「らんらら〜ん、らんらら〜ん♪」



 深夜。
 月明かりの中を、ピンクのリボンが舞い踊る。
 学生などいるわけもなく、1つの影だけが長く伸びる。
 その影は目的地までの道を音もなく駆け抜け、寮の壁に張り付くや否やよじよじとのぼり始めた。

 彼女は自称ゾンビのナナシ。
 実は前回の救世主戦争によって活躍した救世主候補が、次回の救世主戦争のためにと残した(ネタバレのため自主規制)なのだけど。
 今現在、彼女は腕や首が身体から外れてしまうことから、ゾンビとして認識されていた。

 窓のさんに手足をかけ、まるで手馴れているかのようにするすると登っていく。
 最上階まで上っていくと、1つの窓を覗き見た。
 そこは救世主候補の1人、ヒイラギ・カエデの部屋。
 目的のブツを見つけて、目を輝かせる。
 事前に細工を施していたためいとも簡単に開錠すると、窓を少し開けた。

「むぅ〜、それっ」

 片腕を押し込んで、肘部分から切り離す。
 彼女の身体は、本体を離れても遠隔操作が可能なのだ!!

 ぽとりと落ちた腕はカエデに感づかれることなく目的の物を握りしめると、その長くて白いそれをひきずりながら窓まで直行。
 そして……

「かっしゃ〜ん♪」

 合体した。
 その手には、目的のブツである白いマフラー。
 嬉しそうに首に巻くと、

「やったですの、げっとですの。これできっとダーリンも喜んでくれるですの♪」

 手放しで、小さな声で喜びの声をあげた。
 寮の壁で、自身の身体を支えていた手を窓のさんから離してしまったので。

「……あ」

 彼女の身体は、そのまま背後へ。
 寮の最上階。万有引力の法則はもちろん、彼女にも働いているので。

「お〜ち〜る〜で〜す〜の〜ぉ……」

 地面まで落下し、ぱかーん、という音を立てて、両腕両足、さらに首までが明後日の方向へ飛んでいったのだった。





 
あんでっどハンター、ナナシ……参上ですの!





「ししょぉ〜!!!」

 は朝っぱらから、カエデの襲撃を受けていた。
 来る破滅との戦いのために日夜訓練をつみ、先日ゼロの遺跡へ遠征も行ってきて、久々の休みなので惰眠を貪ろうとしていたのだが。
 彼女はばーん、と扉を勢いよく開くと、ベッドで布団に包まっていたところへ思い切りダイブしていた。
 その身体は勢いに乗っての腹部に突き刺さり、苦悶の声をあげる。

「困ったでござるよ大変でござるよヒドイでござるよぉ〜!!」

 さらにそのままわんわん泣き始めるので収拾がつかない。

「…んだよ、騒がしくて寝れねえじゃねえか……」

 あくびをかきながら現れたのは同じ救世主クラスで、アヴァター史上初の男性救世主候補こと当真大河。
 開け放たれたままの出入り口から、部屋を覗き見ていたのだが。
 彼の視界には、ベッドにダイブしたカエデのみが映っているわけで。

『寝ているにカエデは夜這いをかけている』

 と、彼の脳内で解釈され、

っ! てめえ俺様の『ハーレム・ド・アヴァター設立計画』をいとも簡単に邪魔しおってからにぃ!!!」
「…へ?」

 カエデをベリ、と引き剥がすとさらに、の掛け布団を剥ぎ取った。
 普段着ている服でそのまま寝ていたので、2人の視界には普段着のの姿。
 しかし、彼は反応を見せず、意識を飛ばしてしまっていた。

「……カエデ、おま…」
「ちっ、違うでござるよ大河どの! 拙者はただ、マフラーが何者かに盗まれたと……」

 じと、とカエデを見やる大河。
 そんな彼に、彼女は顔を真っ赤にして説明した。
 説明とは簡単に言えば、今朝起きてみると、いつも首に巻いている白いマフラーが忽然となくなってしまっていたというもので。
 どうしようかと慌てた末に、師であるに相談をしようと思ったまでのことで。

