止める唯一の存在。しかしその止め方が無意識に過激であることからついたあだ名が“クレイジーストッパー”。 そんなイヤなあだ名をつけられた彼女はたまったものではない。 の呆れたような一言に、 「うぅ……言わないでよぉ、くん……」 顔を真っ赤にして、リリスを吹っ飛ばした椅子に座りなおしつつうつむいたのだった。 ● 今日の授業が始まってから早3時間。 腹の虫もいい具合に合唱をし始めるそんな時分に、教壇に立つ壮年の国語教師は長々と念仏を唱えていた。 ……否、彼は念仏を唱えているわけではない。 「……つまり、ここで言うところの【それ】とは……」 ただ単に彼の放つ【日本語】が、学生たちにとって念仏にしか聞こえていないのだ。 見渡してみればいるいる。こくりこくりと船をこぎ続けている者や、襲い掛かる睡魔に抗うことなく机に突っ伏す者。まじめにノートを取っている者など、数えるしか存在していなかった。 もちろん、我らがも例外なく言葉が念仏に聞こえている。内側では睡魔が暴れている。 しかし彼は、ぼんやりと窓の外を眺めていた。 「…………」 体育の授業にいそしむクラスを眼下に臨み、しかし彼の瞳は動かない。 ただ彼は、授業をそっちのけて考え事をしていただけ……いや、ただ物思いに耽っている。それだけだった。 静かに流れる雲を見上げながら黄昏る彼の表情を見ている者はいない。 だからこそ、思考の向かう先がある意味【異世界】につながっていたとしても、気づくわけもなかった。 「……くんっ!」 「うおぉあっ」 突然聞こえてくる大声に驚き、伏せっていた上半身が仰け反る。勢いがつき過ぎていたからか、そのままさらに背後へ、椅子ごと倒れてしまった。 倒れていく瞬間に彼が目にしたのは、眼前を一瞬にして通り過ぎていく鉄パイプ。 「いたぁっ!?」 …… 倒れていなければホームランボールよろしくかっ飛ばされていたに違いない。 それを考えつつ自分の名前を呼んだ少女を見やる。 「……はっ、だっだだだだいじょうぶかな? だいじょうぶかな??」 「え? あ、あー……大丈夫」 「ちょっとさとり〜ん、がびっくりしてるじゃな〜い。ってゆーか、そのカゲキなところ直さないとキラわれるよ?」 「あうぅ、気にしてるのにー……」 「むーん、“クレイジーストッパー”は今日も絶好調、と……」 「うー、じ、仁くんまでそんなことを言うし……」 仁の追い討ちにかんらかんらと笑うリリス曰く、どうやら眠ってしまっていたらしい。 いくら起こしても起きないからと先生もあきらめて、なにを思ったか軽いイタズラをしていったらしいが。 それがなにかというのは、結局誰も教えてくれなかった。 「とりあえず、顔洗ってくれば?」 という彼女の忠告に従って顔を洗いにいくと、 「……ガキかあの先生は」 顔全体がチョークで真っ白に化粧され、さらに赤いチョークで「バカでごめんなさい」なんて書かれていて、思わずため息を吐き出していた。 ……もっとも、悪いのはこちらなのだが。 ● どうやら、昼食を吹っ飛ばして放課後まで寝ていたらしい。 仕事をするようになってから心休まることのないにとって、授業中というのは絶好の就寝タイムになっていたりする。まったく、頻発する地上事件が恨めしいったらない。 帰り道はいつもと同じ4つの影が地面を黒く染めていた。 言葉はない。しかし、それはけして彼らの仲が悪いからという理由ではない。むしろその逆。会話がなくても、ただつるんでいられればいいという、いわゆる遠慮のない間柄というヤツだった。 「突然だけどさ」 『?』 そんな中、唐突に言葉を発したのは仁だった。 「1ヵ月後に文化祭あるじゃんよ」 「そうねぇ……で、それがどうかした?」 「やー、ちょっと思いついたことがあってさ」 なにかしら言われ続けている文化祭の話題。中学生である自分たちは全校行事として参加させられるわけで、また面倒この上ない時期になっちゃったなあとため息をついたのはつい最近のことだった。 全校行事として合唱コンクールが義務付けられている。……というか、それだけの行事だった。 「毎年やる合唱コンクール、去年参加して最初に思ったのが“つまらない”だったんだ。だからさ……」 仁はもともとお祭り好きな性格だ。こんなことを言い出すのだって無理もないことで。 「コンクールをさ……乗っ取っちまおうぜ?」 こんな彼の発言にも特に驚くことなく、3人はそれぞれ違った答えを返してくる。 1.リリスの場合 「……珍しくまともな意見言うじゃない」 両手を挙げて賛同。拒否の気配すら感じられず、返したのはあふれんばかりの笑顔だった。 2.さとりの場合 「だっ、だめだよお。私、いいんちょさんだもん。悪いことはいけないんだもん」 自分のことを棚にあげて、拒否の姿勢を見せるが。 「いいじゃんいいじゃん。