「ささ、これを使うでござるよ」 「は、はぁ……」 渡されたクナイを眺めて、アスカはどっちつかずな返事をしていた。 現在彼がいるこの場所は、とにかく鬱蒼としていて木々や草花が生い茂っている。 ……まぁ、ありていに言えば森である。 「忍びの修行は自給自足が基本ナリよ」 そう口にして、目の前でクナイを投じたのはクラスメイトの長瀬楓だった。 「むむむ……それっ!」 びちゃちゃちゃちゃ。 力なく投げられたクナイは目の前を流れる川の水面を跳ね、下流へ向かってどんぶらこ。 「ふむ、もっと腰を使うでござるよ。ネギ坊主」 「ハイッ!」 実は、アスカはネギに引っ張られてこの場所にいたりする。 「ジャパニーズ・ニンジャのことをよく知りたい」という好奇心がネギを突き動かし、偶然とおり縋ったアスカをも巻き込んだのだ。 もっとも、彼に抗うことなく引きずられてきたアスカもアスカなのだけど。 「ほらほら、アスカ殿も」 「え? あ、うん……」 クナイの柄を握って、水面へと視線を向ける。 「……っ!」 ひゅっ 風を切って投げられたクナイは川ではなく、明後日の空へと飛んでいったのだった。 忍びとは? 「アスカ殿、実は球技が苦手でござろう」 「ドッジボールは結構できたんだけどなぁ……」 その後アスカが投げたクナイはそのすべてがヘンな方向へと飛んでいった。 背後の木に刺さったり、岩にぶつけたり。 しまいには目二射目を投じようと構えていたネギの鼻先を掠めていったり。 すばらしいほどのコントロールの悪さである。 要領はドッジボールと同じような感じなのだけど。 物を投げる部分は。 それを尻目に、 「やった! やりましたよ楓さん、ほらほら!」 「岩魚とりはネギ坊主の方が上手でゴザルなぁ」 「はうぁっ!?」 ショッキングだった。 5歳も下のネギに、勉強はさておき他のことで負けてしまうとは。 戦闘だったら絶対に負けないのに、とか思いつつも、今その力を振るう必要は皆無である。 「アスカにも、苦手なことってあったんだね♪」 「うぐ……」 そりゃ、苦手なものくらいある。機会じゃないのだから。 しかし苦笑紛れに放たれたネギの言葉が、妙に耳に残っている。 クナイなどの投具の扱いでネギに負けたことに対して、悔しいという感情はあまりなかったのだけど。 「よーし、ネギ! 勝負だぁ!」 年長者としての自分が、負けっぱなしを許さない。 「では、拙者が勝負の種目を決めるでござるよ」 楽しげな表情の楓が立会いを務め、修行を兼ねた勝負が始まったのだった。 ―――勝負その1 ガケ登り 「………………」 「杖で飛んじゃえば楽だもんね♪」 「あれ、反則じゃあ……?」 「別に飛んじゃダメとは言ってないでござるよ?」 「…………」 勝者ネギ。 ―――勝負その2 キノコ採り 「「…………」」 「こうして分身すれば楽でござるよ♪」 「こんなことできないよッ!」 「こんなこと出来ませんよ!」 両者ドロー。 ―――勝負その3 岩魚とり 「せぇぇぇいっ!」 「おっ、うひっ、あぶ、なっ、いでっ! ござっ……」 ぷす。 「痛いでござるぅぅぅ〜〜〜!?」 「うわっ、ごめーん!」 「それっ……やったー♪」 勝者ネギ。 ………… …… … 「ゼェ、ゼェ、ゼェ……」 アスカはひどく疲れていた。 頑張ってはいるのだけど、どうしてかその頑張りが報われない。 キノコ採りを除いて、すべて敗北を喫しているのだから、ショックもとにかく大きかった。 「アスカ殿は忍びには向かんでござるなぁ」 そんな楓の声が決め手となったのか、岩の上に突っ伏したのだった。 「では、最後の勝負でござるよ」 3戦行った時点で、2敗1分。 アスカの負けは確定なのだが…… ―――勝負その4 戦闘 「ええーっ!?」 「キタ―――――――!!」 ついにアスカの本領発揮だった。 「忍びの最大の特徴は、隠密としての戦闘能力にあるでござる。よって、得物にアーティファクトや杖は禁止ナリよ」 素手か、申し訳程度の長さの木刀が条件として認められた得物だった。 アスカはむくりと起き上がると、微笑と共に両手をポキポキと鳴らす。 「うふふふふふ」 「ちょっ、僕まだ老師に稽古つけてもらってないのにっ!」 一歩ずつ前進するアスカと、後ずさるネギ。 勝負は戦う前から決まっていた。 「今までの悔しさ、思い知れ――ッ!!」 「ギャーッ!?」 |
風の旅人(現STAY=Dream)さまから、アスカが楓の修行に付き合うお話でした。 かなり趣旨が変わってきていますので、もしお気に召さないようでしたらご一報を。 再執筆させていただきます。 |
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