真紅が疾る。
 純白が奔る。
 夜も深まり月が中天にかかる頃。
 穂群原学園のグラウンドに、情報化社会の進んだ現代ではありえないような金属音が響き渡っていた。
 ぶつかっているのは、確かに金属同士だ。
 しかし、高鳴るその音は、まごうことなき轟音。
 周囲の人間に感付かれてしまうのではないかとも心配すらしてしまうような地鳴りに近い音だった。
 青い服でその逞しい身体を隠す男と、現代風の服を着、背後の女性を守るように立ち回る男。
 その2人の攻防は、人の領域を一足飛びで越えていた。

「てめぇ、どこの英雄だ」
「それ、答えるわけないだろ」

 青服の男は真紅の槍を突き出しながら、相対する男に尋ねた。
 神速の突きをあっさり、それでいて紙一重で躱すその体裁きは、さすが戦士系の英霊といったところだろう。
 槍を引く男に、反撃とばかりに純白の刀身が襲う。
 上から下へ、斬り伏せることだけに特化した剣術。
 しかし、その閃光のような斬撃すら、あっさりと得物である槍で弾く。
 まさに、一進一退の攻防。
 死を目前に、敵を殺すことだけを頭に置いた死闘だった。

「そりゃそうだ。サーヴァントは、互いの素性を知られてはならねぇ。聖杯戦争の基本だったな」

 忘れてた、と言わんばかりに真紅の槍を用い無数の突きを放つ。
 互いにサーヴァント。槍を用いている青い男は、クラス名だけなら丸わかりだった。
 持っている武器の通り、ランサーである。

「得物が刀・・・ということは、セイバーか?」
「さぁ。そうなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。もっとも、戦いにそんなものいらないだろ」
「・・・ハッ、そりゃそうだ・・・なッ!」

 繰り出される刺突撃。
 その切っ先はまるで分裂しているかのように無数に散らばり、女性を守る男に降り注ぐ。
 しかし男は赤い目を見開き、それらをすべて捌き切る。
 神がかり的な剣捌き。
 それだけを見ても、聖杯戦争を知る誰もが思うだろう。
 彼はセイバーのサーヴァントではないかと。

「・・・知りたそうだな。教えてやろうか?」

 眉間にシワを寄せたまま、男は言う。
 笑みすらも見せて、雨のように降り注ぐ突きの嵐を受け流し、弾き返し、回避する。

「君はわかりやすいな。これほどの槍の使い手、俺のいたトコでもそうはいなかった・・・ッ!」

 槍を引き付ける隙を狙い、反撃に出る。
 小ぶりな分、速度を上げられるからこそ、男は刀を構え突進を敢行する。
 上段、中段、下段。
 真下からの斬り上げや上から袈裟斬り、素早く切り返しての逆袈裟斬り。その速度はランサーの槍の速度を越え、彼に襲い掛かる。
 ランサーはランサーで、真紅の槍の切っ先、腹、石突を巧みに操り受け止め、弾き返す。

「俺はイレギュラーだ。知りたければ・・・俺に一撃入れて見せろ・・・ッ!!」

 上段から大ぶりな大斬撃。
 渾身の力を込めた純白の刀は、槍を真っ二つにするかのような勢いでランサーへと迫る。

「っ!!」

 しかし、ランサーはあえてバックステップ。
 男との距離を開けていた。

「・・・くくっ、言ってくれる」

 目を閉じたまま、含み笑う。

「ならば喰らうか、我が必殺の一撃を――!」
「いいだろう。全力をもって迎え撃とう・・・!!」

 ランサーは構える。
 石突を高く、切っ先を低く。
 奇妙な型の中で強く握られた槍は、ランサーの見開いた目とともに一変する。
 突き刺さるような殺気と、変じた大気。
 怖いくらいに振動し、その力の巨大さを物語る。
 震える大気に満ちる魔力すらもかき集め、槍は最速を得る。
 標的は、ただの一ヶ所。
 それはまさに必殺。

刺し穿つゲイ

 その一撃に次はなく、その一刺し以外は不要。
 因果の逆転により結果からその過程を導く魔槍。
 結果はたった一つ。
 『心臓に、槍が命中する』という事実のみ。
 今まさに、その魔槍が放たれる刹那。

 ぱきん。

「――――っ!!」

 一つの音ですべてが霧散した。
 ランサーの真紅の瞳が音の主を映す。
 穂群原学園の男子制服を着た、誰か。
 それは一般人であると限りなく物語っていて。

「誰だっ!」

 ランサーの殺気が向きを変え、次の瞬間には地を蹴り出していた。

「しまった・・・っ! ブレイカー、追って!」
「了解・・・!」

 ブレイカーと呼ばれた男はランサーを追って地面を蹴る。
 その先で待つものは、一つの死体であることなど知らずに―――




はい、またしてもすいません。
断片的にやろうと思いながら、普通にストーリーやってる感じですね。まぁ、こんな小話でも面白いと思ってくださるならば、嬉しい限りです。
とりあえず・・・・・・・・・・・・笑ってやってくださいな。

ブラウザバックよろしくです。

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