コンクールなんてつまんないことやるよりはさ、ちょっとしたサプライズがあったほうが盛り上がるって」 「うぅ、でもぉ……」 「コンクールじゃ、いいんちょなんて肩書きは役に立たないって。あっはっはっは」 「!?」 リリスの説得(?)によって、あっさり陥落していた。 所要時間10秒。楽勝である。 3.の場合 彼はもともと、面倒なことは回避したい人。 ただでさえ多忙な日々を送っているのだ。これ以上の厄介ごとは勘弁してほしかったりするわけだが。 「俺とは問答無用で参加な」 「……拒否権なしか」 「脳天に鞄落っことしやがった腹いせだ、気にすんなって」 どうやら仁は、を手放す気はさらさらなかったらしい。 言うまでもなく、仁だけでなくリリスもさとりも、そしても他にも仲のよい友人はいる。そんな中でも、一緒に文化祭を乗っ取ろうなどと考えられる親友とも言える存在は、お互いだけだった。 だからこそ、仁の発言ももっともと言えるだろう。 「あのね、俺は普段から暇そーに見えるかもしれないけど」 「じ、自分で言っちゃうんだ……」 「いらない突っ込みどうも。って、そんなんはどーでもいいんだよさとり……あー、ごほんっ。ともかく、俺はこー見えて色々と忙しいんだよ。参加だってそれほどできないと思うけど」 「あーあーそんなんは気にしなくていいぞ。さとりが毎〜日、引きずってあげるってさ」 突然話を振られて、さとり硬直。 「え、えぇぇぇぇ〜〜〜〜〜っ!?」 「あっはっはっは。さとりんはかぁいいのう……」 「わ、悪ノリ禁止ぃ〜〜ッ」 結局、面白ければ何だっていいらしい。 ● 「ただいまで〜す」 帰宅は、カラスが鳴くような時刻だった。 高町家の門をくぐって扉に手をかけるが、 「……開かないか」 扉には鍵がかかっていた。 それもそのはず、家主である高町夫妻は2人で喫茶店を経営している。恭也や美由希も、もちろんも手伝うことが多かったり。 ポケットから合鍵を取り出し、扉を開ける。 とりあえずやることもないので、朝出がけに恭也に言われたとおりに稽古前の軽い運動をすることとしたのだが。 『マスター、魔法の練習はどうします?』 腰のアストライアが唐突に声をかけていた。 そう。彼女の言うとおり、は恭也と美由希と一緒の稽古のほかに、頼れる相棒アストライアとの魔法の練習もしていたりする。 もっとも、始める時間によっては面倒くさがってすぐやめてしまうこともそれなりに多かったりするわけだが。 「そうだなあ……恭也さんも美由希さんもいつ帰ってくるかわからないしなぁ。……夜にしよか」 『そうですか。それじゃあ今日は10分コースで』 「なにさ。10分じゃ練習にならないじゃんか?」 『貴方のことですから、遅い時間に始めると間違いなく10分で根を上げます』 この2年間で学んだんです、と付け加えるアストライア。 そんな彼女の言葉に、はばつが悪そうに息を吐きつつ頭を掻いた。 夜遅くなると、彼の場合は魔法の練習よりも就寝欲が勝る。相棒としての年月は3年程度とさほど長くはないが、たかが3年されど3年、といったところだろうか。 「なんか釈然としないけど、まあいいや。しかし、今日は呼び出しがなさそうでホントよかったよ」 は時空管理局の正式な局員だが、年齢のくくりでかある程度の自由が認められていた。 まずは、仕事が現状だけでは手に負えない場合。 まだでさえ人の少ない地上の部隊に所属していることもあってか、呼び出しを受ける確率はかなりの高さを誇っている。 それでも、毎日学校に通わせてもらえる。さらには生活費を援助してもらえるというのは、にとっては渡りに船だった。 もっとも、年が18を過ぎたら強制的に呼び戻されるらしいが。 『まだ安心はできませんよ。これから呼び出しがあるかもしれないのだから』 「おいおい、そんなイヤなこと言うなって。ホントにそうなって……」 ぴぴぴぴぴぴ………… 突然鳴り響く電子音。それは、ここ2年ほど使用しているの携帯電話のコール音だった。 淡く光る液晶画面には、見慣れた名前。 その名前を見ると、何があったのかがすぐに理解できる。 映った名前は、時空管理局の同じ部隊の、オペレータのそれだったのだから。 『イヤなことがホントになりましたね』 「……はぁ、恭也さんに連絡しないと」 電話に出てみると、聞こえてきたのは切羽詰った焦り声。 街で小規模な爆弾テロが起きたらしい。 航空武装隊と首都防衛隊が総出で鎮圧にあたっているらしいが、どうやら犯人は複数で、しかも個人が自分の意思で動いている。さらには膨大な金額を支払って得た魔法を使う外道魔導師の可能性があるとのこと。 ……まったく、迷惑な話である。 「面倒だなあ」 電話を切ったは、大きなため息をついたのだった。 |
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