「凛」
「?」

 凛はその声に、歩みを止めた。
 時刻は夜半を過ぎ。人が出歩くような時間ではない中、2人は衛宮邸へと向かう最中だった。
 本来、一般人は聖杯戦争を目にしない。
 しかし万が一見られてしまった場合は、その人間の命を絶つことで口封じを行うのだが、目的の人物である衛宮士郎は一度ランサーに殺されたのだが、それを助けたのが凛だった。
 口封じの対象となる人間が生きているということは、またランサーが彼を殺しにやってくる。それに気づいたのはつい今しがたのことだった。

 和風なデザインの長い壁が続き、そのすべてが目の前の家の敷地であることを物語っている。これほど広い敷地内に住んでいるのがまさかたった1人の高校生だとは、誰も思うまい。
 何かあったのかとかけられた声の主の顔をのぞくと、整った眉が歪み、一抹の殺気すら感じる。
 少々、驚いた。
 召喚してまだ間もないとはいえ、彼が表情をこれほどまで険しくすることなんて、今までなかったというのに。
 ランサーを相手にしたときなんか、それこそ涼しい顔で彼を軽く挑発すらしていたというのに、だ。

「気配が2つ、サーヴァントだ・・・1つはランサーだな」
「・・・うそ」

 1つは急速にこの場を離れているらしいが、これはランサーのもの。一度感じたことのある気配なのだそうで、今までに出会ったサーヴァントはランサーのみ。簡単に推測できた。
 凛にサーヴァントの気配はわからない。感じるのはその魔力だけ。しかし、その大きい魔力を感じることができなかったのは、目の前の彼の影響だろうか? あるいは、いつものうっかりが出てしまったのか。
 とにかく、

「・・・っ、こっちにくるみたいだな。凛、下がるんだ」
「ええ」

 一歩、壁から遠ざかる。
 感じ始めた膨大な魔力。
 その大きさは彼のそれを大きく超えて、しかも急速に近づいてきている。
 しかし次の瞬間、見上げた先には白く輝く満月が壁の向こうから飛び出す1つの影を完全に捉えていた。

「ハアァァァァっ!!」

 裂帛の気合と共に『何か』が振り下ろされる。
 それが何であるかまでは、わからない。
 ただわかったのは。

「ち・・・っ!?」

 その『何か』を振り下ろしたのが、小柄な少女だと言うことだけだった。
 ブレイカーは右手に携えた純白の刀の峰を左手で支え、ぶつかりあった衝撃に表情を歪める。
 甲高い金属音。そして、重い攻撃。
 とても彼よりも小柄な、しかも少女が放てるような攻撃ではない。接触面では真紅の火花が散り、影の顔を映し出す。

「・・・・・・っ」

 それは、少女とはとても思えないほどに凛とした顔つき。
 長い金髪を戦闘の邪魔にならないように結わえ後ろでまとめ、翠の双眸が彼を鋭く射抜いていた。

「ブレイカーっ!」

 激しい競り合い。
 突然の奇襲攻撃に対応した彼もそうだが、相対している少女の動きは人の領域を越えていた。
 両手に力を込めて『何か』を弾き飛ばすと、宙へ舞い上がった少女はゆっくりと背後へ着地する。
 輝く月光が、初めて彼女の姿を映し出していた。

「・・・その格好」

 銀に輝く騎士甲冑。
 それだけで、彼女が生粋の戦士のたぐいであることがわかる。そして、両手で握りしめている『何か』。
 それは、肉眼ではまったく捉えることが出来なかった。

「見えない武器・・・!?」

 凛が驚きを口にした、丁度そのときだった。


「やめろ、セイバーッ!!」


 彼女を挟んだその先から聞こえた一つの声に従ったのか、武器を構えた彼女がその動きを止めていた。
 驚くように目をその声の主へ向けて、

「彼女は魔術師マスターです。ここで仕留めねば」
「マスターとか何とか言われたって、こっちはなにがなんだかわからないんだ!」

 声の主は、オレンジの髪の少年だった。
 黄土色を基調とした服――穂群原学園の制服を身に纏い、胸元をどす黒く染めた精悍な顔つきの。
 衛宮士郎。
 自分たちが追いかけていた、自分たちが巻き込んだの少年が、目の前のサーヴァントを止めていたのだ。
 それはつまり、彼が一般人などではなく聖杯戦争に参加を許された魔術師であることを如実に語っていた。

「俺はまだ、お前が何なのか知らない。けど、話してくれるなら聞くから、そんなことはやめてくれ!!」

 金髪の少女はそうまくしたてる介入者を見つめ、淡々と告げた。
 敵は倒すものだと。目の前にいるのはサーヴァントと、そのマスターだと。

「だから、なんだそのさーばんととかますたーとか! っていうか、女の子がそんな武器振り回して・・・」

 危ないじゃないか!!

 ・・・

 今の状況下で、そんな言葉が出るとは思わなかった。
 彼女は背格好はさておき纏う雰囲気からその様相までが騎士のそれだ。騎士は戦うことが本懐であり、戦場では性別による分別など存在しない。
 生きるか死ぬか、それだけなのに。
 彼は「危ないじゃないか」などという言葉をのたまった。
 平和な世界を生きている証拠だ。

「それに、怪我してるだろ! そんなんじゃその武器だって満足に振るえないだろ!」

 うーん、必死だ。
 真っ直ぐに少女を見据えていたブレイカーは殺気を解くと、刀を納めてしまう。
 興が削がれたというよりは、やる気が失せたとでも言うのが理由になるだろう。
 背後から「どいて」と凛の声。

「いつになったら、剣を下げてくれるのかしら?」
「敵を前にして、下げる剣などありません」
騎士セイバーのサーヴァントが主に逆らうって言うんだ?」

 なにせ、相手のマスターは何も知らない魔術師なのだから。

「・・・遠坂?」
「こんばんは、衛宮くん」





はい、お疲れ様です。
えらいヘンな文章です。っていうか、こんなん書いていたら日付変わってました。あ〜あ(軽くため息)。
セイバー初登場です(爆)。

ブラウザバックよろしくです。

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