「………」 木の枝を拾ってきて、火を起こす。 彼は召喚術が使えないので、なんと昼間、太陽の出ているうちに虫眼鏡で光を一本の枝の先に収束させて小さな火を点けておいたのだ(なんて器用な)。 今は夜。種火はすぐに大きくなり、そこらじゅうから拾ってきた枝が役に立っていた。 火の粉が爆ぜる。 「今日も雨、降らないでよかったね」 傍らで、少女がそう口にする。 燃え盛る朱色の光を目に映し、動くことなくただじっと座っていた。 空を見上げれば、満天の星に輝く月。 手を伸ばせば届くだろうか。 ……なんてロマンチックなことをほざいたところで、隣の少女――ユエルに「似合わない」と笑われるだけだ。 「この世界の月は…蒼いんだな」 彼―― は、夜空を眺めながらそう口にしたのだった。 またたく星空の下で 「どうしたの急にそんなこと言って?」 「いや、どうしてだろうな」 島での戦いが終わり、旅に出たのはつい先日のこと。 リィンバウムに召喚されてからこっち、息をつく暇もなかったのだ。 だから、こうしてゆっくり夜空を見上げるのも、島での戦いに終止符を打った後の祝勝会の時以来初めてかもしれない。 「そういえば、のいた世界ってさ。どんなトコだったの?」 「そうだな。簡単に言えば・・・」 ある意味スゴイところだ。 そう口にしていた。 ロレイラル顔負けの機械技術(まぁロボットなどは作られていないが)に、場所によってはメイトルパさながらの自然環境。 天使と悪魔が登場する御伽噺もあったり、大昔にはサムライや忍者もいた(らしい)。 でも、発達する科学で大地や空気は汚れ、自然は都市開発のためにと削り取られている。 いいところもあれば悪いところもある、そんな世界だ。 「戦争とかもあったけど、今はおおむね平和なところだ」 「へぇ〜」 ずいぶんと喋っていたような気がしたのだが、とりあえず気にしない。 「ユエルのところはどうだったんだ?」 「えっとね――」 たくさん、話をした。 お互いの家族のことや、友達のこと。 島ではお互いに忙しかったり気づかなかったりしたせいか、お互いのことすらろくに話もできていなかったのだ。 「なんか、うれしいな」 「……そうかもな」 「も、そうなんだ?」 「ああ」 そう答えると、ごろりとその場に寝そべった。 同じように、ユエルも地面を背中にして夜空を見上げる。 「いい天気だねー」 「よすぎるくらいにな」 「星もたっくさんで……」 おいしそう……… …………… 妙な言葉が耳に入ってきていた。 びくりと身体を震わせて隣を見やると、まるで取り憑かれたかのように空へと両手を伸ばす少女の姿がある。 「………」 これは、ツッコむべきなのだろうか? 「ねぇ、。こうやって手を伸ばせば、届くかな?」 「………」 重症だ。 ぐぅ、と腹の虫が大合唱する。 実は、本日朝から食べ物らしい食べ物を食していないのだ。 本来なら帝都で食料を買い込んでいく予定だったのだが、街の中で見事に迷い、気づけばなぜか帝都の辺境にきていたのだ。 そのため買う予定だったものが買えず、路頭に迷っていたので。 隣のユエルも激しい空腹で、星をなにかの食べ物だと思っているらしい。 星を星だと認識はできているようだが、彼女の症状はすでに末期に近い。 「おーい、戻ってこいよ。ユエル〜」 「あれっ、あれぇっ? …届かない、って…はっ!?」 なんとか戻ってきたユエルは、へたりと掲げていた腕を地面に落とした。 どこから戻ってきたかは・・・察してください。 そのとき。 「ギャァァァッ!!」 「「!?」」 咆哮に振り向いたその先には、召喚獣。 2人は目を輝かせて、待ってましたとばかりに飛び起きた。 「おい、ユエル! 逃げられるなよ。一気に行くぞっ!」 「わかってるよ、そんなこと! それに、だってそれは同じでしょ?」 「ははっ、違いない!」 は刀を鞘から抜き放ち、ユエルは爪を腕にはめる。 飢えた猛獣よろしく眼光を鋭く、月に照らされている召喚獣を視界に納めると。 「「クイモノ――――っ!!!!」」 さすがは死線を潜り抜けてきた2人。 苦もなく召喚獣を捕獲すると、両の目をぎらぎら光らせて、焚いておいた火にあぶり始めたのだった。 |
46音お題より、『て』でした。 み、短い…… 久しぶりのユエルちゃん登場ですが、妙に短いのを改行増やして長くしました。 ほのぼのです、ほのぼの。 |
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