……僕は、お荷物だった。




 由緒あるレヴィノス家に生を受けて10数年。
 父さんたちが無色の派閥と戦って、僕はそれに巻き込まれて呪いを受けたというのに。
 それなのに、原因を作った父さんも、何も知らない母さんも。
 僕のことを隔離して、部屋に入ってこようともしなかった。

 調子がいいときも悪いときも。
 2人は僕に近づこうともしなかった。

 何度も、死のうと思った。
 ナイフで手首を切ってみたり、毒を大量に飲み込んでみたり。
 ……でも、死ねなかった。
 手首には激痛が走り、血がたくさん出るだけ。
 強烈な苦痛に襲われるだけ。


 ……やるだけ無駄。


 そう悟るのに、苦労はしなかった。



 そんな中、僕を励ましてくれていたのは姉さんだけだった。





「調子はどうだ?」




「苦しいな……代わってあげられるなら代わってあげたいが……すまない」




「しっかりしろ! 大丈夫だ、私がついている! 私がずっと、側にいてやるから!!」





 ……嬉しかった。



 それでも痛みは和らぐことなく、闇からにじみ出るように現れた男の同志になった。
 僕の夢は、『当たり前に生きること』だったのだから。
 呪いを緩和してくれるという、彼の誘いに乗ってしまった。


 …………


 紅の暴君を手にして、余計に死ぬことができなくなって。
 僕を殺すことのできる唯一の道をとるために、まずは今まで励ましつづけてくれていた大好きな姉さんに嫌われようと考えた。
 そうすれば、姉さんが悲しむことなく死ぬことができるから。
 嫌われようと思って努力していたのに、僕を殺せる蒼の剣と深緑の剣の担い手たちは、結局最後まで僕を殺してくれなかった。



 でも。





 代わりに、僕に生きる勇気を与えてくれた。



「苦しまないで、たった1人で苦しまないで」



 そう僕に言い聞かせてくれていた。






 ……僕は、1人じゃない。






 ……姉さんや先生たちが、一緒にいてくれる!






 生きようと、初めて本気で思えた。
 だから、今も僕はこの島にいる。
 さんざん酷いことしてきたのに『仲間だ』って言ってくれた、みんなと。




「……イスラ!」
「早くしないと、おいてっちゃいますよぉ?」
「さ、一緒に行こうか!」




 僕は、今を生きてる。
 安穏としてて、刺激なんてものはまったくないけど。
 それでも、毎日が楽しくて。
 これからも、生きていこうと思うことができる。









 ……僕は、1人じゃないから。































「……今、行くよ!!」
































46音お題より、『く』でした。
ちと強引に設定を決めてしまったイスラの独白。
まぁ、大半は的を射ているのではないでしょうか。
もちろん、「十六夜の月」的設定ですので、悪しからず。



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