「ふむ、なるほど。つまり、夜這いというのは俺の勘違いだと」
「そー、そーなのでござる!!」

 こくこくこくと何度も首を縦に振りつづけるカエデ。
 よっぽど必死だったのだろう。
 夜這いと勘違いする大河も大河なのだが。

「そういうことなら、この俺様もマフラー探し、手伝ってやるよ」
「ほっ…ホントでござるかあ〜!?」

 カエデは目を輝かせる。
 気絶したままのは覚醒の気配がないので、結局2人でマフラー探しをすることとなっていた。



 ………



「基本だな」
「ほ、ホントに入るでござるか……」

 カエデの部屋の前。
 マフラーは部屋でなくなったということなので、もっとも疑わしいのがこの場所、ということになる。
 男子禁制のこの寮、本来なら入ることはまずありえないのだが、事情が事情なので。

「ほぉ〜、結構綺麗に使ってるんだな」
「いえ。拙者、この部屋を寝る以外に使っていないので」

 普段から修行に励むまじめな彼女。
 部屋にいることなどほとんどないので、その部屋のほとんどが使われずじまいなのだ。

「…よし。この部屋への侵入経路は、このドアと…」

 窓に目をやる。
 中途半端に開け放たれ風が入り込んでいるが、気になるところは見当たらない。
 大河はてくてくと窓に歩み寄ると、窓を開けて外へ身を乗り出した。
 実はこの窓、下から上へ開く仕組みになっているので、開けたままにするときは専用のストッパーをかけなければならないのだが。
 大河はこの部屋に住んでいるわけではないので、そんなこと知るわけもなく。

「おぉ、未亜とベリオだ。お〜…………だっ!?」

 限界まで上げたはずの窓が落下し、大河の後頭部に襲い掛かっていた。
 身を乗り出したままの強襲だったので、そのまま前方にかがんでいってしまう。

 このままでは重心が前方に傾き、大河が部屋から落ちてしまう!!

「大河どの…!」
「松ですのーっ!!」 (※『待つ』の間違い)
「へ?」

 どこからか、声が轟いていた。
 大河は何とかバランスを保っていたのだが、後頭部強打により意識は飛んでしまっている。
 声は部屋の外、寮から見える中庭の花壇から聞こえていた。

「点がよぶ、血がよぶ、火とが呼ぶ!」 (※間違いではありません)

 そこには、白いマフラーと頭だけどこかの部族の持っていそうな仮面を装着したナナシだった。
 右手は真っ直ぐに伸び、彼女の左上へ。
 左手は胸元のところで右手と同じ方向へ指先までピンと伸ばされている。
 仮面○イダーの変身ポーズである。

「ダーリンをすくえとナナシがよぶですの〜」

 いつぞやのシーンがリフレインする。

 アレは、つい先日のことだ。
 破滅のモンスターたちに人質にとられ、助けようにも動けないそのとき。
 あのような光景を目の当たりにしたことがあった。
 しかし、あの時とは違いオプションとして奇妙な仮面(?)と白いマフラーが装備されているが。
 隣りで、未亜とベリオが目を点にしているが、そんな中でもナナシは悠然と花壇の縁に立ち尽くしていた。

「あぁーっ! 拙者のマフラーっ!!」
「ダーリィィンッ! いまおたすけするですの〜」

 カエデの声をあっさり無視して地面に降り立ち、一目散に寮の壁へ。
 窓のさんに手を掛けると、昨晩のようにのぼり始めた。

「あぁっ、お兄ちゃんが!?」
「大河君!?」

 そこでようやく我に返った未亜とベリオは、ナナシの行く先――つまり大河を眺め、瞠目した。
 なにせ、窓から半身乗り出したまま気絶しているのだから。
 背後のカエデは大河の背後からマフラーを確認し、窓を開け放つ。
 すると、比較的大きめの窓で持ちこたえていた大河の身体は、ストッパーを失ってずるずると外に向かってずり落ちていく。

「ナナシどのぉ〜、拙者のマフラーを返すでござるよ!!」

 カエデはマフラーに釘付けで、大河の状況に気づかない。
 よって……

「きゃあぁぁっ、お兄ちゃぁ〜ん!!」

 大河の身体は宙に踊り出ていた。
 もちろんこの世界には重力という力が働いているので、それに従って落下していく。
 その真下では、ナナシが必死になって壁をよじ登っていたので……

