「アラ、おいしい!」

 頬を軽く赤に染めて、スカーレルは嬉しそうに口に含んだ料理を咀嚼した。
 ここは、聖王都ゼラム領海沖。
 晴れていれば活気ある王都の街並みを望むことができ、その眺めも最高なのだけど。
 残念なことに今は夜。
 海賊カイル一家は、人類の最大欲求の一つを満たすべく、船内に集まっていた。

「おお、やるようになったじゃねえか!」

 そう言いながら、目の前に並べられた料理を頬張っていた。

「ふふん、あたしだってやるときゃやんのよ」

 そう。
 メンバー3人という少人数のカイル一家は、現在夕食の真っ最中なのだった。



  
夕飯時の惨劇



「しかし、いつの間にかこんなに腕を上げたのかしら」

 ほどよく焦げ目のついた魚にかじりつき、スカーレルは感心したようにそう口にする。
 今日のメニューは焼き魚に白飯。帝国で買い込んだ酒のつまみに軽く揚げたイカが出され、カイルもスカーレルもご満悦。

「島にいたときに、オウキーニにちょちょーっと教わってたの。あたしだって一応は女の子なんだし、料理の1つや2つできないとさぁ」

 やっぱりマズいでしょ。

 本日の料理当番だったソノラが、照れつつも嬉しそうに笑った。
 今までも料理する機会があったものの、なぜかソノラの当番の日に限って敵襲があったのだ。
 今回は牽制代わりにソノラが放った大砲が、敵船の甲板に命中したため事なきを得たのだけど。
 というわけで、今日は運良く静かな夜。
 ようやくソノラが腕を振るうときが来たわけだ。

「やっぱり……そうなのよね」
「「?」」

 魚を目の前に掲げてスカーレルは1人、何かを決心したかのようにうなずくと。

「アタシも……料理をするわ!」

 拳をぐっと握り、宣言した。
 そして。

「「!?」」

 そんな彼を見て、2人は顔を引きつらせた。

 以前、島にいたときは軽いものだったからよかったのだが、スカーレルは凝ったものを作ると、その料理は究極の対人兵器へと成り変るのだから。

「よっ、よせスカーレル! 後生だから!!」
「なによカイル。失礼しちゃうわね」
「お前、前に自分が料理してどうなったか、忘れてるわけじゃねーだろ!?」
「今度は大丈夫よぉ。前は……ちょっと失敗しちゃったけど。テヘ☆」
「テヘ☆ じゃねえ! っていうかアレは『ちょっと』どころじゃねえだろ!」

 以前は、途中で面倒になったのか包丁をまな板にたたきつけたりとか、「シャアアッ!」とか叫びながらざっくざっくと食料を切り刻んでいた。
 しかも、出来上がったときには船員たちも、船長のカイルも、憔悴しきっていた。
 あんな地獄は二度とゴメンだと、2人はスカーレルの説得に必死だ。

「いーの!! 明日はこのスカーレルさんにおまかせよ♪」



 …………



 説得失敗。
 2人の地獄行きが、確定したのだった。


 …………


 ……


 …


 次の日、案の定スカーレルは途中でキレてキッチンは惨劇。
 そして。

「あぁ、アニキぃ……向こうにお花畑がぁ……」
「まてっ、ソノラ! そっちに逝くんじゃねえ!! …………っ!?」

 ぐぎゅるるるる……

「おおおぉぉぉ……」

 トイレが大繁盛。
 ソノラに至っては魂が抜けかけるという、見事なまでに2人を再起不能とさせてしまっていた。





「アラ、そんなにおいしかったのね。アタシ嬉しいっ♪」
「「違うっ!!」」






おちこぼれ軍師さまより、ギャグ落ちで海賊一家メインのお話でした。
なんか、ギャグ落ちというには下品な感じがしますが、すいません(土下座)。
修正は随時承っております。
もしお気に召さないようでしたら、気軽に一言お声をかけていただきますよう、
お願いいたします。


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