「この光は、還りたいと望む者だけを元の世界へ還す光だ・・・都合のいいことかもしれないけど、これでお別れ、だな」 のその言葉に胸が高く鼓動するのをアヤは何処か遠くで聞いていた。 「ちょっと待て・・・ほんとに、これでお別れかよ!?」 「そういうことになるな」 全ての物音が遠くから聞いているように聞こえ、けれどの言葉だけは明確に聞き取ることが出来ていた。 「おわっ!?」 「えっ・・・」 「ウソ!?」 「そんな・・・っ!!」 そして自分の身体も、と同様に光を放ち始めているのに気付く。 ゆっくりと目線を横に動かせばハヤトもトウヤもナツミも同じ様に光を発しているのが見える。 「お前らも!!」 「・・・・・・」 「なんとか言えよっ!?」 右も左も分からない異世界にて共に過ごし、歩んできた家族ともいうべき仲間達の声が聞こえる。 けれど、その声も、その声すらも遠く、例えようのない気持ちでアヤの胸は一杯になる。 頭の中の何処かで必死に何かが叫んでいるのが聞こえてくる。 「ですけど、やっぱり自分のいた世界に還らないといけないって思うんです」 ぽろり、とアヤの瞳から涙がこぼれ落ちる。 詭弁だ。と頭の中の一部がそう言っているのが聞こえた。 これは、言い訳なのだと。一歩踏み出す事が出来ない臆病者の自分への。 そして恐怖。踏み出して、無駄に終わったら、拒絶されたら、叶わなかったらという想い。 「俺たちのいるべき場所は、きっとそこにあるから」 本当にそうだろうか。自分の居るべき場所は。 思い出す。彼の、の居ない日常を。確かにこの世界と比べれば向こうの世界は平和だろう。 けれど、この世界に来て。ずっと今まで共に居た幼馴染と再会して。彼の力になれる事が嬉しくて。 再び彼の傍に居ることが出来て。自分はどう思った? どう感じた? 「君は・・・どこへ還るんだい?」 「さぁ、どこだろうな。今回のことがことだったから・・・まぁ、リィンバウムのどこかだとは思うけど」 の言葉に身体を震わせる。 だって、彼の言葉は、その意味は別れを意味していたから。 それも一時的なものではない、永遠な、決定的な別れを。 「ハヤト、トウヤ、ナツミ、アヤ」 「「「「?」」」」 彼がこれから言うであろう言葉に涙が再び瞳に集まっていく。 まだ頬を流れ落ちてはいないけれど、すぐに崩壊したダムのように溢れ出すだろう。 切なくて、悲しくて。頭の中がぐちゃぐちゃになって。 「俺は、俺たちは・・・きっと、もう会えない。けど・・・元気で」 嫌だ。もう会えないなんて言わないで欲しい。 ずっと、ずっと傍に居て欲しい。 「きっと、これが今生の別れになると思うけど」 そんな顔をして言わないで欲しい。 自分が成さなければならない決意だけなら、例えどんなんい自分が辛くても彼の事を見送ろうと思う。 けれど、何もかも仕方のない、これが運命なのだと悟ったような諦め切った表情で言わないで欲しい。 「や・・・」 「・・・え?」 別れの言葉なんて聞きたくなかった。 聞きたくない。彼からの別れの言葉は拒絶の言葉に聞こえ、どんどん悪い方向へと考えが進む自分の頭を動かす。 「イヤです・・・!」 その言葉で今まで溜め込んでいた涙が、想いと共にせき止めることもできず一気に流れ出る。 もう、これ以上は抑えられない、抑えることが出来ない、抑えきれない。 『少しでもいい。ほんのわずかでも、勇気を出してみましょう。そうすれば、きっと道は開けます』 短い間だけれど自分と共に戦ってくれた彼女の言葉を思い出す。 今の私に必要なのはこの状況に嘆くことじゃない、悲しむことじゃない。 ほんの少しの、かけがえのない勇気と想いで、一歩進むだけ。 「別れたくなんかないっ!! 私は貴方の、貴方だけの傍に居たいんですっ!!!!」 「……アヤ」 言わせない。聞きたくない。 ずっと、ずっとこの想いを、気持ちを胸に抱いてきた。 隠しながらも、それとなく伝えてきた。 けれど、それじゃあ駄目なんだって分かった。 「この鈍感っ!!」 涙で視界が霞む。 けれど言わなければいけない。 こうしている間にも彼の身体も自分の身体も光に包まれているのだから。 「なにが、今生の別れですか?! 人の気持ちも知らないでっ!! 人の気持ちも考えないでっ!!!」 想いが溢れて来る。 それがどうしようもない、というなら変えてやる。変えてみせる。 エルゴだろうが魔王だろうが運命だろうが知ったことではない。 こんな結末、決して認めやしない、認めさせない、認めない。 ―――人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて何とやらだ。 |
柊月夜銀さまより、1連載夢終了記念短編でした! どこかで読んだことあるかもしれませんね、これ。 実はこれ、1連載第81話のアヤ視点なんです!!! 彼女の心情がとてもうまく表現されているため、絶対こっちの方がいい、なんて考えてしまいました(爆)。 最後の部分が少々変わっていますが、それでもいいですよね、実際。 というわけで柊月さま、ありがとうございました! |
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