「きゃあ〜ん…ダーリン、ダイタンですのvv」

 落下に巻き込まれ、大きな音を立てて地面に叩きつけられたのだった。
 本来ならひとたまりもない状況だったのだが。

「む…あれ? ここは……」

 大河は何食わぬ顔でむくりと起き上がっていた。

「ナナシ、困っちゃうですの…これはもーケッコンしかないですの〜」

 なぜ無事かというと……分解されたナナシのおかげだったりする。
 手足は木に引っかかっていたり花壇の中に突き刺さっていたりと異様な光景が繰り広げられているのだが、ナナシ(首)は頬を赤らめて、胴体の腹辺りから生えているかのように突き立っていた。
 ……なんつーか、怖すぎである。

「まったく、ナナシどの。拙者のマフラー、いつ持っていったでござるか?」

 しゅた、と何事もなく部屋から飛び降りたカエデは、呆れの表情を見せつつ投げ出されていたマフラーを拾い、首に巻く。

「だってだって、ナナシはアンデッドハンターなんですの。せいぎのみかたなんですの。だから、昨日の夜にこっそりv」
「……盗みは充分悪いことですよ?」

 ベリオのツッコミに目もくれず、花壇に突き刺さった腕が地面を這いつくばっていく。
 目標は、もちろんカエデのマフラー。

「ダメでござるよ。これは拙者のものでござる」

 ぎゅーん、と特攻をかけるナナシの手。しかし、そこは救世主候補にして凄腕の忍びであるカエデ。
 手を難なく捕まえると、

「ナナシどのにはちょっと頭を冷やしてもらうでござるよ」

 そう口にして、その手を……

「それっ」
「あぁ〜〜〜んですのぉ〜〜〜!」

 思い切り投げ飛ばしていた。
 手は弧を描くように飛び、寮の入り口付近へ落下していく。




 ………




「まったく…エライ目に遭っちゃったなぁ……」

 ちょうど、気絶から覚醒したが寮の入り口で伸びをしていた。
 もちろん飛来するナナシの手には気づく気配すらない。
 っていうか、完全に油断しきっていた。

「カエデ、一体何のよ……」



 べしゃ

 

 行動が停止する。

 目の前に落ちてきたのは何だ?
 っていうかどこから飛んできた?

 眼前で起こった事象に気づくのに0.5秒。
 その後、事態を把握するのに0.5秒。
 計1秒。














「qあwせdrftgyふじこlp!!!!????」















 すてーん!!



 ゾンビ嫌いなはその場で目を回し、再び気絶してしまっていた。
 口からは泡を吐き、目はもちろんぐるぐるで。





君が、君が!?」
「大変! すぐに治療しないと!」
「いや、怪我したわけじゃないし」
「あぁっ、師匠!? かたじけないでござるよぅ〜(泣)」





 結局、大河に背負われて医務室へと行くハメになってしまっていた。










はい、300000Hit記念Duel Savior verでした。
先日BBSの過去ログをなにげな〜く見ていたら、こんなことが書いてあったので、
ネタとして使わせて記念SSにしてみました。
ギャグちっくというか、ほのぼのがあまり書けない管理人ですが、どんなものでしょうか?


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−予告−



「あ、アレは……」

 突如飛来する巨大な物体。
 それは、世界侵略を目論む宇宙人の襲来だった。

「うそだろ!? 召喚器が……」
「……魔術も使えない」

 召喚器を封じられ、なす術ない救世主候補たち。
 戦うことすらできず、襲い掛かる災いに抗うことも出来ない仲間たち。

 次々と倒れていく人々を前に、1人の少女が立ち上がる。

「松ですの〜」

 白髪に、ピンクのリボン。
 首には白く長いマフラー。



「点がよぶ、血がよぶ、火とが呼ぶ!」



 その名は。




「アンデッドハンター、ナナシ! 勝手に登場しちゃうですの〜♪」





 世界の命運をかけた少女の戦いが今、始まる―――……







 劇場版 NANASHIRIDER −ナナシライダー−









 20006年 初春 全国ロードショー




























 もちろん嘘です♪




バレましたか。
・・・はい、すいませんネタです。
こんなんあったらいいなー的な、特に意味のない妄想SSです。
いや、SSというより、巷で人気の『嘘予告』とでもいうのでしょうか?


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